S級フランベルジュ
ダンジョンへ入る寸前、ヨークが駆け足で向かってきた。
「ご、ごめんなさい。遅刻しましたぁ」
「ヨーク、おはよう。ぐっすり寝ていたから、起こしちゃ悪いと思って」
「いえ、わたくしの方こそごめんなさい。ご一緒してもいいですか?」
「うん。いいよ、今からダンジョンへ行こうと思っていたところさ」
ヨークも緊急でパーティに加入。
庭にある階段を降りていく。
この地下にダンジョンが存在するんだな。
妙な気分を覚えつつ先へ進む。
魔導アイテムの蝋燭が通路を奥まで照らしていた。
「地下は、特殊な蝋燭で視界良好です」
と、アルマが教えてくれた。
なるほどねえ。
先を進んでいくと、さっそくグリーンスライムが出現。あれは雑魚だな。
僕の物理攻撃でも余裕で倒せるほど弱い。だから、経験値もショボいし、ドロップアイテムもない。
「ヘンリーさん、モンスターをチョップで倒しちゃいましたね!! 凄いです!」
「いやいや! グリーンスライムは、ヨークでも倒せるほど弱いんだよ」
「そんな事ありません。カッコ良かったです!」
そんな無理に褒めらても……まあいいか。
ダンジョンの奥へ進んでいく。
* * *
地下十階まで降りてきた。
ここまで来ると敵モンスターも強くなってきた。
なので僕は『S級フランベルジュ』を装備。
【S級フランベルジュ】
【詳細】
攻撃力 +2000。
追加で『ファイアボールLv.5』を発動し、火属性魔法攻撃 1000% のダメージを与える。
300000セントで買った剣を手に持つ。
……重ッ!
S級ともなると重量もアップしちゃうみたいだ。けど、なんとか握れる。
武器を構えていると、奥からイエロースライムが出現。今回の目標だ。アイツが『はちみつ』を落とすんだな。
「大変です、ヘンリー様!」
「どうした、アルマ」
「イエロースライムがたくさん現れました……どうやら、ここはモンスターハウスだったようです」
ダンジョンの中には、たまにモンスターの大群が密集している場合がある。理由は分からないけど、なぜか30~50体が群れてしまう。多いと100体以上の場合もあるという。
危険度マックスの部屋だ。
だけど、今の僕はA級以上の武具で固まっている。それに、金貨増殖バグのギフトだってある。負けはしない。
「それじゃ、僕に任せてくれ。アルマは、ヨークを守ってくれ。で、ヨークは支援とか頼む」
「了解しました」
アルマはうなずく。
「では、わたくしは支援魔法を使います!」
ヨークは、僕に対して『グロリア』という支援スキルを施してくれた。
【グロリア】【Lv.1】
【効果】
自分・対象・パーティ・ギルドに有効。全ての能力値を三分間だけ向上させる。
Lv.1:全ステータス +20%
Lv.2:全ステータス +40%
Lv.3:全ステータス +60%
Lv.4:全ステータス +80%
Lv.5:全ステータス +100%
ヨークの『グロリア』はスキルレベルが『1』なので、全ステータスが“20%”アップした。これはデカイぞ。
さっそくS級フランベルジュを振るってみると『ファイアボールLv.5』が発動。一気にイエロースライムを吹き飛ばし、燃やし尽くした。
「マジィ!?」
30体いたイエロースライムが一瞬で消え去り――『はちみつ』を大量ドロップ。地面に落ちる瞬間に、僕のアイテムボックスに自動回収された。
おぉ、そうだ!
SSS級ルートガントレットの効果でドロップアイテムが自動回収されるんだ。この効果便利すぎ~!
おかげで『はちみつ』が汚れずに済んだ。
「おぉ! ヘンリーさん、さすがですっ」
目をキラキラ光らせ、抱きついてくるヨーク。今回は嬉しいな!
「ええ、これほどの力を持っていたとは……我が主に相応しいです」
アルマも僕を認めてくれた。
ああ、そうだ。
僕は、アルマに『はちみつ』渡した。
「はい、アルマ」
「……あ、主様。これ」
「これが目的だったろ。アルマにあげる」
「はい、ありがとうございます」
ずっとクールで表情の変化に乏しいアルマが今は微笑んでいた。か、可愛い……!
ここに天使がいたとは思わなかった。
心臓のドキドキが止まらない。