2回戦です
すみません、本当にすみません。
今、うちの嫁が2回戦で暴れ回っています。
「強い!強いぞステラ!
ユイリ選手あっという間に5人を撃破!
前年度準優勝パーティ、ルミナスコードもう後がないぞ!?」
一戦目の剣士の人大丈夫かなあ、地面に顔めり込んでたけど。
二人目は派手に壁にぶつかってだけど、歩いてたから大丈夫だろう。
三人目の魔法使いは魔法発動前に一気にユイリの後ろ回し蹴りで撃破。
やっぱりこの勝ち抜き戦のルールは遠距離職にはキツイと思う。
まあリリルは例外だけどな、もうリリルは魔法使いとは言い難いし。
四人目も五人目もユイリのハルバードに蹴散らされていた。
五人目の大盾装備のタンカーの人、盾ごと腕も壊れてたなあ、痛そう。
「さあ!追い詰められたルミナスコード!パーティリーダーのイリアス選手、一矢報いる事が出来るか!?」
「まさかこんな展開になるとは思わなかった。
今年こそはAランクにと息巻いていたが……浅はかだったか。
まさか君達みたいなパーティがいるとは」
「おじさん達も中々だったよ?また来年頑張ってね!」
「いやいや、見たところ君がステラ最強だろう?
ならば君に勝ちさえすれば、後はどうにでもなるさ」
ああ、駄目だ。
あのイリアスってハンサムなおじさま現実が見えてない。
違うよ?馬鹿にしているわけじゃないよ?
ユイリの言葉に受け答えは出来ているが、目の焦点が定まっていない。
まだ戦闘が始まってないのに大量の発汗と荒い呼吸。
昨年準優勝した自分達が新参のパーティのたった一人に壊滅状態にさせられたのだ。
彼らも前の試合、スミレの試合は見ている筈。
ユイリを倒してもスミレがいるということを忘れてるわけがない
混乱、いや現実逃避をしたくなる気持ちは分かる。
「2回戦、最終試合!始め!」
だが1回戦のパーティと違い、このパーティは最後まで諦めなかった。
イリアスは自分の頬を叩くと、背中のロングソードと腰のショートソードを抜いて構えた。
大小の二刀遣い、腕は立つのだろう。
面構えも悪くない。
「ウオォォオ!」
イリアスが吠え、ユイリ目掛けて駆けていく。
ユイリはハルバードを脇に構えて迎撃の姿勢。
いつものニコニコ笑顔が消えた。
口元は結ばれ、目付きは鋭い。
イリアスが一太刀振り下ろすがユイリはハルバードで受けた。
ユイリの空いた脇にイリアスはショートソードを振る。
それをユイリはハルバードから片手を離し、ロングソードを防いだまま、イリアスの剣の柄ごと手を握った。
「獣人族とはいえ、一体この力はなんだ!」
イリアスがロングソードを引き、ユイリを突こうと腕を引く。
それは当たると死ぬが、まあ承知のうえだろう。
避けると踏んで、距離を取ってくれると思ってユイリに剣の切っ先を向けたんだろうけど。
ユイリは元タンカーだ。
ゼロ距離での戦闘など慣れたものなのだ。
ユイリは切っ先を首を傾げて避けるとイリアスを頭突いた。
カウンターで食らう頭突きは超痛い。
しかしイリアスも戦いなれてるな、ちゃんと額で受けたか。
鼻なら終わってたな。
とはいえユイリのパワーでイリアスは後方へ吹き飛んだが。
「ばっ、馬鹿なこんな事が」
「イリアス選手ダメージ!!痛い、痛すぎる!血が滲んでいるぞイリアス選手!!」
イリアスが額から流した血はユイリの額にも付着していた。
そのユイリに付着した血が滴りユイリの頬を流れる。
その血を舌で舐め取り、ユイリがニヤリと悪い笑みを浮かべた。
悪役か君は、その悪い顔やめなさい。
剣を杖に立ち上がろとするイリアス。
倒れてしまえば楽だろうに。
流石昨年準優勝パーティのリーダー、良い冒険者だ。
だが終わりだ、剣を構えたまでは良いが、既にユイリが距離を詰めてハルバードを大上段に振り上げている。
「む、無念だ」
イリアスの眼前に迫るハルバードの刃。
目を閉じ武器を下ろすイリアス。
ユイリはイリアスの鼻先にハルバードの刃を寸でのところで止めた。
「決着、決着ぅう!!ステラのユイリ選手、交代する事なく6人抜きだぁあ!!」
ハルバードを手遊びするように回し地面に刺したユイリが、崩れ落ちるイリアスを支えた。
「ありがとうおじさん!楽しかったよ!」
「そうかい、光栄だよ」
気を失ったイリアスを医療班に引き渡し、ユイリが帰ってきた。
尻尾をブンブン振って上機嫌だ。
「たっだいまあ!いやあ楽しかったあ!ちゃんと私強くなってたね!
セツナ君には勝てないから実感沸かなかったんだよねえ。
ああ良かった!鍛錬の成果出てて!」
うん、なんかごめんね。
まあ今は褒めるべきだな。
「ユイリも強くなってたな。
良い試合だったよ」
「でしょでしょ〜。
私もスミレみたいに撫でて撫でてえ」
超撫でた。
これで2回戦突破。
次は3回戦、リリルの番だ。




