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転生冒険者の異世界生活  作者: リズ


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春先の異変

 寒冷期は色々なダンジョンを巡り、俺達ステラは冒険者生活を満喫していた。

 ダンジョン踏破率。クエスト達成率共に100%という記録を更新し続けている。

 

 そんな俺達を他の冒険者達は誰が言い始めたのか、完全無欠という意味でアブソリュートという異名を付けて呼び始めた。

 

 嫌いじゃないよそういうの。

 むしろ好き。


 寒冷期はいつの間にか過ぎ去り、温暖期、地球で言うところの春に差し掛かった。


 寒冷期中は寒いからか、ユイリとシャオが暖炉の前で良く丸くなっていたが、ここ最近は夜の団欒中くらいにしかそうしなくなってきた。

 

 雪も溶け出し、窓から見える風景も青々とした草達がまた以前のように顔を出している。


 日差しも暖かさを取り戻してきて、日中ならテラスで紅茶を楽しめるようになっていよいよ寒さともおさらばだ。


 そんなある日の事だった。

 我が家に来客があった。

 

 「やあセツナ、久しぶり」


 「ようヴィゼル久しぶり。

 どうした?これからそっちに行こうと思ってたのに」


 「君達ステラに緊急の依頼をお願いしたくてね」


 挨拶の笑顔から一転、ヴィゼルの表情に影が落ちた。

 ヴィゼルのこの暗い表情は一度見たことがある。

 ダンジョンに潜ったパーティが遭難した時だ。

 今回もまた救助任務かな?と思ったが事態はもっと深刻なようだった。


 「今朝。ギルドカードがギルドに転送されてきた」


 ギルドカードがギルドに転送されて来る。

 それはギルドカードの所持者である冒険者が死んだと言う事だ。


 「何があった?」


 「分からない。ある村から連絡が途絶えてね。

 もしかして雪害にあったのかと思って、あるパーティを偵察に行かせたんだけど」


 「カードだけが帰って来た、と。

 外で話すのもなんだな、中に入ってくれ領主様」


 「すまない、お邪魔するよ」


 いつも飄々としているヴィゼルがあからさまに落ち込んでいる。

 それもそうか、自分が偵察に行けと言った先で人が死んだのだ。落ち込まない奴の方がどうかしている。


 「ちょっと待っててくれ皆を呼んでくる」


 ヴィゼルをダイニングに通し、椅子に座らせて俺は皆が寛ぐリビングへ向かった。

 なんだろう、嫌な予感がする。

 ダンジョンに潜ってるときとは違う。何かもっとモヤッとした悪意の様な気配。

 誰かが言っていたなあ、想像しうる悪い予感は当たるものだと。


 「皆、ダイニングに集まってくれ」

 

 「お客様ですか?何名様でしょう」


 「一人だよ、慌てなくて良いからお茶淹れてあげて」


 「承知しました主様」

 

 リビングからまずはスミレが駆け出してキッチンに向かっていった。

 普段こんな呼び出し方をしないからか、皆の顔にも何事かと緊張が走る。


 「どうしたの?」


 「今朝アルタ所属の冒険者のパーティが全滅したそうだ。

 その件について俺達に緊急依頼を頼みたいらしくてね。

 今ヴィゼルが来てる、これから詳しく話を聞くから皆も来てくれ」


 というわけで、皆をヴィゼルの待つダイニングに呼んだ。

 

 「すまないヴィゼル、待たせた」


 「いや大丈夫だよ。

 早速本題に入るけど良いかな?

 大筋はセツナに話したんだけど。

 今朝ギルドに連絡が途絶えた村に偵察に出したパーティの冒険者、全員分のギルドカードが転送されてきた。

 全滅だ、理由は分からない。

 今グランベルクは王都より北の国ナルベリスと戦争とは呼べない小競り合いの状態にある。

 だけど件の村は、ここアルタより南にある山麓の村だ、ナルベリスとは関係無い。

 送ったパーティはBランクといえ実績はあった。

 君達程ではないが、クエスト達成率もダンジョン踏破率も悪くは無かったんだ」


 ヴィゼルが偵察を任せるんだ、信頼性はあったんだろう。

 さて、なら全滅はどういう事か。

 ヴィゼルは村から連絡が途絶えたと言っていた。

 原因はなんだ?雪害なら後から来た冒険者のパーティが全滅するとは考えられない。2次被害とも考えられるが、その可能性は低い気がする。


 となれば魔物だろう。

 手練のBランクパーティを全滅に追いやる程の魔物。

 ダンジョンボスクラスの魔物だろうか。


 「すまない、君達には先のパーティと同じく南の山麓の村に偵察に出てほしい。

 ダンジョンブレイクの可能性も考えられるが、あのあたりには魔物が飽和しそうなダンジョンは無かった筈なんだ。

 危険を感じたら即時撤退してくれて構わない。

 頼めるだろうか」


 「分かった、行って来る」


 「そうだよね。状況も不確かなのに行ってくれるわけ……え?良いのかい?」


 「断る理由が無いだろ?友達が困って悩んで頭抱えてるんなら助けるよ。

 当たり前だろう?

 皆はどうする?行きたくないなら留守を頼むけど」


 まあ答えは分かってる、皆やる気だ。

 

 「ありがとう、すまない」


 「謝るなヴィゼル。お前は間違ってないよ。

 俺達なら最悪転移で逃げられる、手に終えそうに無い事態なら直ぐに逃げるさ。

 明日発つ。馬車か竜車の手配頼むな」


 「分かった」


 ヴィゼルから村までの地図を受け取りその日はヴィゼルを帰し、俺達は準備を整える為に街に走った。

 不測の事態に備え食料や毛布等を多めに買ってインベントリに放り込んでいく。


 さて、何が待っているのか。

 準備を整えた翌日、俺達ステラはヴィゼルが用意してくれた馬車で南に向った。

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