食事後の修練場で
食堂で食事を楽しんだ後、俺達は再び修練場に赴いた。
ウアル少年には精霊と仲を深めてもらうために、契約した精霊と魔法を使って遊ぶように言っておいた。
いきなり実戦形式の練習は流石に厳しいだろうからね。
ウアル少年は精霊使いで六芒星級の実力が約束されている少年だ。鍛えて1人前の冒険者になったら手合わせしてもらおう。
きっと俺を楽しませてくれる筈だ。
この世界の精霊使いは精霊眼を発動した際に浮かんだ星の数で契約出来る精霊の総数が決まる。
契約出来る精霊の数はそのまま精霊使いの実力だ。
まあ星の数は精霊に認められたりすれば増えたりもするけど。
契約すればするほど様々な恩恵が受けられる。
1体でも身体能力向上が期待出来る程だ。
「疲れたら休むんだぞウアル少年」
「……はい」
ウアル少年は精霊と水を使って水球を作ったり輪っかを作ったり、花や魚の形を作ったりして遊んでいる。
初めてにしては上出来以上だ。
魚か……刺し身食べたいな。
帰りに市場に寄って帰るか。
さて、ウアル少年以外の様子はどうだろう。
ミュナちゃんは同じ武器を使っていた事があるメリカが指導しているので問題は無さそうだ。
槍を使うラウナちゃんは今はユイリが指導している。
槍もハルバードに通ずるところがあるし問題は無いだろう、多分。
問題があるとすれば俺達のパーティで使う者がいない戦鎚を使うダナン少年の指導だが、それは長く生きているアルティナが豊富な知識で対応してくれた。
「そういえば今日、君達授業は?」
当たり前のように修練場を使わせてもらっておいて、今更?といった感じだが、ウアル少年達は学生だ、メリカやユイリ、リリルに聞いた限り、座学もあるらしいから気になって聞いてみた。
しかし、答えはウアル少年ではなくミュナちゃんと休憩にやって来たメリカが教えてくれた。
「学生さん達はこの時期、新年度前の休暇期間中ですセツナさん」
なるほど春休みみたいなものか。
「その割には学生が学校にいるのはなんで?」
「私達がギルドに行くのと同じ理由です。
この子達はまだ冒険者ではありませんから。
学校経由で依頼を受けてるんですよ」
「なるほどなあ」
こうやってメリカと話していると、ミュナちゃんが何やらモジモジしているのに気が付いた。
「どうしたミュナちゃん」
「あの、ステラの皆さんが夫婦っていう話は本当なんでしょうか」
「本当ですよミュナちゃん。今の私達は皆家族です」
「どうしたら、好きな人と両想いになれますか?」
あらあらあら、何々恋バナ?
しかもミュナちゃんの視線はチラチラとウアル少年に向いている。
そっかあ、両片想いだったか。
お互い好き同士ならどうするもこうするも無いんだけどなあ、敢えて言うなら――
「素直に好きな人に好きだと伝えるのが1番ですよミュナちゃん」
「だねえ。まずは自分の気持ちを伝えないとなあ。
大丈夫だミュナちゃん、ウアル少年ならミュナちゃんの気持ちに応えてくれるさ」
「な、ななな、何で私がウアルの事を好きだって知って!」
いや、視線視線。めっちゃウアル少年見てるよミュナちゃん。
言われてみれば、まだ冒険者になってない少女が好きでもない男を魔物から体を張って守ろうとしたりするもんかね。
「出来るだけ早く気持ちは伝えた方が良いぞ?
冒険者は危険な仕事だからな。気持ちを伝えられずにそのまま死に別れる事だってあり得るんだから」
「応援してますよ、ミュナちゃん」
言われたミュナちゃんの顔は真っ赤になっていた。
そして意を決したようにウアル少年の方を向き、歩き出していく。
「え、今告白するの?」
「若いですねえ」
ミュナちゃん度胸あるなあ。
人が見ててもお構いなしか。
将来ウアル少年とミュナちゃんが所属するであろうパーティの良い前衛になりそうだ。
「ウ、ウアル」
「どうしたのミュナ」
「わ、わ、わ、私、私と付き合って……下さい」
「うん、良いよ?どこに付き合えば良い?」
あ〜っとウアル少年違う、その答えは違うぞ!
メリカもなんだか残念そうな表情を浮かべている。
好意を向けられることに慣れていない典型的な反応だなあ。
頑張れミュナちゃん、好きだと伝える事が出来れば君の勝ちだぞ!




