2階層目
モチベーションの違いとは凄まじいものだ。
さっきまでアンデッド達との戦闘を嫌がっていたユイリちゃんが、率先してアンデッド達を狩っている。
「てえりゃあ!」
「ユイリさんには、負けられません」
ユイリちゃんに触発されたか、メリカちゃんもアンデッド達を蹴散らしていく。
最早2人で、2階層目を突破しそうな勢いだ。
「ほどほどになあ、ボス部屋に着く前に倒れちゃうぞ〜。
う〜ん、聞いてないな」
広くて薄暗いフロアの先、うっすら二人が暴れているのが見える。
流石に聞こえるわけないかと思って二人の方へと歩き始めた俺とリリルちゃんだったが、突然二人がピタリと動きを止め、コチラを向いたかと思うと、全力で走りだした。
「ああ、良かった聞こえてたか」
「そうかしら、何か様子が変じゃない?」
確かに、言われてみると二人共顔が青い。
それに何か叫んでいるような。
「うわぁあ!! スライムが、でっかいスライムがいる!」
「び、びっくりしました。
初めて見るタイプのスライムでした」
「ポイズンスライムか、ヴェノムスライムか、アンデッド系と一緒にいるなら毒持ちのスライムだと思うけど……確かめるか」
光魔法、光弾を一発ゆっくり、メリカちゃんとユイリちゃんが走ってきた方向に放つ。
照明弾の代わりだ、まずは姿の確認を……。
「うわあ、デカァい」
壁が迫って来てるのかと思った。
通常のスライムはサッカーボール位だが、このスライムはグレートボアと同等のサイズだ。
大型トラックに迫る大きさのスライムだと、ユイリちゃんの剣はもちろん、メリカちゃんの大剣すら核に届かない。
そんなスライムが迫って来ていた。
踵を返して逃げて来た二人は英断だったと思う。
「リリルちゃん氷魔法!」
「了解よ!」
タイミングを合わせたわけではなかったが、俺とリリルちゃんは同時に氷魔法、氷の槍をスライム目掛けて放った。
「やっ……」
危ねえ、やったかって言いかけた。
やったか、からのやってないは定番だからなあ、危ない危ない。
「やったかしら」
やらかしましたわ。
物理攻撃に近しい氷の槍はスライムの核を掠めて貫通してしまったらしい。
動きは随分鈍ったが、まだ生きている。
「火魔法使うか」
「密閉空間で?」
「まあ見ててよ」
俺は火属性に変換した魔力を指先に一点集中させ、熱量を上げていく。
普段使いの火魔法が火球に回転を加えて威力と速度をあげる魔法なら、これはホースの先を摘んで水の威力を上げるように圧縮して威力をあげる魔法、強烈な熱光線だ。
その熱線をスライムの核目掛けて放った。
貫通力に特化させた火魔法、熱線は安々と核を破壊。
スライムを塵に変えた。
「びっ、びっくりしたあ」
「あんなに大きなスライム初めて見ました」
「これは要注意の魔物として記載して貰わないとね。
物理攻撃しか出来ないパーティーだとあのスライムで全滅してしまうわ」
暗いフロアに照明弾代わりの光弾を撃ち、索敵するがスライムはさっきの一匹だけだったみたいだった。
その後2階層目をあらかた歩きマッピングしていったが、スライムは現れなかった。
「そこまで入り組んでないね、メリカちゃん疲れてない? 大丈夫?」
「大丈夫です、ユイリさん。
心配してくれて、ありがとうございます。
あ、階段ありました」
なんだろう、ユイリちゃんの告白からメリカちゃんとユイリちゃんの仲が更に良くなっている気がする。
まあ、嫌悪になるよりは良いか。




