金貨1000枚投げ
「……なるほどね」
弓男からガヘリスに関する情報を聞き出した。
どうやら、僕が買収したゴロツキ共はこの弓男によって抹殺されたようだ。だから、戻ってこなかったのか。
「現在、ガヘリスはランカスター帝国の南にある『ウェイクフィールド』という巨大地下に身を潜めている」
「ウェイクフィールド?」
「ああ……ある道楽貴族が作ったシェルターらしい。もともとは戦時の避難用だったらしいが、帝国が強すぎて使い道がなくなったとかでガヘリスに売ったようだ」
それから暗殺者やゴロツキを使って、この中立地帯から女性達を拉致・監禁しているようだ。自分の欲望の為に……。
ヤツを止めないともっと酷い事になる。
「そうか、そのウェイクフィールドに入るにはどうすればいい?」
「あぁ、それなら簡単だ……こうすりゃいい!!」
と、弓男は突然立ち上がりヨークを人質に取った。くそっ、油断した!
「おまえ!!」
「ハハ、ハハハハ!! 言うわけねぇだろ、バァ~カ!! 丁度いい、このトビっきり美人の銀髪を売れば腕の治療をしても、お釣りが返ってくるだろう!!」
「お前……ヨークを売るつもりか!」
「当然だ。この女はガヘリスさんに売り飛ばす。おっと、動くなよ!! こいつがキズモノになっちまうぜえ~?
いいか、少しでも怪しい動きを見せたら、この女を絞め殺す!!」
ヨークの首元を腕でがっつり締め付ける弓男。くそっ、これでは!
「す、すみません、ヘンリーさん! わたくし、御迷惑を……」
「気にするな。今すぐ助けてやる」
剣とか斧ではヨークを巻き込んでしまう。必殺の『金貨投げ』でいくしかない。これで……ん?
金貨を取り出し、投げようと思ったのだが……事態は急変した。
突然、弓男の首が吹っ飛び――僕は驚いた。
なんだ、何が起きた!?
弓男の背後から高身長の巨人のような男が現れ、大きな斧を楽々と振るっていた。なんだ、アイツ……全身が赤い。黒い鎧はいったいなんだ? 頭には鋭い角。コイツは人間じゃないぞ。
いや、それより。
「ヨーク!!」
弓男の返り血を浴び、呆然と立ち尽くすヨークをお姫様抱っこして救出。すっかり真っ赤になっていたけど、無事のようだった。
「…………えっと、いったい、何が」
酷く怯えている。
そりゃ、いきなり男の首が吹っ飛ぶとかビックリする。
距離を取っていると、アサシンさんが突撃していく。ちょ……!
「アサシンさん! そいつは危険だぞ!!」
「分かっている。だけど、アイツを排除しなければ!」
SSS級ブラッドアックスを猛烈な勢いで振り下ろすが、敵は片手斧であっさり受け止めていた。嘘だろ、あの重戦斧のブラッドアックスを!?
「ようやく見つけたぞ、アサシン」
「やっぱり、暗殺者か!!」
「そうだ、我が名は『ジャスパー』! オーク族の頂点に立つ予定の男だ」
グンッと斧が迫って、アサシンさんのブラッドアックスを弾く。すげぇ筋力だ。
「――ぐっ!! お前、更に暗殺者を消すために雇われた暗殺者か」
「いかにも。ガヘリスとはそういう契約をした。ヤツは、いつでも前線の暗殺者を殺せるように我を雇ったのさ。まさか早々に動く事になろうとは……。
しかし、我が目的はその『ブラッドアックス』にあるのだ。それは我がオーク族の神器。返して貰うぞ!!」
ガン、ガン、ガンと斧と斧がぶつかる音が激しく続く。
事情はよく分からんけど、アサシンさんは二度も裏切られたわけか。というか、ガヘリスのやつ……暗殺者すら消そうとしていたとはな。悪魔かよ!
「ヨーク、僕はアサシンさんを助ける」
「やだ……離れたくない」
ぎゅぅっと抱きつかれ、僕は動揺する。
そ、そんな子供みたいに!
やば、今の一瞬、ヨークがすげぇ可愛かった。いや、普段も可愛いけど……! 可愛いけれど、ときめいてしまったぞ。
「直ぐ戻るから」
「……はい」
ヨークを降ろし、僕は『金貨増殖バグ』を発動。金貨1000枚分を投げつけた……!
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