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ギルドカードに掛かった魔法

 「お待たせしました。

 これがBランク用のギルドカードになります。

 Cランク用ギルドカードの情報を上書きしますので、カードを水晶に翳して下さい」


 やっと帰ってきた。

 ギルドカードを翳せば良いのか?

 2枚持ってても仕方ないからCランク用は破棄するのかと。

 そう思ったが杞憂だった。

 Cランク用ギルドカードは魔素、魔力や魔法を行使する為に必要な魔力の元、その魔素に分解されて水晶に吸い込まれていった。

 そしてヴィゼルがBランク用のギルドカードと言って見せてくれた、銀色のカードを水晶の下に設置すると、レーザーの様な物が照射され、銀色のカードにランクと俺の名前が刻まれていく。


 「へえ、Cランクカードとは全然違うんだな。

 何か術式も一緒に刻んでる」


 「わかりますか。

 今ランクや名前と共に刻み込んでいる魔法は、セツナさんから一定距離離れると、セツナさんの居る場所まで転移する魔法と。

 ……個人の持つ固有魔力波形が消えると、ギルドにこのカードが戻ってくる、そんな魔法です」


 ヴィゼルは微笑んでいるが、何処か淋しげな微笑みだ。

 分からんでもない、つまるところ、このカードその物が冒険者の生存証明であり、死亡届けなのだ。

 Bランク以上は必然的に依頼の難度が上がる。

 それだけ失敗する可能性も上昇する。

 固有魔力波形が完全に消えるのは、人が死ぬ時だ。

 依頼中に死ぬとギルドにカードが戻ってくるこの仕組み。

 この魔法は、依頼を受けた冒険者が死んだという結果をギルドに伝える為のものなわけか。

 

 「精々カードがここに戻ってこないように頑張るよ」


 「頼みます。

 ところでこの後のご予定は?」


 「あ〜、昨日のグレートボアの素材報酬を貰ったら。 

 メリカちゃんと、デートです」

 

 「それはそれは、ではまあ個人的に話したい事があるだけなので、また日を改めて」


 「何か用事かな?」


 「いえいえ、二人の予定を狂わせる程の事ではありませんから。

 メリカちゃんとのデート楽しんできて下さい。

 メリカちゃんも、セツナさんとのデート楽しんできてね」


 「ひゃい」


 メリカちゃんが噛んだ。

 否定しないのかあ、撫でとこ。

 ああ男共からの視線が痛い。

 フッフッフ、だが、どれだけ殺意を向けようともメリカちゃんを撫でる特権は誰にも渡さんぞ。


 「と、言うわけでアドニア氏は今何処に?」


 「彼なら丁度解体作業場ですね、呼んできましょうか」


 「おねがいします」


 「ではそちらの解体受付でお待ち下さい」

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