臨時パーティ結成
食堂へ戻り、そのまま解散となった。
僕とヨークは二階の部屋。
ネヴィルとリナは一階の部屋らしい。
暗殺者さんにも客室が貸し出された。そういえば、暗殺者さんの名前をまだ聞いていなかった。明日にでも聞いてみよう。
――自室へ入ると、ヨークもついてきた。
「ヨ、ヨークは隣だろう」
「……え?」
「ま、まさか一緒に寝るつもり!?」
「は、はい……だって寂しいじゃないですか!」
涙目で訴えられても。
もしかして、ヨークって一人で寝れないタイプなのか。
でも、女の子と一緒に寝るだなんて……そんな経験ゼロの僕には、難易度が高すぎた。
「寂しいって言われても。ああ、そうだ、リナと寝るといいんじゃないか! 女の子同士だし」
「リナさんの事なら問題ありません。呼んでおきましたっ」
「なぬっ!?」
扉が開き、リナもやって来た。
アルマに連れられてきたようだ。
「お、お邪魔します……」
「リナ、君も僕と一緒に?」
「はい。お兄様は最近、一緒に寝てくれないんです」
寂しそうに肩を落とすリナ。
だからって僕でなくとも!
いやしかし、こうなっては断り辛い。二人と一緒に寝るしか、ないかあ。
幸い、ベッドは広いし……きっと何とかなる。
「分かった。ヨークもリナもおいで」
「わぁーい!」
「ありがとうございます!」
アルマがリナを抱え、ベッドへ寝かせる。
「あとはお願いします、ヘンリー様」
「ああ、こっちで面倒見ておくから……って、アルマ!?」
「私は椅子で寝ますので」
「椅子で?」
「ええ、リナお嬢様に万が一があったら困りますので」
そういう事情か。
確かにトイレとか困るもんな。
そんな間にもヨークもリナも這ってきた。僕はもう寝るしかなくて――二人に挟まれた。こんな広いベッドなのに密着されていた。
「……ヨーク、近いぞ」
「えへへ♪ いいではありませんかっ」
薔薇の良い匂いがする。
そういえば、神殿のような浴場には薔薇が浮いていたな。その時の香りが移ったのかな。
「えっと、リナもそんな大胆に……」
「ネヴィルお兄様と寝る時はこの距離感ですから」
僕を抱き枕みたいに挟むし。
ヨークはそれを見てムッとして対抗するし。
とうとう僕はヨークとリナから本当の意味では挟まれた。もぉ、これじゃあ寝れないじゃないか……。
* * *
寝れないかと思ったけれど、これが意外とグッスリ寝れた。ヨークとリナの体温が温かくて自然と目を閉じていたんだ。
「……ふぅ。二人ともまだ寝るし」
朝、目覚めるとヨークは床に落ちていた。シーツぐるぐる巻きで。……寝相悪いな。
リナは普通に寝ている。
うんうん、可愛い。
「おはようございます」
「うわッ、アルマ! 起きていたのかい!?」
「はい、私は早起きなので。それより、ヨーク様が大変です」
その通り、床に落ちている。
僕が拾い上げ、ベッドへ寝かせた。
「二人ともまだ寝かせておいてあげてくれ。僕は庭ダンジョンでも見てみようかな」
「朝の運動ですね。ちょうどいいです、パンケーキの素材が欲しかったんですよ」
「パンケーキの?」
「はい、はちみつです。イエロースライムがドロップするんですよ」
黄色いから落とすのかな。
ていうか、スライムが落とすものなのか!? 元ギルド職員とはいえ、全モンスターのドロップ情報までは把握していないからなあ。
冒険して経験を積むのもありかな。
「分かった。向かおう……っと、スイカも来るか?」
部屋の隅で寝ていたドラゴンのスイカがこちらに気づき、僕の肩に乗る。
『……(ウンウン)』
「分かった。三人でいこう」
臨時パーティを結成。
僕、スイカ、アルマでレッツゴーだ。