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転生冒険者の異世界生活  作者: リズ


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188/207

招かれざる客

 ニードルフィッシュ料理に舌鼓を打ちながら楽しむ宴会の時間。

 楽しそうに楽しむ嫁達や街の人々。

 見ているこちらも楽しくなる。

 ……なのに胸の中にあるざわめきが収まらない。


 嫌な予感と言うやつだ。

 確証のない不安。

 横断歩道のない道路を小さな子供が歩いていて、そこに速度超過の車が迫るのを目にした時、良くない結果を想像してしまい、それが現実に起こりそうになっている。

 そんなざわめきが胸の内にひしめいている。

 この後良くない事が起こる。

 そんな気がしてならないのだ。


 気配察知を起動してみるが……ここから数km四方に気になるような反応は無い。

 しかし、女神様の加護の1つである“直感”は警鐘を鳴らしていた。


 「セツナさん、お加減でも悪いのですか?

 顔色が良くないですよ?」


 「いや、大丈夫だ。大丈夫な筈だよ」


 心配そうに俺を見上げるメリカの頭を撫でると、メリカは「はわわ」と顔を赤らめた。

 いつものように和むのに、やはり胸のざわめきは収まらない。

 で、あるならば行動するべきだ。


 「ごめんメリカ、風にあたってくるよ」


「ご一緒しても大丈夫ですか?」


 「ああ。もちろん」


 メリカが腕を組んできたので二人で海岸へと歩き出す。

 メリカ以外の嫁達にも念話で海を見に行くと伝えたら、近くにいたアルティナとスミレは俺達の後に続いた。


 リリルとユイリ、シャオも合流してくれるらしい。


 「別に楽しんでても良いんだよ?」


 と言ったら「セツナ君が居ないから嫌」とユイリに言われてしまった。

 皆も同じ意見らしい。

 俺に依存してない?皆。まあ俺も嫁には依存してるか、居なくなったらと考えると……無理、耐えられん。


 「あれだけのサイズのニードルフィッシュを半日足らずで解体しきるとはなあ。

 流石はプロの解体班が総出で作業しただけあるなあ」


 「骨も残ってませんね」


 「スープの出汁に使ってたなあ骨」


 「聞くところによれば建材や武器防具などにも使用されるそうです」


 「あのサイズの骨だもんなあ。強度的には申し分ないよなあ」


 言葉を交わしながら、海岸に降りて砂浜を歩く。

 やはりこの胸のざわめきは海から感じる。

 気配察知の範囲を海面だけではなく、海底にも広げてみるか。


 「……何か居るな」

 

 「敵ですか?」


 「敵だ」


 海底に沖からこちらに向かってくる反応を見つけた。

 しかしこの反応、ニードルフィッシュよりさらに――。


 「デカい反応が竜車より速い速度で近付いてきてる、この反応、ニードルフィッシュより巨大だ!」


 「そんな、あのニードルフィッシュよりですか!?」


 「来るぞ!」


 皆一斉にインベントリを開いて自分の装備を取り出して装備する。

 そして、ソイツはそれを待っていたかのように海面に飛び出し、現れた。


 「ギャァアアア!!」という重金属が削れるような咆哮。

 海蛇のような黒い長大な身体。

 海蛇の鱗を刺々しくしたような装甲鱗

 その長大な体から伸びる腕。

 東洋の龍を思わせる頭部は紅い双眸が輝いていた。


 灯台の光に照らされたソイツ、海に君臨する海龍種最大の魔物、リヴァイアサン。

 地球でも名の知れた正真正銘の化け物だ。


 「ああなるほど、胸騒ぎの正体はお前か」


 「リヴァイアサン!なんで陸に程近い場所にアレが!?」


 「沖で食いごたえのあるニードルフィッシュを見つけて追い掛けて来たんじゃないかな。

 ニードルフィッシュがマリネスの冒険者に襲われても海に帰らなかったのはアレに追われたからかも知れない」


 さしものリヴァイアサンもニードルフィッシュの猛毒を警戒したのか、はたまた遊んでいたのかは知らないが、リヴァイアサンはニードルフィッシュを見失ったのだ。

 いや、もしかしたら毒が面倒で陸に追いやったニードルフィッシュを冒険者に処理させて美味しい所だけ持っていくつもりだったのかも知れない。

 

 まあ全部憶測でしかないが。


 それよりもまずいな、リヴァイアサンが飛び出してきたせいで海面が隆起した。

 このままじゃ津波がマリネスを壊滅させてしまう。


 「セツナさんどうしますか?」


 「アイツは陸にも上がれる、街の近くに現れた以上、倒す」


 「しかし、波が」


 「任せてくれ。遥か昔、大賢者と呼ばれた俺の力。あのデカい海蛇に見せてやる」


 一瞬浜辺の海水が一気に引き、眼前に津波が迫る。

 その津波に向かって俺は手を翳した。

 使う魔法は最高位氷魔法、絶対零度と呼ばれるこの世界最強の氷魔法だ。


 「波が、海が全部凍りました」


 ああ、この力をあの時、地球で使えていたなら一体どれほどの……いや、考えても仕方ない。

 あの世界とこの世界では理が違うのだから。


 「アルティナ、わざわざ遥か沖から来てくれたアイツには悪いが、人の世にアイツは邪魔にしかならん。

 退場させてくれ」


 「了解です我が友」

 

 アルティナが人のままに口を開き、そこに魔法陣を出現させると、そこから龍形態の時と同等のブレスを放った。


 超高熱、超高圧の特大ブレスが分厚い津波だった氷の壁を貫きリヴァイアサンに向かう。

 さしものリヴァイアサンも海を凍らされては動くことも出来ない、なによりリヴァイアサン自体も半分は海面下は凍りついている。動けるはずがない。


 しかし海龍種最強は伊達ではない。

 リヴァイアサンも水属性を纏った魔力で錬られた特大ブレスを負けじと放つが、アルティナはこの世界の龍種の中で最強だ。

 リヴァイアサンのブレスはアルティナのブレスに掻き消され、そのまま直撃の運命を辿った。

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