アイテムショップで装備を購入
街中を歩き、行き交う人とすれ違う。この中立地帯・スコットは本当にいろんな人種がいるなあ。肉の焼ける良い匂いも漂っているし、お腹が減る。
そんな中で『グゥ……』と音がした。
「……はぅ」
お腹を押さえ、頬を赤くするヨーク。
「どうした、腹が減ったのか。何か買ってやろうか」
「い、いえ……」
「遠慮するなって」
近くの出店で『ハッシュドポテト』が目に入ったので、おっちゃんに注文した。
「おっちゃん、それを四個くれ」
「らっしゃい! ダービー銅貨12枚ね」
「金貨でいいかな」
「き、金貨ァ!? お客さん金持ちだねえ。分かった、お釣りはノーフォーク銀貨99枚ね」
アイテムボックスに直接振り込んで貰い、取引完了。ハッシュドポテトを手に入れた。
「はい、ヨーク」
「こ、この良い匂いの食べ物はなんですか!? 狐色で初めて見る形状です……」
ヨークは、ぱぁと瞳を輝かせる。どうやら、この料理は初めてらしい。という僕もあんまり食べた事はないけど、パリパリしていて美味いんだよな。
「食べてみな」
「は、はいっ……はぐっ! ん~~! 美味しいです。ちょっと油っぽいですけど、パリパリしていてクセになる食感です!」
子供のように純粋に喜ぶヨークを見て、僕はちょっとドキッとした。感情を誤魔化すように僕もポテトを頬張る。
う、美味い……!
じゅわじゅわっと油が染み出てくる。それがいい塩加減になっていて夢中になって食べてしまっていた。二枚目もパクパク食べて完食。ヨークもすっかり笑顔だった。
「これは美味かったな。スコットの料理ってランカスター帝国と違って味付けが濃いな」
「ええ、わたくしは薄味の方がいいですけど、空腹だった今なら丁度いい塩梅ですっ」
お腹も膨れたところで、アイテムショップへ向かう。
近くに錬金術師の営む個人店があった。見るからに立派で、教会のように大きかった。
中へ入っていくと、武器やら鎧やらズラリと並んでいた。ポーションもたくさん。こんなお店があるんだな。
カウンターには、青髪のエルフがいた。あの人が店主かな。
「ようこそ。私はハンフリー。何をお買い求めでしょうか」
「とりあえず、S級以上の装備が欲しい」
「S級装備ですか。お客さん見たところ、ランカスター帝国の方でしょ? そちらの銀髪の女の子は……よく分かりませんけど」
「ああ、それが?」
「いや、こんな中立地帯で装備を買うより、帝国の方がいろいろありますよ。それとも事情が?」
「残念ながら帝国には戻れないんだ。だから、この店を頼りに来た」
「事情があるようですね。分かりました、では、こちらが販売リストになります」
【販売品目】
レッドポーション 100セント
グリーンポーション 500セント
イエローポーション 800セント
ホワイトポーション 1000セント
ブルーポーション 3000セント
改良型レッドポーション 500セント
改良型ブルーポーション 6000セント
D級ロングソード 5000セント
D級シールド 5000セント
A級ナイトヘルム 50000セント
A級タリスマンアーマー 80000セント
S級フランベルジュ 300000セント
S級ツヴァイヘンダー 500000セント
S級オーダーグリーブ 500000セント
S級アミュレットマント 500000セント
SS級オークマント 3200000セント
SSS級ルートガントレット 18000000セント
おぉ、この中立地帯でも『リスト化』できるんだな。目の前には販売品目が表示され、タップして購入数を選んだり、下へスクロールできた。
「わー! ヘンリーさん、これなんです?」
「なんだ、ヨークは知らないのか」
「はい、わたくしはお店は初めてなんです」
なんと、そんな事があるのか?
この世界に住んでいる以上、お店は利用するものだと思うけど……いや、貴族とか王族なら別かもしれないけど。まさかな。
「そうか、なら元ギルド職員として教えてやろう。いいか、ヨーク。これはアイテムショップ特有のシステムでね。こうして売りたいアイテムをリスト化できるんだ。しかも、セルフレジだから取引も楽なんだよね」
ハッシュドポテトを買った時も同じだ。
「へぇ、便利なんですね! ヘンリーさんは、何を買うつもりなんですか?」
「まあ、お金は余裕あるし、全部かな」
「「ぜ、全部ぅ!?」」
ヨークも店主も驚いていた。
冒険者ではない、元ギルド職員の僕には、まともな装備なんてないからね。これで結構強くなれるぞ。