報酬を頂きました
「うお!? メリカの嬢ちゃんが私服だと? 一体どういう風の吹き回しだ!?」
受付けに姿を表したアドニア氏の驚きかたからするに、メリカちゃんの私服姿というのはそうとう珍しいのか。
出会って2日目でその姿を見られた俺は幸せ者だなあ。
ああいやそれは今は置いといて。
「あの、グレートボアの素材報酬の件なんですけど」
「お、おお! すまんな!
これが買い取らせてもらった分の素材報酬だ。
魔石のサイズが中々の物だったんでな、ちょいと色付けといてやったぜ」
アドニア氏はそう言って金貨2枚と銀貨10枚、銅貨5枚をカウンターの上に置いた。
さて、ここで問題が1つ。
俺が知っている貨幣の相場が200年前の物だと言う事だ。
もし同じなら、日本円換算で今回の報酬は20万円前後くらいか。
いやもう日本の金の相場とか分からんからなあ、今どれくらいなんだろうか。
まあ、一匹の魔物の報酬にしては悪くない。
寧ろ良い。
「ありがとうございますアドニア氏。
またお願いしますね」
「おうよ! 楽しみにしてるぜスーパールーキー!」
ルーキー……ルーキーねえ。
確かにそうなのだから何も言えない。
まあよし! さあギルドでの用事は済んだ!
「じゃあ行こうかメリカちゃん」
「はい、行きましょうセツナさん」
報酬をインベントリにしまい、ギルドの出入り口に向かう。
扉の直ぐ横で厳つい男の冒険者がこちらを睨んでいるが、まあギルド内で喧嘩を吹っ掛ける馬鹿もいないだろう。
と、思っていたら通り過ぎざまに足を出してきた。
フ、敢えて引っ掛かってやろう!
だが転ぶのは貴様だ!
「ぐえ! え? は?」
「あっすいません! 足が当たっちゃいましたね」
ははは、混乱しておるわ、何が起こったか分かるまい。
いやまあ足出した君よりも俺の方がステータス上だからね。
蹴飛ばさなくてもこうなるんだ、ごめんね。
「テメェよくもやりやがったな」
お、食い下がるのか、止めなよお。
そういう幼稚なプライドは一切プラスを産まないよ?
「先に足を出したのはあなたの方。
私達の邪魔がしたいの? なら……許さない」
メリカちゃん、良い顔で怒るなあ。
でも、その殺気は彼を本気で殺しちゃいそうだからこの辺りで止めとこう。
「まあまあ、メリカちゃん。
彼に悪気は無かったんだ、ちょっと新人である俺に先輩として挨拶してくれたんだよ」
ん? いや、これは火に油だな、違う違う。
メリカちゃんストップ、拳を緩めて。
「じゃ、じゃあ俺達用があるんでこれで――」
人がサンドバッグになる前にメリカちゃんの手を引いて、ギルドを後にした俺の選択は間違っていなかった筈だ。
すまない、名前も知らない冒険者よ、避ければ良かった。
いや、それはそれで一悶着ありそうだな。
空気を読むってのは昔から難しくて苦手だ。




