金貨と呪い
ガヘリスは壁に激突。
瓦礫の山に沈んだ。
しかし、ヤツはうまく受け身を取って防御スキルも使っていたようで、立ち上がった。
「一撃では倒せなかったか」
「……あぶねぇ、あぶねぇ。呪いの力がなければ死んでいたかもしれん」
ノロノロと立ち上がり、ズタボロのガヘリスは不敵に笑う。コイツ、大ダメージを受けている割りに余裕があるように見える。
呪いの力、また呪いか。
「ガヘリス、奴隷を売って金儲けか。ださいぞ」
「黙れ、ヘンリー! いいか、ギルド職員なんてやっていても儲からないんだよ。そこで私は考えた。女をさらって売れば金になるってな!」
「こんなことが許されると思っているのか」
「さあな! だが、少なくともこの世界の神は、そういう考えのようだがな」
どういう意味だ。
いや、だけどもうガヘリスに何を言ってもダメだ。なら、倒すだけだ。そう考えていると、ガヘリスは掌に黒いものを生成。
「なんだその汚物」
「これは“呪い”さ。私は呪いを扱える呪術師となった。いいか、ヘンリー。この呪いを受ければお前はゾンビ化する」
黒い物体を投げつけてくるガヘリス。それが僕に命中した。
「うわっ」
「ふはははは! ざまあみろ、ヘンリー! これでお前はゾンビに……な、ならない!?」
もちろん、ならない。
僕は今、光属性なので。
ディアナさんの付与のおかげだな。
さてと、奴隷たちはヨークやアサシンさんが解放したようだな。スイカも手伝ってくれていた。
クリフォードは駆けつけて来てくれた。
「ヘンリー、手助けはいらないな?」
「うん。クリフォードはそこで見ていてくれ」
「分かった。ガヘリスを倒してくれ」
「おう」
改めてガヘリスに向き直る。
ヤツは、隠し持っていた小型ホワイトポーションで回復。傷を癒していた。そんなものを持っていたとは。
「ガヘリス、観念するならこれが最後だ」
「するか!! ヘンリー、お前は何も分かっていない。なぜ私がギルド職員をやっていたのかな」
「知りたくもない! お前は僕を散々不遇な扱いをして、追い出した。そして、本当は裏ではこんな奴隷売買なんて商売をしていた。それが事実だ」
「そう思うか。まあいい、どう思うのもお前の勝手だ。もういい、ヘンリー、貴様を殺して今度こそ奴隷帝国を作り上げる。フヒャヒャヒャヒャ!!」
ダメだコイツ。
完全イカれている。
奴隷解放の手伝いをしていたスイカが、僕の元へ戻って来る。
「スイカ、あのアホにダークブレスをお見舞いしてやれ」
「了解です!!」
黒い魔力の塊を放つスイカ。
それは、瞬く間にガヘリスの目前に。
「なッ! これはエンペラードラゴンのブレスか!!」
ガヘリスのヤツ、妙に詳しいな。
だが、ブレスはもう止められないぞ。
闇属性攻撃は非常に強力。
火力も極端に高い。
だが、ヤツは防御スキルを展開。そうか、あれも呪いの一種か。ダークブレスは防御された。なるほど、強力な呪いらしい。厄介だな。
そんな状況の中、ヨークとアサシンさんも合流。これでみんな揃ったな。ヨークは、ヒールやグロリアなどの支援魔法を掛けてくれた。
「ありがとう、ヨーク」
「決着をつけましょう、ヘンリーさん」
「ああ、これで最後にする」
金貨一枚を生成して、宙へ弾く。
あの呪いを突破するには、金貨増殖バグしかないだろう。僕は、大量の金貨を生成していく。大ダメージを与える為だ。