闇市のウワサ
ランカスター帝国を目指す。
この森の先は、また草原フィールド。その先に国はある。強いモンスターもそこそこいるし、注意しないと。
「しかし、アサシンさん辛そうだな」
「はい、ずっとあの調子で顔を紫にしているんです」
紫!? 普通、青だろう。ということは、体調が悪化しているのかも。様子を伺うと、アサシンさんは度々嘔吐していた。そんなに飲んだっけ? それとも、かなり強いアルコールだったのか。
「アサシンさん、大丈夫かい?」
「……ご、ごめん。シャンポンを飲んで倒れたあと、夜中にまた目を覚ましてね。アイテムボックスに隠し持っていたシャンポンをまた開けちゃってさ……」
それで更に酔いつぶれていた――と。
自業自得というか、飲み過ぎだ。
「効くか分からないけど、ホワイトポーションを飲む?」
「あぁ、うん。いただく」
【ホワイトポーション】
【詳細】
体力を超回復する。
疲労や体調不良も超回復する。
ポーションは、疲労回復などの効能もあるようだった。ちなみに、ホワイトポーションは1個1000セントするから、結構高いアイテム。上級冒険者向けの回復ポーションだ。これで一発で治ってくれるといいな。
白い液体の入ったポーション瓶を手渡し、飲んで貰った。
「どう?」
「うまッ! このホワイトポーション、美味いな。しかも、頭痛とか一瞬で解消されたよ。とても良くなった。二日酔いが吹っ飛んだよ!」
アサシンさんは、あんな顔色が悪かったのに健康的なまでに快復。ホワイトポーションすげぇ~。というか、錬金術師のハンフリーが凄いのかもしれない。
念のため、買い占めておいて良かったな。
これで先へ進める。
* * *
緑に囲まれていた風景とお別れし、帝国に続く道を歩く。こちらは、道路も整備されていて歩きやすい。多くの冒険者や商人ともすれ違う。
そんな中で冒険者の会話が聞こえた。
「近々、帝国の闇市で奴隷が売買されるんだってさ!」
「えー、マジぃ!?」
「ああ、しかも美人ばかり。人間、エルフ族、ドラゴン族、鳥人族、魚人族、精霊族、超レアな天使族とかも売買されるらしい」
「うわ、天使族とか見たことねぇぞ。いくらするんだ?」
「金貨で1000枚は必要かもな」
「1000枚!? つまり、1億セントってこと? すげぇ額だな」
帝国の闇市だと?
もしかして、ガヘリスが女性を拉致している事と関係あるのかも。いや、多分そうだ。ランカスター帝国のどこかに集めていると情報があった。
巨大地下・ウェイクフィールド。
そこが闇市だとすれば、矛盾はない。
「ヘンリー、彼らの話」
「ああ、アサシンさん。たぶん、ガヘリスが潜伏しているウェイクフィールドだ。ヤツを止めないと罪もない女性が奴隷として売られてしまう」
きっと自分好みの女性はハーレムに加え、価値のありそうな女性は売るって寸法だろう。どこまで下衆なんだ、あのガヘリス! 人間をなんだと思っているんだ。絶対に許さん。
あの話を聞いて、ヨークは怯えていた。
「なんだか怖いです」
「大丈夫だ。ヨークは僕が守るから」
「ヘンリーさん、はいっ。わたくし、ヘンリーさんを信じています」
子供のような純粋な瞳を向けられ、僕は心臓が高鳴る。その星のようにキラキラした目を向けられると期待に応えるしかないな。
――さて、もうすぐ帝国の要塞門前だ。
僕は多分、近寄ることすらできないんだろうな。でも、まずは入ってみよう。無理でも、それから考えればいいさ。