レッドオークの特殊能力
重症のアサシンさんを自室へ運んだ。
ヨークも何事かと駆けつけてくれて、状況を見て驚いていた。
「アサシンさん……? うそ、なんでこんな傷を」
「ヨーク、頼みがある。ヒールで治癒を頼む」
「は、はい……でも」
アサシンさんの傷があまりに酷くて、ヨークは顔を青くする。それもそうだな、ここまで酷いとは僕も思わなかった。アサシンさんは、苦しそうに痛みに耐えていた。血も結構流しているみたいだし、このままだと死んでしまう。
「頼む。アサシンさんを死なせるわけにはいかない」
「分かりました」
両手をアサシンさんに翳し、ヒールを発動。白い光が傷を癒していく。
その間にもエドワードやアルマも駆けつけてきてくれた。
「どうなされました、ヘンリー様」
「誰かが傷を負ったと聞きました」
「エドワード、手当できるものを頼む」
「こ、これは……死んでもおかしくない傷ですな。分かりました、直ぐに包帯を」
普段、淡々としているアルマでさえも困惑していた。彼女もエドワードについて行った。
……さて、ヨークだけど。
うん、なんとか傷は塞がってきている。状況を見守っているとネヴィルが口を開いた。
「ヘンリー。俺に出来ることは、さっきのレッドオークの残骸を分析するくらいだ」
「分かった。ネヴィルは、そっちを頼む」
「了解。アサシンさんの無事を祈っている」
ネヴィルにオークの状況把握を任せた。
僕に出来ることはないのか……。
祈ることしかできないのか。
そんな心苦しい中、アサシンさんが意識を取り戻した。
「……ヘ、ヘンリー」
「アサシンさん! 今、ヨークがヒールをしている。直ぐ治るからね」
「あ……ありがとう。でも、それより……レッドオークを………倒すんだ」
「え、なにを言っているんだ。今は、アサシンさんを治す方が優先だ」
「ブラッドアックスを守ってくれ。……このままでは、レッドオーク共に……やられる」
やられるって、どういうことだ。
いくらヤツ等でもこの秘密の場所には、これないはず。テレポートスクロールが必須だし。
「大丈夫だよ。ヤツ等はここまで追ってこれない」
「違うんだ。……レッドオークには特殊な力があって……ぐっ」
「特殊な力?」
アサシンさんはまた意識を失った。だめだ、これ以上は無理させられない。それに、ヨークの邪魔もできない。
その時だった。
「ヘンリー様!!」
リナが部屋にやってきた。
「リナ、ダメじゃないか。勝手に出歩くとネヴィルに怒られるよ」
「……違うんです。兄様がレッドオークに襲われているんです」
「な、なんだって」
まさか、あの一匹だけじゃなかったのか。
「ヨーク、リナ、ここを絶対に離れるなよ」
僕は、二階の窓を開けて下を見下ろす。大雨で視界が悪い。けど、見えた。レッドオークが十体いた。どうなっている。さっきはあんなにいなかったぞ。
二階から飛び降り、囲まれているネヴィルに加勢する。
「金貨なげええッ!!」
一気に五体を排除した。
「ヘンリー! よくぞ来てくれた!」
「ネヴィル、このレッドオークはいったい」
「さっきのレッドオークで間違いない。あのグレンとかいうレッドオークには特殊能力があったんだ」
ギリッとネヴィルは、レッドオークを睨む。すると、残ったオークが高笑いした。
「フハハハハハ!! まさかこの我が死んだと思ったか!? 残念、この我は斬られれば分裂するのだ」
「分裂だって!?」
「この我、グレンのみが持つ最強の能力だ」
なるほど、このオークはちょっと他とは違うらしい。斬ると分裂か――ん、でも、さっき金貨投げをした時は倒せた。
つまり、斬らなきゃいいわけか。うん、楽勝じゃん。