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結局報酬は無かった

 「すみません、クエスト受付けってここですよね? アドニアさんに言われて来たんですけど」


 さっきメリカちゃんが何か言いかけてたけど、何を言うつもりだったんだろうか、まあとりあえず用を済ませてから聞いてみるか。


 「伺っております、ギルドカードを預かってもよろしいでしょうか?」


 「ああ、はいどうぞ」


 カードを預けると受付けのお兄さんは奥に引っ込んでしまった。

 アドニア氏とは違ってスーツスタイルの好青年だが、目付きや物腰から普通の職員とは違うように感じるのだが、気のせいだろうか。


 「お待たせしました、登録初日でCランクに昇級される方は久しぶりに見ました。

 グレートボアはBランクの依頼でしたので、実力を鑑みればBランクでも良いのですが、あいにくBランクから上はギルドカードのアップグレードに時間を要しまして、また後日いらして下さればカードを発行致しますので。

 これからのご活躍に期待しております」


 ああそうか、見習い冒険者が受ける依頼は基本的に雑務だが、魔物を倒すのが昇級の条件なのか。

 なら確かに魔物を倒せる人物を遊ばせるわけにはいかんわなあ。


 「ただ、申し訳ありません。

 正規の依頼料は出なくてですね」


 うぐ、確かに依頼受けて倒したわけじゃないしなあ。

 

 「分かりました。

 すみません、このギルドに仮眠室ってあります? 

 俺この街に来たばかりで宿とかまだとってないんですよ。

 お金もあんまり持ってないし」


 あんまりでは無く、まったく無いんだが、変なプライドがでてしまった。

 仮眠室あってくれ。

 一日目から野宿は嫌だ。

 寝袋すらないんだよ今。


「ありますよ、今日は空き部屋がある筈ですからそちらを――」


 ギルド職員のお兄さんがそこまで言ったところでメリカちゃんが俺の服の袖を引っ張った。

 

 「どうしたの?」


 「着いてきて下さい。

 ヴィゼルさん、後は私が引き受けます」

 

 「え、ああ分かったじゃあお願いするね」


 仮眠室に連れて行ってくれるのかな?

 優しい子だなあ。

 だけどそっちはギルドの出入り口なんだけど?

 あれ? メリカちゃん? 外出ちゃったけど?


 「今日は私の家に泊まって下さい」


 「うえ!?」


 変な声出た。

 最近の娘は積極的だなあ。

 じゃなくて、いくらBランクの冒険者だからってそれは流石に不用心だろ。


 「いや、良いよメリカちゃん! 今日は仮眠室で寝るからさ。

 それにほら、メリカちゃんのご両親にも迷惑掛けるし」


 「両親は私が、20歳の頃に死にました」


 うわあ、地雷踏み抜いたわあ。

 ん? 20歳の頃って? どう見ても15歳前後にしか見えないんだが?


 「もしかしてメリカちゃんも長命種?」


 「はい、私は竜人族の祖父と人間族の祖母のハーフである父とハーフエルフである母の娘のクォーターです……クォーターと言うよりはミックスですかね?」


 はああ、昔はハーフでも珍しかったもんだけど、こういうところに時代の流れを感じるなあ。

 そうかぁ、クォーターかあ。

 各種族仲良くやってんだなあ。


 「私は、祖父の先祖返りで、今は邪魔なので格納していますが、羽根も尻尾もあります、見ますか?」


 答える前に羽根と尻尾を出すメリカ。

 なるほど腰の辺りの穴と背中のスリットはこの為だったか。


 「小さいですが角もあります」


 「おお」


 本当だ、ちゃんと2本角がある。

 どれ手触りは――


 「ひゃう!?」


 「あ、ごめんつい」


 しまった、敏感な場所だったか!

 いかん、道行く人の視線が生暖かい。

 

 「と、とりあえず。

 着いてきて下さい」


 ええい、仕方あるまい、こうなったら着いて行きますとも。

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― 新着の感想 ―
[一言] え、そこが弱点なんですか?
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