星を見に行こう
突然のアンサラー来訪から数日後。
俺達夫婦6人とアルティナは久方ぶりに鍛錬を兼ねてダンジョン攻略へと赴いていた。
冒険者では無いがアルティナは俺の召喚獣なので同行を許可されている。
事の起こりはアンサラーが帰ったその日の晩、二階のバルコニーで夫婦皆で果実酒片手に団欒していた時のユイリの発言からだった。
「今日は星が一層綺麗に見えるねえ」
ほろ酔いで頬を赤らめたユイリが満天の星空を見上げながらそう言ったのだ。
地球の星空とは違うので見知った星座は一つも無いが、もうこの世界の星空も見慣れたものだ。
千年以上前、墜ちてきたこの惑星の衛星を砕いた事で出来上がったリングが天の川みたいで綺麗だなあとは思った事がある。
「もっと近くで見れないかなあ」
「なら、宇宙にでも行かないとなあ」
「宇宙?」
「空の更に上にあるあの星が輝く黒い空間の事だよ」
「えー?空の上は天界じゃないの?」
「天界は存在するけど、そもそも次元が違うからなあ」
「はえ?」
ここからしばらくこの世界と天界のある次元の話をするのだが、最終的にユイリの「よくわかんない」で話は終わった。
まあ死ななきゃ分からん世界だからなあ。
頭上に広がる星の海を眺めながらの星見酒。
新月の夜だと言うのに地球と違い随分明るく感じる。
静寂の中、果実酒を入れたグラスを傾けた際に氷がカランと音をたてる。
「あ、流れ星ですね」
不意に空を一筋の光が横切り、メリカが言った。
その流れ星を見てユイリが嬉しそうに尻尾を振る。可愛い。
「あ、そういえば星がもっと綺麗に見える場所があるわね」
「もしかして星見の塔?」
「ああ確かに。聞いた事がありますね。
最上階に行くと星が手に入る塔型のダンジョンがあると」
星が手に入る?
隕石でもあるのだろうか。
いや、普通に考えれば比喩的な宝があると言う事かな?
気になる。
考え始めると気になって仕方無い。
ならば、攻略しましょう星見の塔とやら。
「よし、皆でその星見の塔とやらに行ってみるか」
「わーい!ダンジョン攻略だあ!」
「昔ならAランクダンジョンなんて無理だと言ってたでしょうけど、皆となら大丈夫だと胸を張って言えるわね」
そんなこんなで俺達は翌朝、ヴィゼルにダンジョン攻略に向かう旨を伝えて星見の塔と呼ばれるダンジョンが存在する王都グランベルクと、アルタの間の山へと向かい。
その山間部にある祠にある転移陣から星見の塔へと転移、攻略を開始したのだった。




