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Sランク昇級

 その日、ヴィゼルがアルタの冒険者をギルドに集め、約束通り祝宴を開く事になったので家族皆で楽しんだ。

 ハーレムパーティを組んだ当初はやっかみも酷かったが、今やその陰は微塵も無い。

 

 Sランクへの昇級は女王陛下の承認待ちになるそうだ。

 それもそうか、Aランクの昇級に大会を開くんだもんな。ギルドの支部長が勝手に昇級を決めるわけにもいかんか。


 「セツナ。改めてありがとう。グランベルクを守ってくれて」


 「この国は皆と出会った大切な場所だからな。守って当然だろ」


 ギルドの食事処の一角でヴィゼルと酒を片手に話しながら俺は嫁達の方を見た。

 皆思い思いに食事を楽しんでいる。

 あの笑顔が守れるなら、俺はなんだってやるんだろうなあ。


 戦勝パーティーは夜通し続き、家に帰ったのは次の日の昼だった。

 

 ヴィゼルの予想した通り王都から使者が来たのはそれからさらに数日後。

 移動は転移でと思ったが、パレードの用意があるらしく仕方なく馬車での移動となった。


 「アルティナが早々に旅立たなくて良かったな。

 戦勝パレードに主役がいないんじゃ締まらん」


 「柄では無いのですけどね、大勢の民衆に姿を晒すのは」


 「俺だって柄ではないよ」


 闘技大会の時とはまた違うからなあ。

 正直恥ずかしいんだよなあ。

 

 アルタから出発して数日。

 俺達は王都の外門でパレード用の馬車に乗り換え、大通りを城へと向かった。


 溢れ返る人達に御者さんから手を振ってあげてくれと言われ、ぎこちなく皆が手を振る。

 皆こんな事に慣れているはずもなく、笑顔が引きつっている。


 「建国祭の時より人がいますよセツナさん」


 「だなあ。皆アルティナを見に来てるんだろ」


 「いえいえ、歓声の大半はステラの名ですよ」


 「まさかこんなに有名になるなんて。一年前には考えられなかったよ」


 普段元気一杯なユイリですら人の数と声の圧におされている。

 尻尾も耳も普段の元気が無い。 

 シャオも同じだ。


 スミレだけが何時もと変わらずに凛とした表情を崩す事なく座っている。

 

 「スミレは凄いな、動じることも無いじゃないか……スミレ?お〜い」


 違った。緊張で完全に固まっているだけだった。

 

 王城に到着した俺達は予め購入していた正装に着替え、謁見の間で待つ女王陛下の元へ向かった。

 建国祭ぶりに見る皆のドレス姿、初めて見るシャオのドレス姿に俺は目を奪われ、俺は女王陛下の話の最中にも関わらず横目に皆を見ていた。


 「――これらの様々な功績から、ステラの皆様をSランク冒険者と認めます。

 我がグランベルクの盾としてこれからも宜しくお願い致しますね」


 こうしてグランベルクでパーティメンバー全員がSランク冒険者と認められた俺達は、王都で数日過ごす事になった。

 

 「はあ〜。私達がSランクかあ」


 「まだ信じられないわね。昨年までBランクだったのに」


 「セツナさんに鍛えてもらったおかげですね」


 「良く考えるまでもありませんが、主様は大賢者であり武神ですからね。

 主様に鍛えられて強くならないわけありません」

 

 王都から帰ってきてさらに数日。

 自宅のリビングで寛ぎながら、皆が女王陛下から賜ったミスリルで出来たギルドカードを見ながら思い出に耽っていた。


 晴れてSランク。

 ダンジョン入場制限がこれで無くなった。

 この世界の中心、グランドゼロにある世界樹の塔に行けるようになったわけだな。


 クエストをこなしながら、いつか機会を見つけて俺の最初の住処に行って増築を止めないとなあ。

 倒れでもしたら大変だ。

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