ダンジョン突入前夜Ⅱ
昨日耳掻きしているときは随分艶のある声を出していたメリカちゃんだが、今日は我慢しているようだ。
左右の耳掻きを終え、恍惚とした表情を浮かべるメリカちゃんの表情を見てユイリちゃんとリリルちゃんは顔を赤らめていた。
「そ、そんなに気持ちいいの?」
「セツナさんの耳掻き、クセになっちゃいます」
ユイリちゃんとリリルちゃんが生唾を飲み込む音が此方にも聞こえてきそうだ。
「ユイリさんもセツナさんに耳掻きしてもらってください、きっとクセになります」
「い、良いの?」
「幸せは、共有するべきです」
メリカちゃんの言葉にモジモジし始めたユイリちゃんと、髪を弄り始めるリリルちゃん。
まあ出会って数日の男に耳掻きしてもらうのは恥ずかしいわなあ。
「う〜、お願いします!」
「良いよ、おいで」
正座をして膝をポンと叩き、手を上げて声を出したユイリちゃんを呼ぶ。
犬か狼か、見分けはつかないが獣人の耳掻きなど初めての事だ上手く出来るだろうか。
ん?ユイリちゃん、何故正面に座るのかな?
ああ、そりゃそうか。
人族とは違うもんな。
正面から仰向きに寝転べば両耳見れるというわけか。
「見えんな」
人とは違う耳の構造、それ以前に耳の辺りが毛に覆われていて何も見えぬ。
様子を、見つつ弱めにやるか。
「耳触るよ?」
「あわわ、ひゃ、ひゃいい」
怖がってるのか恥ずかしいのか分からんが、体が小刻みに震えている。
昔拾って育てた仔犬を思い出すなあ。
「ひゃん!」
「大丈夫か?」
「大丈夫、大丈夫だよ」
耳掻きを耳の中に入れて優しく動かし、そして空いている手で反対側の大きな耳を摘んで優しく撫でる。
飼ってた犬も耳を撫でてる時気持ち良さそうだった。
やはり撫でるのが正解か。
「うあぁ、きもひい」
「セツナさんセツナさん、私も耳触りたいです」
「こうやって摘んで優しく撫でてやると良いよ」
メリカちゃんも参戦し、ユイリちゃんの耳を撫で回す。
みるみるユイリちゃんの顔が紅潮し、先程のメリカちゃんと同じく恍惚な表情へと変わっていくのが超エロい。
「はぁはぁ、こ、これヤバいね」
「楽しい」
メリカちゃんが何かに目覚めそうだ。
さて、では仲間ハズレは良くないので、今度はリリルちゃんの番だ。
「おいでリリルちゃん」
「い、いや私は遠慮するわ」
「え〜? セツナ君上手だよ?」
「セツナさんの耳掻きは至高です」
膝をポンと叩いては、リリルちゃんが一歩後退る。
ふむ、嫌がるのを無理やりするのは良くない、良くないが――。
「メリカちゃん、ユイリちゃん」
「はい」
「なあに?」
「取り押さえなさい」
「「了解!」」
ノリが良くて助かる。
ジリジリとリリルちゃんを追い詰める2人。
さしもの魔法使いも前衛二人を相手にできるわけも無く。
直ぐにリリルちゃんは俺の横に連行された。
「っく、殺せ」
「女騎士か君は。
まぁまぁ親睦を深める為って事で、観念したまえよ」
そしてリリルちゃんも結局、俺に耳掻きされるハメになったのだった。




