目的地決定
翌日の朝。
俺はギルドを訪れていた。
クエストを受ける為ではない。
ヴィゼルに明日から旅行に行く旨を伝える為だ。
「へえ、海かあ。確かに南のマリネスならそろそろ泳げるかもねえ」
「マリネス?」
昔立ち寄った事がある小さな漁村がそんな名称で呼ばれてたなあ。
「あれ?知らないかい?有名な観光地だよ?
大きな宿が砂浜に沿うように並んでてね」
名称が同じなだけで違う場所か。
「昔は小さな漁村だったらしいんだけどね。
開拓が進んで今やリゾート地さ」
知ってるマリネスだった。
へえー。あの小さな漁村が今はそうなのかあ。
まあ、俺がマリネスに行ったのって二百年以上前だもんなあ。
そりゃあ発展するよなあ。
「アルタから南東に向かうと良いよ。竜車ならそうだねえ……竜を休ませながら行くとすると、3日くらい掛かるかな?」
「グラニトに行くよりはちょっと遠いくらいか」
「そうだねえ。山を一つ迂回しないといけないから時間は掛かるね」
「そうかあ。でも皆楽しみにしてるし、何より俺も海行きたいしなあ……よしマリネスに行こう」
「ハハハ。君には必要ない言葉かも知れないけど、道中気を付けて」
「友達からの気遣いを無下にするかよ。
ありがとうヴィゼル、道中気を付けるよ」
ギルドでの用件を終えたので、買い物に出ている嫁達を探す為に商業区へ向かう。
広い商業区、普通なら嫁達を探すのは時間が掛かるが、俺には婚約指輪に掛けた探知魔法がある。
マップを表示し、探知魔法を使用してマップと照らし合わせると、どうやらスミレのメイド服を買った店にいるみたいだ。
そういえばあの店、水着もあったな。
変な品揃えの店なんだよなあ、あの店。
途中にある屋台で串焼きを買食いしながら嫁達がいる店に向かう。
そして店に着くと、丁度嫁達が店から出てきた。
しかし、何故か表情が暗い。
「皆浮かない顔してどうした?」
「あ、セツナさん。それが……皆で水着を買いに来たのですが、今品切れ中らしくて」
水着が売り切れ?そんな事あるか?
ああいや、そういえば此処って防具屋だったな。
水着みたいな防具、一体どういう性能なのだろうか。
「セツナさんの用件は済みましたか?」
「ああ、ちゃんとヴィゼルに言ってきたよ。
で、行き先なんだけど、マリネスに行こうと思う」
「マリネスですか、確かに海への旅行ならマリネスが最適解ですね。
一度は訪れたいと思っていました」
「しかし、水着が無いとはなあ。
他の衣料品店には無いのかい?」
「まだ川遊びの時期には早いので、どこのお店もまだ取り扱って無いんじゃないかと」
「じゃあマリネスで買おうよ。
リゾート地なんだから水着置いてるんじゃない?」
「確かにそうですね、水着はマリネスで買いましょう」
皆俺の提案に賛成してくれた。
じゃあ後はマリネスに着くまでに食べるであろう食料やらを買いに行くか。
市場に行き、野菜や肉を買ってはスミレに渡していく。
スミレはその材料の数々を自分のインベントリに放り込んでいった。
というわけで、これにて買い物は終了。
明日はマリネスへ向けて出発の日だ。
楽しみだなあ海。




