海に旅行に行く事になりました
高級ホテルの最上階といえば“地上何十階”みたいなフレーズが思い浮かぶが、まあ地球じゃああるまいし。
そんな高層ビルのような建物があるわけではない。
時計塔等は高く造られているが、この高級宿の高さは精々4階から5階建てのビルくらいのものだ。
とはいえ普段とは違い、街を眺めながら食べる料理の味は中々。
美人で可愛い嫁達に囲まれてるからってのもあるけどね。
「美味しいですねこの料理、隠し味はなんでしょうか。出来れば再現してみたいです」
「甲殻類の殻の味がしますよスミレ」
「流石ですアルティナ様。
なるほど、甲殻類の魔物の殻をダシに使っている可能性がありますね」
うちのメイド二人は景色よりも出された料理の味の解析に没頭している。
また我が家の味がランクアップしそうだ、楽しみにしておこう。
そういえば、宿に来るまでに感じた事だけど、今年は去年に比べると少し暑い気がする。
宿の中にいる間は空調が聞いてるから涼しいんだけどなあ。
……この宿の空調ってどういう仕組みなんだろうか。
風属性の魔力は感じるけど、氷属性はこの時代ではロストマジックのはずだからなあ。
出来れば家にも設置したい。
今度商業ギルドに行って聞いてみるか。
「セツナさん、どうしました?」
「ああいやあ、今年は暑くなりそうだなあって思ってた」
「確かにそうですねえ。今日も例年よりはだいぶ暖かかったです」
「あんまり暑くなるようなら海とか行きたい」
「海!?良いね!海行きたい!」
「なら水着を新調しなきゃね」
「主様、私も海に行きたいです」
ユイリとリリル、スミレは随分ノリ気だ。
海か、うん良いな海。
ユイリやリリル、スミレと出会った記念日のことも考えると、記念旅行に行くってのは良い発想かも知れない。
「私山育ちだったから海って行ったことないなあ。
一人旅してる時も結局内陸部ウロチョロしてたし」
シャオが旅をしていた頃を思い出しながらだろうか、首を傾げながら行った。
「じゃあ行こう1番近い海のある観光地に」
「そうですね行きましょう」
「やったあ!旅行だあ!」
皆嬉しそうだ。
もちろん俺も嬉しい。
地球にいた頃から海は好きだった。
砂浜に沈む裸足の感触、磯の香り、波の音、空と海が交わりそうな程に青い色。
想像したら俄然楽しみになってきた。
そうと決まれば善は急げというやつで、俺達は帰りに商業ギルドへ行き、竜車の手配をお願いした。
夜だというのに親切に対応してくれた職員さん、ありがとう。
以前グラニトへ旅行に行った時と同じく、明後日の朝には準備が出来るらしい。
こうなると、明日は旅行の準備と大まかな予定をたてる時間にあてる事が出来そうだ。




