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冒険者ギルド・マリネス支部

 宿で一夜を過し、耳に心地良い波の音でその日は目を覚ました。

 宿屋の店主の話によると、本来なら今期のように前年度に比べ暑い気候が続く年は既にマリネスの街はお祭り騒ぎになっているそうなのだが、皆でマリネスのギルドに向かう道中の様子はさながらゴーストタウンの様相を呈していた。


 「海水浴場に出現する魔物とはなんなのでしょうか」


 街の様子を見ながら心配そうな声でメリカが呟いた。

 

 「海洋生物型の魔物だと浅瀬に出るのは蟹とかかな?

 でもたまにイカとかタコも揚がってくるからなあ」


 もちろん普通の魚介類ではない。

 俺が言った蟹とはタイタンクラブ。

 イカ、タコはこの世界では一括でヒュージクラーケンと呼ばれているれっきとした魔物の事だ。

 

 「蟹なら鍋で食べたい!」


 「私はお刺身が好きなのよねえ」


 最近、というわけではないがたまに思うけど、ユイリとリリルが魔物を食料としてしか見ていない気がする。


 「クラーケンの方は八本足か十本足かで調理方法が変わりますね」


 「私十本足のリング揚げ大好きい」


 「八本足の酢の物も絶品ですよ?」


 シャオとスミレもまだ見ぬ海の幸にヨダレでも垂れそうな様子だ。

 皆どうした?腹減った?


 「セツナさんは何が好きですか?」


 メリカだが?

 いや、この流れでその答えは間違ってるか。

 

 「俺はタコ焼きが食べたい」


 「イーストエッジでの八本足の砲弾焼きの別称の事ですね。

 子供の頃縁日等で食した記憶があります」


 地球に生まれ、日本、関西で育った元関西人としてはタコ焼き食べたい。

 想像してたら本当に食べたくなってきたな。

 海岸に出没するのがタコなのを願おう。


 しかし本当に様変わりしたなあマリネスの街。

 生前訪れた時はのどかな漁村だったんだが。

 時間の流れだなあ。

 まあ昔は昔、今は今って事かな。


 しばらく街を歩き、旅行らしく人伝にギルドの場所を聞きながら俺達はギルドまでの道程を楽しんだ。

 アルタと違い、やはり観光地としての一面が強いのだろうなあ。

 到着したギルドの外観も街並み同様ホテルの様な外観だった。


 とはいえ冒険者ギルドだ。

 内装はアルタのギルドと同様である。


 「アルタの冒険者パーティ、ステラです。

 海水浴場が閉鎖されてるって聞いたんですが、何か情報があれば教えてくれませんか?」


 ギルドカードを提示しながらクエスト受付に座る職員のお姉さんに声を掛ける。

 ギルドの内装はアルタと同じだが、制服はアルタや王都のギルドと違ってセーラー服みたいなデザインなの可愛いな。


 「え、Sランク冒険者の方ですか!?

 よ、よよよ、ようこそいらっしゃいました!

 い、今ギルドマスターを呼んできますので少々お待ち下さい!」


 俺のカードを見るなり飛び上がる様に椅子から立ち上がった職員のお姉さんは椅子に足を、棚に脇腹をぶつけながら奥の部屋へと消えていった。

 痛そう。

 そんなに慌てなくても良いのになあ。


 「アルタのSランク。

 なるほど貴方達がステラなのね」


 奥の部屋から出てきたのはセーラーを着た職員では無く、どちらかと言うとベストにフロックコートとという海賊の様な格好をした女性だった。


 「冒険者ギルドマリネス支部のギルドマスター。

 マーレイ・セググリムだ。宜しく色男」


 「Sランク冒険者パーティ、ステラに所属しているセツナです。

 宜しくお嬢さん」


 「っはっはっは!ハーフエルフから見りゃあ確かに私もまだまだ若いか!

 で?確か海水浴場閉鎖の原因についてだったね。

 いや、もう原因も何もあったもんかね、一緒に来てくれ。見たほうが早いよ」

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