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湖の大魚・キングフィッシュ

 セント・ポール大聖堂を早々に立ち去り、テレポートスクロールを使った。もう街に用はない。


 不思議な光に包まれ、転移すると屋敷の前に辿り着く。そこには丁度、エドワードとアルマがいた。待ってくれていたのかな。


 そういえば、もうすっかり夕方。日が沈む前だった。



「おかえりなさいませ、ヘンリー様、ヨーク様」

「お待ちしておりました、ヘンリー様、ヨーク様」



 二人とも丁寧に出迎えてくれた。

 屋敷の中へ戻り、食堂へ入るとリナがテーブルの前に座っていた。


「ヘンリーさん、ヨークさん、お食事にしましょう」

「凄いタイミングだな。こちらの行動が分かっていたかのような」

「かもしれませんね」



 どういう事だ? リナにはそういう能力とかあるのだろうか。特に気にせず、僕とヨークは椅子に座る。


 テーブルの上には、たくさんの料理が並んでいた。うわ、なにこれ……魚料理かな。こっちは肉のようだけど見たことない。どれも高級食材っぽいぞ。


 これが貴族の料理か。


「い、良い匂いです。食べてもいいんですか!?」

「はい、ヨーク様。どうぞ、召し上がってください」


 僕もナイフとフォークを手に取り、魚料理を口に運ぶ。……うま、なんだこの魚。油がのってプルップルだ。


「これはなんて魚?」

「それは“キングフィッシュ”という大魚でございます、ヘンリー様。あの湖、ニニアンで私が釣り上げたものとなります」


 と、エドワードが説明をくれた。あの湖で釣り上げたのか! すごいな、それ。ていうか、釣りが出来るんだ。


 へえ、ギルド職員時代はそんな趣味に時間を割く暇がなかったから、やってみたいな。今こそ自由な時間があるし、いろいろ挑戦してみたい。


「エドワード、料理だけでなく釣りもできるんだ」

「ええ、食材は自給自足が基本ですからね。たまに街で買ったりもしますが」

「自給自足? 畑とか農業やってるんだ?」

「はい、基本的には私とアルマで農作物を育て、収穫しております。たまにネヴィル様やリナ様にも手伝っていただいておりますが」



 そういえば、屋敷の前には農地が広がっていたな。いろんな果物や野菜の畑が広がっていた。それだけじゃない、お茶栽培もしていたな。

 酪農(らくのう)――牛モンスターもいたし、牛乳とかも作っているようだ。それと畜産。イノシシモンスターが見えたし、そうか、あれは野生ではなく家畜か。



 いいね、僕も混ざってみようかな。その昔は、こういう屋敷生活に憧れていた。でも優雅に生活を送るイメージだったけど、ここは違った。

 自分で食べ物を作り、静かに暮らしている。なんていうか……理想の田舎暮らし的な。こういう隠居暮らしもいいかもな。


 だけど、ガヘリス問題は解決しなければならない。自分だけでなく、ヨークの仇でもあるガヘリスを。


 でも今は快適な暮らしをしてみるのもいいだろう。人間、いつ、どんな時に災難が降りかかるか分からないのだから――今を大切に生きよう。



「わたくし、農業をやってみたいです!!」



 いきなり椅子から立ち上がり、叫ぶヨーク。あまりに大声で耳がキーンとした。



「ヨ、ヨークさん!?」

「あ……ごめんなさい、リナさん」

「いいんです。でも、農業に興味があるのですね! 一緒にやりますか?」

「はい、やってみたいです!」


「分かりました。わたしが手取り足取り教えましょう」

「わーい! リナさん、ありがとぉー」


 なんて良い笑顔だ。

 今日一番のニコニコスマイルじゃないか? でもいい、ヨークが何かをしたいのなら僕は止めない。それに、僕は僕で釣りをやってみたいな。



 だけど、食後に事態は急変した……。

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