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妖精王とエルフ

 いったん要塞門から離れ、少し離れた丘で作戦を立て直す。正面から入ってもゾンビ化するだけ。それはつまり死を意味する。

 追放の呪いがここまで厄介だとは思わなかった。このままでは、帝国内に入ることすらできないのか。


 ランカスター帝国は、高い外壁で囲まれているから門以外となると、その壁を()じ登らなければならない。だけど、それでも仮に壁を突破しても、呪いでゾンビ化するだろうな。


 でも、諦めるわけにもいかない。

 ここまで来た以上、(ゲート)を突破してみせる。


 ここは、ギルド職員時代の知識を活かそう。……確か、呪い耐性を上げるアイテムとか防具があったはず。もしくは呪い解除だ。……と、思ったけど出てこないものだな。


「みんな、呪い耐性か解除のアイテムに覚えはない?」


 ヨークとアサシンさんの知恵を借りることにした。そうだ、みんなでアイディアを出し合えば、きっと解決方法が見いだせるはずさ。


 話し合うと、ヨークはペンデュラムクエストの『天上の妖精王』を頼るのはどうかと言った。妖精王といえば――妖精王・ヘイスティングス。


 ランカスター帝国のギルドでも受注可能なSS級難易度のクエスト。場所は、北にある『ルーズコート』という地にある“運命の塔”だ。

 ここから、かなりの距離があるから馬車かギルド職員の移動サービスでも利用しないと、何日も掛かるな。


 だけど、妖精王・ヘイスティングスなら呪いに精通していると僕も噂は聞いた事があった。


 いったん、保留にしてアサシンさんの意見も聞いた。



「私か。うーん、エルフ族に呪い耐性の秘術があるとか何とか」



 エルフか。そういえば、ギルド職員時代にガヘリスが言っていた。妖精王も『エルフ族』と。なるほど、エルフがカギらしい。


 エルフ……エルフか。


 あの助けた子、ディアナもエルフだったな。タイミングが悪かった。あの子に何か聞ければよかったけど。


 もしくはスイカか。彼女は、ダークエルフの国・ヘッジレイの出身。なにか知っているかも。でも今はディアナの護衛につけているから不在だ。


 となれば、スイカの帰還を待つしかないな。



「よし、まとまった。今は、スイカを待つ。アサシンさん、悪いんだがひとりでランカスター帝国へ入って情報収集を頼む。ガヘリスの居場所を突き止めて欲しいんだ」


「なるほど、ここからは別行動ということか」


「帝国に入れるのは、ヨークとアサシンさんだけだからね。となると、ひとりで動きやすいアサシンさんに任せるしかないかなと」



 僕は、活動資金として金貨を10枚渡した。ギョッとするアサシンさんは遠慮していたけど。



「そんな大金は受け取れない」

「いや、いいんだ。アサシンさんのことは信用しているし、しばらく情報収集するならお金が必要だろ?」

「し、信用してくれるのか」

「ああ、仲間だろ?」


「……っ! 真面目な顔して言うな! ヘンリーのばかっ」


 なんか顔が赤いな、アサシンさん。

 背を向けて照れ隠ししていた。

 へえ、可愛いところもあるんだ。


「それと、クリフォード辺境伯クリフォードという聖騎士を調べて欲しい。病弱な妹・リーゼという子がどんな状態かも」


「聖騎士か。ヘンリー、その騎士と妹を調べてどうする気だ」


「ネヴィルに教えて貰ってね。クリフォードを頼ってみたらどうだって、でも妹さんが病に侵されているようだし、まずは何とかしてやりたい」


「前から感じているが、お前は人助けが好きだな」

「元ギルド職員の(さが)かもね。それに、僕はお金を生み出せる能力を得た。この力を困っている人に使いたいと思っているんだ」


 ありのままの気持ちを打ち明けると、アサシンさんは深く同意してくれた。


「そうだな。私もその為に戦っている。だから――」


 アサシンさんは金貨を受け取り、僕とヨークを優しい瞳で見つめてきた。“行ってくる”と手を振ってランカスター帝国の方角へ歩き出していく。


 僕は最後までアサシンさんの背を見送った。



「行っちゃいましたね、ヘンリーさん」

「ああ、後は任せよう。これでしばらくは二人きりか」

「ひ、久しぶりに二人きり……!」



 赤と青のオッドアイが揺れ動く。

 そんな風に見つめられたら、ドキドキするじゃないか。こうして二人きりになる時間は久しぶりだ。


 思えば、この付近でヨークと出会ったんだ。あの時は、空から女の子(ヨーク)が降ってきて……ん? 降ってきて(・・・・・)



 そういえば、なんでヨークは空から落ちてきたんだ? 普通、空から人が落ちてくるなんて、ありえない。そうだ、今こそ聞いてみよう。

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