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必殺の金貨投げ

 フランベルジュを構えると、ガースとエルヴィスは狼狽(うろた)えた。


「S級武器だと! 馬鹿な……」

「あのヘンリーが? 元ギルド職員が、なんでそんなレア武器を所持しているんだよ!」


 普通そう思うだろうね。

 腐っても元ギルド職員、S級アイテムの入手難易度は彼らもよく知っているだろうし、高価なのも知っているはず。そして、その威力も。


 僕は、相手が動くよりも先に移動。接近し、向けられたナイフを弾き飛ばした。いや、破壊した。



「うわぁあぁッ!」

「俺のナイフがあああ!!」



 C級サバイバルナイフでは、このS級武器に勝てるわけがない。適当に振っても武器破壊が可能。それほど性能の差があった。


 二人は尻餅(しりもち)をついて(おび)えていた。

 その隙にギルドの受付嬢を救出。この超美人で、清楚(せいそ)な金髪の女性(ひと)は確か、エステラさんだ。あんまり話したことはないけど。


「ヘ、ヘンリーさんではないですか! 助けてくれてありがとうございます」

「いいよ、エステラさん。今のうちに逃げて」

「で、でも……」

「大丈夫。こっちは任せて。どうせ彼らに話があるし」

「は、はい。その、ヘンリーさん……機会があればでいいので、私の家に来てください。お茶をご馳走したいんです」


 エステラさんは、顔を赤くして去っていく。うそ、あの冒険者から大人気のエステラさんから誘われた! 嬉しいなあ。



 無事を確認して、僕は二人に向き直る。



「殺しはしない。ガヘリスの情報を知りたいんだ。アイツは、今どこで何をしている?」


 聞くとガースがキレた。



「俺が知るかよ!!」

「もういいだろ! 俺たちを見逃せ!」



 やれやれ、この二人はまだ分かっていないようだな。ギルドの受付嬢をさらおうとしていたくせに、見逃せ? しかも、ヨークとスイカも狙っていたし、ありえないだろ。


 僕は、彼らの右肩に剣を“チクッ”と刺した。


 すると、予想以上に『ブシュー!!』と血が噴き出た。



「「ぎゃああああああああああ!!!」」



 ガースもエルヴィスも激痛に転げまわる。……さ、さすがS級だな。あの程度でも大ダメージなんだな。なんて攻撃力だよ。



「さあ、ガヘリスのことを言うんだ」


「……わ、分かった! 頼むからもう、チクッとしないでくれ! 痛いから!!」


 二人とも意気消沈。

 どうやら、話す気になったようだ。今度は、エルヴィスが口を開いた。


「ガヘリスさんは、巨大地下・ウェイクフィールドにいる」

「それは知ってる。どこにある?」


「さあ、分からないんだ」


「分からない? どうしてだ。さっきだってギルドの受付嬢をさらっていたじゃないか」

「完全にランダムなんだよ。たとえば、酒場の裏路地とか、人があまり通らないところを歩いていると勝手に転送されるんだよ。ウェイクフィールドにな」



 そんな、ランダムだなんて。

 つまり『ランダムテレポート』って――ことかな。それでは突き止めるのは難しいな。でも、この帝国のどこかに地下があるはずだ。



「最後に聞きたい。ガヘリスはその地下に女性達を集めて奴隷売買をしているんだな。お前達も加担していると?」


「な、なんだ知っていたのかヘンリー。そうだ、ガヘリスさんは帝国・中立地帯・共和国からも女を拉致して地下に閉じ込めている。奴隷として売る為さ! これが儲かるビジネスでな。俺もガースも美人奴隷を貰ったし、最高だぜえ!?

 そうだ、ヘンリー! お前も仲間にならないか!? ガヘリスさんは寛容だ。お前にその気があるなら、歓迎してくれるだろう」



 手を差し伸べてくるエルヴィス。

 下衆(げす)すぎるだろ。


 僕にはヨークやスイカもいる。ていうか、二人とも白い目でガースとエルヴィスを軽蔑し、引いていた。ですよねー。


 女の子の前でそんな最低な交渉をよくまあ、するものだ。


 もちろん、僕の答えは――



「仲間になるわけないだろ。お前達二人は帝国騎士に突きだす! この犯罪者が!」



 そう断言すると二人とも焦った。



「なぁぁぁ!! ヘンリー、俺たち、元同僚だろ!!」

「そ、そうだ! 人さらいバレたら処刑されちまうよ!!」



 必死に勘弁してくれと土下座してくる。

 同情なんて、これっぽっちも出来ない。

 するつもりもない。


 そもそも、僕がギルドに所属していたときは業務を手伝ってもくれなかったし、追放されたときも彼らは一人も味方してくれなかった。


 それが今はなんだ。

 女性を好き勝手に誘拐して……奴隷商売? 馬鹿げている。こんなの間違っている。冒険者を導く存在が、なぜこんなヤバイ組織になっている!


 おかしい、全てがおかしい。


 ガヘリス、奴が全てを壊した。

 僕の人生も、ギルドの職場も……何もかも。


 だからこそ、僕は『金貨増殖バグ』を使った。



「ガース、エルヴィス……お前たちはやってはならないことをした。牢屋で罪を償え、この馬鹿野郎共!!」



 金貨を二枚取り出し、ブン投げた――!



「「う、うああああああああああああああ……ッ!!」」



 土下座している二人の頭上に金貨を叩き落とした。必殺の“金貨投げ”は破壊的な威力を生み出し、二人の頭を潰す威力で大きなクレーターを作り上げた。



「金貨投げええええええええ!!」



「「や、やめ、やめてくれえええええええええ、うああああああああああ……!!!」」


 金色の柱が空へ伸びる。

 怒りのまま地面へ投げつけたから、凄い威力になってしまった。


 次第に光は止み――ガースとエルヴィスは、ズタボロになって倒れていた。傷の具合からして、骨折とかもしているだろう。……ふぅ、スッキリした。

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