ドラゴンの正体
あの黒いドラゴンは間違いない。
飛行して戻ってくるスイカと……あれ、あのエルフはディアナさんだ。
「おかえり、スイカ。随分と早かったね」
俺の肩に乗るスイカは小さな声で耳打ちしてきた。そうか、今のところはヨークには秘密にしていたんだった。でも、隠す事でもない。
「ただいまです、ヘンリーさん。人型の姿になっても?」
「って、そのままでも喋れたのか。ああ、構わない」
ドロ~ンと変身するスイカ。
ついに人型を晒した。
その光景にヨークとディアナさんはビックリして目をパチクリしていた。そうだろうね、僕も最初は驚いたし。
「あ、あの……スイカちゃんが爆発しちゃいました!!」
「落ち着いて、ヨーク。スイカは、人型になれるんだ」
「えっ、そうなのですか!」
目の前に推定十歳のちんまりした子供が現れた。昨晩会ったスイカ人型バージョンだ。何故かクリーム色の甘そうな長い髪をしているんだよな。
「え、ええッ!? このドラゴンさんって人間だったんですか??」
ディアナさんも大混乱中だな。
俺は、ヨークとディアナさんに詳しく説明した。すると、二人とも直ぐに納得してくれた。スイカが人型にもなれて、喋れるということに。
「ごめんなさい。騙すつもりはなかったんですけど……その、ヘンリーさんが本当に信用できるか見極めていたもので」
「そうだったのか、スイカ」
「はい、すみません。ヘンリーさん」
だから、直ぐには人型を出したくなかったんだろうな。とりあえず、スイカのことは置いておき、それよりもディアナさんだ。
「ところで、ディアナさん。錬金術師のハンフリーのところへ行っていたんじゃ? 帰ってくるの早いね」
「ええ、その……ドラゴンさんが運んでくれたんです」
「え、スイカが?」
こんな小さいスイカがディアナさんを運んだ? 信じられんな。ドラゴンの姿でもかなり小さいけどな。もしかして、飛行能力は高いのか。
「あの~、ヘンリーさん。もしかして、あたしのこと馬鹿にしています!?」
「違う、違う。お前の能力がよく分からなくてな。そもそも、なにドラゴンなんだよ」
「ヘンリーさんは、テイマーですよね」
「ぷちテイマーだからな。たいしたペット情報とか見れないんだよ。精々、飼うとか名前をつけるくらいしかな」
がくっと項垂れるスイカだが、仕方ないだろう。普通のテイマーや上級を目指すのは大変なんだ。一応、国家資格。ぷちテイマーになれただけ凄いんだぞ。
「分かりました。こちらから詳細を出しますね」
「へ、そんなことが出来るんだ?」
「はい、任意では可能なんですよ~」
へえ、それは知らなかった。
これでついにスイカの詳細も知れるわけだ。どれどれ……。
【スイカ】
【ドラゴン族】
【闇属性】
【人型:可】
【詳細】
テイムモンスター。
ダークエルフの国・ヘッジレイ出身の『エンペラードラゴン』の子供。成長はある呪術によってストップしている。このドラゴンのステータスは、テイマーの能力値や装備の補正に影響される。
【スキル】
①S級飛行能力
②ダークブレス Lv.5
③ダークサイクロン Lv.3
これがスイカのスペックか。
なるほどな。史上最強の“エンペラードラゴン”だったとはな、これは驚いた。しかし、今は後回しだ。注目すべきは『S級飛行能力』だ。そうか、このスキルがあったから、ディアナさんを余裕で運べたんだ。
ディアナさんに詳しく聞くと、途中まで護衛していたスイカが突然、ディアナさんの背中を足で掴んだようだ。それから一気に飛んで移動した――と。それでこんな短期間でランカスター帝国へ戻ってこれたんだ。
「お前は凄いな、スイカ」
「そ、そんな撫でられると照れちゃいます……えへへ。というか、ヘンリーさんの能力が凄いんです! 主のステータスがあたしに影響するんですから」
いろいろ分かってきたぞ。
ヨークのこと、スイカのことも。
それと運がいい。
今は、エルフ族のディアナさんがいる。もしかしたら、ランカスター帝国へ入れるかもしれない……!