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王都北門へ

 王都から先はまだ行ってないから転移出来ないのは面倒くさいなあ。


 王都のギルドを訪れたのは情報収集と北への足を手に入れるためだけど、まずは受付に行ってみるか。


 「アルタの街から王都の召集令に従いAランクパーティー、ステラ。参上しました。

 テルミアナ平原への足は確保出来ますか?」


 ギルドカードを出して受付のお姉さんに見せると、お姉さんは驚いたように俺達を見た。  

 アルタから王都まで馬車で最短2日の距離だもんなあ。 

 ヴィゼルの様子から察するに召集令状が届いたのは今朝だと思うし、普通に考えてアルタの冒険者が王都に居るのはおかしいよな。


 「か、確認しました。お早い到着でしたね。

 今日はこの後第一便の竜車がテルミアナ平原へ向けて王都北門から出発します」


 「ありがとう。じゃあそれに同乗させてもらうよ」


 「あ、はい!手配致します!」


 よし、足は確保出来たな。

 じゃあ早速北門に向かうか、と思ったら見知らぬ顔に「おい、ちょっと待て」と声を掛けられた。


 「あっ、サリムさん。お久しぶりです」

 

 どうやらシャオの知り合いらしい。

 細身に見えるがしっかり筋肉が付いているな、シャオと同じ猫人族か。

 冒険者でシャオと面識ありという事は?


 「もしかしてシャオの兄弟子さんかい?」


 「そうです僕の兄弟子サリムさんです」


 「シャオ!お前は大会の後で急に姿を消しおって!しかも何処の馬の骨とも分からんハーフエルフと結婚などと!」


 「何処の馬の骨!?ゼノリア様、の子孫であるセツナ君に向かってなんて口聞くの!?」


 俺がゼノリア本人と言って信じるわけもないもんなあ、よく誤魔化してくれたなシャオ。

 ん?というか初めてシャオにセツナ君て呼ばれたな。

 普段は師匠師匠って呼んでくるからセツナ君って呼ばれるの新鮮で良いなあ。

 結婚したんだし、やっぱり名前で呼んでもらお。


 「ゼノリア様の子孫?ハハハ!戯言を。

 おい貴様!私と立ち合え!私が勝ったらシャオは返してもらうぞ!」


 「え?やだよ?シャオは俺の大事な妻なんだから。

 大体戦争しに行く前になんで私闘なんかせにゃならんのだ阿呆め……すまん阿呆は言い過ぎた」


 「貴様あ!この私を愚弄するか!?」


 はあ〜。話し合えない奴だあ。

 よし、仕方無い。


 「じゃあ一発勝負な、一撃先に入れた方が勝ち」


 「ふ、良いだろう」


 というわけで、ギルドの裏手にある修練場でシャオの兄弟子の一撃にカウンターを合わせ、当たったら多分黄泉の国に旅立てる一撃を寸止めしてシャオの兄弟子を気絶させて俺達はギルドを後にした。

 因みにシャオの兄弟子が所属するパーティには丁寧に謝られた。

 律儀な人達だったなあ。

 

 王都の北門へ向うと、竜車が並んで待機していた。

 そこでギルドカードを見せると、一台の竜車を指定された。

 どうやらもう一組のパーティを待ってから出発するらしい。

 

 よし、今のうちにシャオにあの件を伝えておこう。

 

 「なあシャオ」


 「はい師匠」


 「今後、俺の事を師匠と呼ぶのを禁止します」


 「ええ!!なんでですか!?」


 「結婚したからです。流石に夫婦になったのに師匠呼びはおかしい。

 というか正直名前で呼んでほしい。分かった?」


 「で、でもスミレちゃんは主様って」


 「主様は別に良いだろ、スミレの主人であることには違いないし。

 でも師匠はちょっとなあ」


 メリカ達も頷いていた。

 良かった違和感があったのは俺だけじゃ無かったみたいだ。


 「じゃ、じゃあセツナ、君」


 「なんだいシャオ」


 シャオが顔を真っ赤にして両手で顔を覆ってしまった。照れているのだろう普段ピンと立っている耳が前に垂れてしまった。

 可愛い反応するなあ。


 そういえばユイリも照れると耳が前に垂れるんだよなあ。

 そう思いながら手が自然と隣に座るユイリの耳を撫でていた。


 「な、何?」


 「あ、ごめん。可愛いなあって思って」


 「もう、馬鹿」


 やはり照れたユイリの耳も前に垂れた。

 和むなあ。

 はぁ〜、帰って家でのんびりイチャイチャしてえなあ。


 ナルベリスめ、俺達ののんびりした生活を邪魔しやがって。

 絶対許さんからな。

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