ぷちテイマーとドラゴン
スイカにも肉を食わせた。
食べさせてやると喜んで食ってくれた。このドラゴン、種類は分からないけど大人しいし、従順だ。
「スイカちゃん、可愛いですね!」
「ヨークも肉を食べさせてみるか?」
「はいっ! やってみたいですっ」
ヨークは、串に残った肉をスイカの口元へ運んでいく。さすがのスイカも食べ物には弱かったようで、素直に食っていた。
「おぉ、食ってくれたな」
「良かったあー! この前は威嚇されちゃいましたけど、今は仲良くなれた気がします」
少しは距離感が縮まったかな。スイカは、ようやくヨークを仲間として認めたようで肉をパクパク食べていた。
そして気づくと、アサシンさんがぐっすり眠っていた。……あっ、酒に酔って眠ったなあ。これって僕が一人で見張りをしなきゃいけないのか。
仕方ないなあ……。
「アサシンさんが寝ちゃったよ。僕が見張りをするから、ヨークとスイカは眠るといい」
「で、でも……」
「いいんだ。みんなを守るのが僕の義務だからね」
「無理はなさらないで下さいね。言って下されば、わたくしも見張り番をしますから」
「ああ、緊急時は頼むかもしれない」
――その後、夜は更けて……
就寝時間となった。
ヨークは横になって瞼を閉じた。
三秒以内には寝息を立てて眠っていた。
眠るの早っ!
それにしても、本当にこの子はいったい何者なんだ。共和国と同じ名を持つ少女・ヨーク。もし、共和国のお姫様だとか女王様だとしたら……。
「えへ……もう食べれないですぅ」
ヨダレを垂らしてヨークは、そんな寝言を言った。……あぁ、これを見る限り王族ではなさそうだ。たまたま同じ名前で、教会暮らしの聖女とかなのだろうな。
……しかし、寝れないのが辛い。
朝までまだ何時間とある。
とりあえず、まだ眠っていないスイカに話しかける。
「スイカは眠らないのか?」
「……(ウンウン)」
「ほぅ、僕の相手をしてくれるか」
「……(ウンウン)」
スイカって頭が良いな。
僕の話を理解しているようだし、うなずくし。もしかして本当にこちらの言っていることを理解しているのかも。
なら話し相手になってもらおう。
「いいか、スイカ。僕は小さい頃、ドラゴンの背中に乗るのが夢だったんだ。だから、モンスターテイマーを志した。でも、結局は『ぷちテイマー』止まり。そのセンスは無かった」
自分の能力に絶望した僕は、たまたま目に入った『ギルド職員』に就職。特に目標もないまま、そのままダラダラとした生活を送っていた。
あのガヘリスにこき使われて……散々だったけど。
「なるほどですねー!」
「そうなんだ。でも、帝国を追放されてから、僕はよく分かった。世界は広いんだって。帝国、中立国、共和国、他にも様々な国がある。戦争だって起きてる。でも、僕は普通の生活がしたい。仲間と共に」
「名案ですね。あたしもそういう、まったりとした生活が欲しいです。だから、ダークエルフの国・ヘッジレイを抜け出したんですけどね~。でも、人間に捕まっちゃって……ペットに売り出されるとか!」
ほぉ、スイカにもそんな理由があったんだ。なるほどな――ん?
ん??
んん???
ちょっとマテ。
僕はさっきから、誰と話している!?
「……え」
「はい?」
「スイカ、君……話せるの?」
「ええ、今更ですね。随分と話していた気がしますけどっ」
ドラゴンがシャベッタアアアアアアアアアアアアアアアアアア~~~~!!!
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