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転生冒険者の異世界生活  作者: リズ


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緊急クエスト発生

 竜車よりも速く、半ば跳ぶ様に走って行くと、それは直ぐに見えてきた。

 止まっている車輪の外れた馬車、事切れている馬が2頭。

 血溜まりの中に倒れる青年と、恐らくその青年の恋人か妻とみられる女性が抱き合う様にして息を引きとっていた。


 馬には弓が刺さり、青年と女性には切り傷。

 鑑定眼で見てみるに二人の死因は胸辺りの刺し傷が致命傷になったようだ。


 馬車の中には何も無い。

 だが、荷台の擦り傷や落ちている木片などから何か積んでいたようではある。

 

 どうやら盗賊にでも襲われたか。

 魔物の仕業というわけでは無いみたいだな。


 「これは……」


 馬車の近くにリボンが付いた子供の靴が落ちていた。

 娘さんは拐われたか。

 ついてないな君達。


 「セツナさん!」


 皆が追い付いて来た。

 メリカが走り寄ってきてこの惨状に眉をひそめる。

 

 「盗賊にでも襲われたみたいだ、襲われてからまだそう時間は経ってないみたいだけど」


 「それにしては足跡等が見当たりませんね」


 「確かに、痕跡隠しが旨いな。

 ユイリ、シャオ臭いで追えるか?」


 「血の臭いはするけど、ちょっと無理かも」


 風も吹いてるし、血の臭いでは追えなくなる。

 洗浄魔法が使える奴もいるだろうし流石に難しいか。

 気配察知のスキルを使っても俺達以外の反応は見当たらない。

 流石に近くにはいないか。


 「セツナさん、この方達の弔いはどうしますか」

 

 「ああ、ちょっと待って。

 盗賊の情報が欲しいし、可哀想だから生き返らせるよ」


 「そうですか、分かりまし……え?生き返らせる?」

 

 メリカが顔をしかめて聞いてきた。

 まあ世の理から外れる発言だからなあ。

 

 「いくらセツナ君が復元魔法を使えるからって、そんな無茶苦茶な」


 リリルもメリカと同じく顔をしかめていた。

 まあ実際この世界の魔法に蘇生魔法なんて無いからなあ。

 でも俺には出来る。

 このご遺体二人の魂がこの世界になんの未練もなく、天に召されるのを良しとしたなら流石に無理だけど。

 ある日突然盗賊に襲われ、娘が拐われているのに綺麗に成仏出来る人がいるわけもない。


 「無茶苦茶って程じゃないさ、復元魔法は治癒ではないからね。

 身体を完全に修復して、体と繋がっている魂を降ろせば良いだけだよ。

 こんな風に、な」


 二人の遺体に手を翳し、復元魔法で身体の内傷、外傷を全てを修復した後は風魔法の応用で肺に空気を送る。

 雷撃魔法で電気ショック療法を行い、心臓を動かせば血液も循環していく。

 

 魂がまだ肉体と繋がっていれば、後は微細な電流を脳に流せば、還ってくる筈だ。


 「う、は! アンナ!アンナ!」


 「あ、あな、た?」


 よし、成功だ。

 やっぱりまだ彷徨ってたな。

 続いて馬も蘇生した後、一息ついて皆の方を振り返ると、アルティナ以外は一同口を開いてポカンとしていた。

 一緒に生活していると似てくるってのは本当だなあ。

 

 「ああ、神様……」


 「ちょっリリル大丈夫!?」


 リリルが血を見て気持ち悪くなったのか地面に膝を付いてしまった。

 そんなリリルを心配してユイリが寄り添う

 以前スミレの身体を治した時も似たような事があったなあ。


 「大丈夫か?」


 「だ、大丈夫よ。ちょっと目眩が」


 「無理しては駄目だよ?気分悪いなら竜車で休んでな?」


 「大丈夫、大丈夫よ。ちょっと目の前の光景が出鱈目過ぎて吃驚しただけだから」


 ふむ、魔法使いのリリルには色んな意味で刺激が強かったって事かな?

 これからはもうちょっと気を回そう。


 「あ、あなた達が助けてくれたのですか?」


 生き返らせたって言っても信じてくれるだろうか?

 うーん、とりあえずギリギリ間にあったって事にしておくか。


 「いやあギリギリだったよ、あと少し通り掛かるのが遅かったら治癒魔法も間に合わなかった」


 「そうですか、なんとお礼を言えば良いか」


 「それよりも何があったか教えてくれないか?

娘さんを取り戻さなきゃならんだろう?」


 「私達はこの先の街でしがない商人をしていまして、仕入れの帰りにこの辺りに出没する盗賊団に襲われました。

 詳しい場所は知りませんが、山の何処かの古い砦を根城にしていると聞いた事があります」


 まあ商人なんだろうなあとは思ってたけど、護衛も無しに不用心だな。

 商売が繁盛してるってわけではないんだろうか。

 護衛を雇う金がなかったのかな?


 「分かった、山の砦だな。探してみるよ」


 「た、助けてくれるんですか、何故貴方は見ず知らずの私達を――」


 何故助けるか、か。

 まあ困ってる人は助けたいという、まあ俺のエゴなんだけど。

 この人達では娘は助けられないが、俺達なら助けられる。 なら、助けてやらないと俺の気分が悪い。

 例え偽善と言われても良い。

 これはあくまで俺がやりたいからやるんだから。


 「俺達は冒険者だからね、困ってる人は放っておけないよ。

 さて盗賊団がまた降りてくる可能性もあるから、竜車防衛組と盗賊団討伐組で班を分けよう。

 アルティナとスミレ、シャオは防衛組。

 俺とメリカ、ユイリとリリルで討伐と娘さんの救助に向かう。

 異論はあるかい?」


 「ありません」


 「防衛任務承りました。存分に暴れて下さい主様」


 「お留守番は任せてくださいセツナ君」


 「よし、では早速行動に移ろう。

 俺が先行する。

 討伐組は砦を見つけ次第念話で連絡を」


 「「「了解!」」」


 うむ、そこいらの軍人よりもよっぽど頼りになるなあうちの嫁達。

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