試験の後で
「メリカちゃんに触っただと!?」
「それどころか一撃入れやがったぞ!?」
などの声を尻目に、俺はメリカちゃんに「付いてきて下さい」と言われたので、メリカちゃんの後ろを付いていき再び受付へとやって来た。
メリカちゃんと共に受付に行った時、受付のお姉さんは目を丸くして驚いていたが、お姉さんも合格者が出るとは思っていなかったのだろう。
「合格者1名です、手続きお願いします」
このメリカちゃんの声というか、試験会場から出てきた時点でそうだったのだが、ギルド内の喧騒は何処かへと消えていた。
「メリカが合格者を出したのか」
「珍しいな、無謀な挑戦者は合格させないって言ってたのに」
なるほど、素人相手に手厳しいとは思っていたが、色々あるんだな。
「お兄さん、登録」
「ああ、すまない。
お姉さん登録お願いします」
「はい。
ではこちらの書類に名前と種族、出身地をお願いします」
……今の今まで失念していた事がある。
名前を、決めていない。
しかも出身地とかないんだよなあ。
「あの、どうされましたか?」
「ああ、いや、出身地なんだけど随分長い間森で暮らしてたんで地名が分からないんだ」
とりあえず種族の欄はハーフエルフと書いて話を長引かせるか。
名前、どうするかなあ輪廻、リーインカーネーション、リーイン、リーン。
う〜ん、しっくりこないなあ。
「長命種のかたならそういった事もあるんですかねえ。
しかし、該当無しというわけにも」
「あたしが身元を保証します」
メリカちゃんがそう言ってくれたのには、正直驚いた。
「メリカさんがそう言うなら」
良いのか、このメリカちゃんはギルドからの信頼も厚いらしいな。
「ではお名前の方を」
うん、考えてなかった。
名前かあ、前がエクシス、その前がアギレス、もう1つ前はゼノリア。
どれもその時両親になってくれた人がくれた大事な名前だ。
色々あったが、思い出すのは一瞬だ。
一瞬、刹那。
日本名か、それも良いな。
「セツナっと」
「はい、確かに受け取りました。
最後にこちらの水晶に手を乗せて魔力を注いでください。
下に設置されたギルドカードに個人情報を登録しますので、それで終了となります」
お、これはちょっと発展してるな。
昔はギルドカードの登録に血が必要だったから、針とかナイフとかカウンターに置いてたなあ。
「はい、ありがとうございます。
これで登録完了です、こちらは再発行に手数料が掛かりますのでご注意ください」
「ありがとう。
お嬢ちゃんもありがとうな、助かったよ」
「構いません、アナタは強い。
強い人はギルドに必要だから」