表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/61

SSS級ブラッドアックスの秘密

 金貨の塊は、金色の閃光を輝かせながらオーク族の男・ジャスパーへ命中した。



「んなッ、なんだこの光――ぶあああああああああああ!!!」



 アサシンさんは、その隙に避難して物陰に隠れていた。ナイス、判断。


 オークはとうとう遠くへ吹き飛び、空へ飛翔していく。さすが金貨1000枚の威力。伊達じゃない。



「吹き飛べえええええッ!!」

「く、くそおおおおおおおおおおおおおおおお……!!」



 ドンッと花火のように打ち上がり、どこかへ吹き飛んでいった。おぉ、山の向こうまで吹き飛んだ。


 ふぅ……と、汗をぬぐっているとヨークが飛びついてきた。



「ヘンリーさぁん!!」

「ヨーク。無事だったか」

「はい、お陰様でっ」



 ヨークの体を抱きしめていると、アサシンさんも駆け寄ってきた。どうやら、大きなケガはないようだ。



「あ、あの光はいったい……ヘンリーがやったの?」

「そそ。僕には金貨を操るような能力があるんだ」


「金貨を!?」


「うん。今のはスキルの『金貨投げ』なんだ。固定ダメージを与えられるんだけどね」

「な、なんと……そんな凄いスキルを持っていたとは」



 目を白黒させるアサシンさん。

 さて、ここに留まるのはまずいな。住人が何事かと集まってきていた。とにかく、スコットを出て行って、ランカスター帝国を目指すか。



 * * * 



 中立地帯スコットを離れ、草原フィールドを歩いていく。穏やかな風が吹き抜け、心地よい。


 この道を真っ直ぐいけば、半日でランカスター帝国だ。だけど、時間的に到着時点で夜になるだろうな。


 しばらくは作戦とか考えながら向かうしかないだろう。



「それにしても、弓男が殺され……オークの暗殺者が出てくるとはね。アサシンさん、あのオークはいったい何なんだ?」


「あれは、暗殺者を消す為の暗殺者。しかし、オーク族だったとは……あんな巨漢は初めて見た。恐らく“王の候補”だろう」



 王の候補。

 そんな聞きなれない言葉に僕もヨークも首を傾げた。


「あの、アサシンさん。その王の候補とは?」

「うん。オーク族には、王を決める血の戦いがあるようだ。その勝者には、このSSS級ブラッドアックスを王の証……つまり『ブラックオークロード』として示すことができるんだ」


 ギルド職員時代に聞いた事がある。

 EXボスモンスターに『ブラックオークロード』の存在が確認されていた。この地域のどこかに生息していると噂が流れていた。


 しかし、オークがあまりに強くて上級冒険者でも倒すのが難しいとされていた。


 そうか、ガヘリスはアサシンさんがブラッドアックスを持っていたから、その情報を流して交渉したんだろうな。


「一応聞いていいかな、アサシンさん」

「ん、なんだ」

「そのSSS級ブラッドアックスはどうやって入手したんだ?」


「……それを聞くか。いや、いいだろう、ヘンリーとヨークちゃんになら話してやる」


「ああ、頼む」



 一呼吸入れ、アサシンさんは語り始めた。



「私は、種族は人間だけど……その昔、オークに拾われた。で、長いこと大切にされて、ここまで育ててもらった」


「オークに!?」


「普通、食べられてもおかしくないんだけどね。幸い、私の両親は赤ん坊だった私に情が移ってしまったようでね。運が良かったんだ」


 どうやら、アサシンさんは子供の頃に親に捨てられ、通りかかったオークに拾われたようだ。驚くべき事に丁重な扱いだったようだけど、凄いな。

 そんな話は聞いたことがない。


 オークにも様々な種類がいるんだと、僕は関心を抱いた。


「そうだったんですね。アサシンさんは、どうして暗殺者を?」


 ヨークが聞いてくれた。


「良い質問だ。……まあ、なんだかんだあって、私の親だったオークが殺されてしまってね。まさにさっきの赤いオークのヤツさ。

 あれは『レッドオーク』といって、常に狂暴……噂によれば、生まれ持ってバーサーク状態だって聞いてる。それで、私は親から受け継いだブラッドアックスを使って、レッドオークの情報を収集していたのさ」


 それで暗殺稼業をしていたようだ。

 生活と情報の為に。


 なるほどな、両親の仇を取る為だったんだ。このアサシンさんにも大変な人生があったんだな。


「なら、一緒にレッドオークの住処を探すよ」

「……い、いいのか? ガヘリスも倒さなきゃいけないのに」

「いいんだ。仲間が困っている以上、放っておけないだろ」


「な、仲間……。そう思ってくれるのか、こんな血にまみれた私を」

「僕もヨークも似たような境遇さ。だから気持ちは分かる」


 ヨークが僕の手を握る。


「はい。だから、わたくしはヘンリーさんについていくんです。アサシンさんも一緒に参りましょう」


 今度は、ヨークが手を差し伸べる。

 アサシンさんは少し戸惑い、頬を赤くする。けれど、諦め半分のような顔をして、ヨークの手を握った。


「ヨークちゃんには敵わないや。よろしく」


 決まったところで、どんどん進んで行きますか……!

面白い・続きが読みたいなど感じましたらブックマークと↓にある★★★★★を押していただけるとモチベーションが上がって助かります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ