建国祭へ
森の遺跡ダンジョンでの捜索任務から数ヶ月が経った。
遂に、建国祭が一週間後に開催される。
ギルドからの使者が我が家に来たのは、そんなある日の事だった。
「ステラの皆様には領主であるベルヴァルト夫妻の王都への警護を依頼します」
ベルヴァルト夫妻。
ヴィゼル・ツー・ベルヴァルト・アルタ、この街の領主でありギルドマスターの本名だ。
この街で最初に出来た男友達がヴィゼルなんだよなあ。
今はたまにだが仕事終わりに飲みに行ったりもしている。
その領主様が直々にギルドの使者と、もう1人を連れて共に我が家を訪れていた。
「やあセツナ、明日からよろしく。
こっちが妻のアンリエッタ、仲良くしてやってね」
「お初にお目にかかりますステラの皆様、明日からの警護任務と闘技大会の件、よろしくお願いいたします」
長い金髪を後ろで纏めた碧眼の麗人だ、外出用のドレスだが華やかさがある。
流石貴族。
「はじめまして、ステラのパーティメンバーでヴィゼルの友人のセツナです。
以後お見知りおきを」
相手は貴族だしなあ、と思いながら貴族流の作法で礼をしたが、ヴィゼルの奥さん、アンリエッタさんは口元を抑え、驚いた表情を浮かべていた。
何か粗相をしてしまったか?なら、かなり恥ずかしい。
嫁達も見てるのに。
「ヴィゼル、この方本当に冒険者ですの?
何処かの貴族の方の間違いではないの?」
「いや?セツナは確かにうちの冒険者だよ」
「しっかりとした貴族式の礼作法を行うことが出来るなんて、貴族の方でもないと――」
良かった、どうやら褒められているらしい。
長い転生生活で、貴族とも関わりはあったのでその辺りは大丈夫だと思っていたが、なにせ古い記憶だ、思い違いが無くて良かった。
俺に続く形でメリカ達も挨拶を済ませた。
皆、スミレ以外はヴィゼルに対しては砕けた態度で接していたが、アンリエッタさん相手には緊張しているようだった。
メリカも面識はあるようだが何処かぎこちない。
ヴィゼルとアンリエッタさん、ギルドの使者をリビングに招き入れ明日からの予定を説明してもらっている途中の事――。
「じゃあ途中でルベリタって町に寄るのか」
「王都までの道のりは長いからね。
一旦この町で休んでいくよ」
「……ルベリタ」
ヴィゼルとルートの確認をしている最中。
ルベリタという町の名を聞いて、リリルの顔が曇った。
「どうしたリリル、何か問題か?」
「ルベリタは私達の故郷だよ」
リリルではなくユイリが応えた。
リリルとユイリは幼なじみらしいが、そうか、生まれ故郷か。
丁度良いな、かなり遅いがご両親に挨拶に行くか。
「じゃあルベリタに寄ったらリリルとユイリの両親に会わせてくれないか?
婚約の件を含めて挨拶したいんだけど」
「まあ、良いけど」




