さらば、王都グランベルク
闘技大会終了後、すっかり日も暮れてしまった王都の夜空に、大輪の花火が咲いていた。
建国祭はおおいに盛り上がり、夜通し音楽が鳴り響く。
翌朝、というか昼。
王都のギルド本部からAランクのギルドカードが発行されるらしいので、宿屋から転移で直行した。
「うわあ金色だあ」
「これがAランク冒険者の証」
「綺麗です」
メリカ、ユイリ、リリル、スミレの4人はしばらく受け取ったギルドカードを眺めていた。
ギルドでは試合を見ていた冒険者からの質問攻めにあい、逃げ出すように街へ出向いては試合を見ていた観客からサインや握手をお願いされて、まるで有名人になった気分だ。
今晩は城に招待されているので、帰るわけにも行かないので俺達は再びコロシアムを訪れていた。
昨日とは違い、今日は今日で別の大会があるらしいので観戦に来たのだ。
早くも観客としてコロシアムに訪れる事になるとは思わなかった。
ありがたい事に昨日優勝した俺達は貴賓席を使えるらしい。
なんの大会かというと、Aランク冒険者の推薦したBランク冒険者が集まって行う、もう1つの昇級を掛けた大会らしい。
昇級出来るのは優勝者のみ。
昨日の大会よりも更に人数も多いため、昇級は狭き門のようだ。
その試合会場になんと、昨日試合会場で目があったチャイナドレス風の服を着た猫耳少女がいた。
「優勝はあの猫耳少女だろうな」
「分かるのですか?」
昨日感じた闘気はBランクのものにしては異質だった。
異質というか、格が違うかったのだ。
到底Bランクには収まらない、そんな闘気だった。
現に今も試合会場で猫耳少女は暴れまわっている。
俺と同じく徒手空拳でフルプレートアーマー装備の剣士をボコボコにしている。
「セツナさんの言う通り、あの猫耳の選手強いですね」
「セツナ君と戦い方が似てるね。
素手で鎧叩いて痛くないの?」
「手に纏った魔力を物質変換で硬質化してグローブ代わりにしてるからね、痛くはないよ。
ちゃんと魔力操作しないと痛いけど」
結局予想通り猫耳少女が個人戦の覇者となり、Aランクへと昇級を果たしていた。
その猫耳少女が会場でキョロキョロ誰かを探している。
知り合いでも探しているのかな?
「主様、あの猫の方、主様を見てます」
「俺何かしたかな?すごい睨んて来るんだけどあの子」
時間も来たし、関わる前に城に行くか。
そう思って早々に城に赴き、俺達は今女王陛下と謁見している。
新たなAランク冒険者誕生の激励と、メリカへの、正確にはメリカの両親への礼の為に俺達を呼んだらしい。
「改めてメリカさんの御両親には感謝を」
「ありがとうございます陛下。
死んだ両親も喜んでいると思います」
普段は着ないドレスに見を包んだメリカから目が離せなかった。
いつものあどけなさは無く、妙に大人っぽいというか、薄い化粧しかしていない筈なのになんとも色っぽい。
「セツナ君、メリカを見過ぎじゃない?」
「可愛いから仕方ないね」
「あら、私達は可愛くないのかしら?」
「いや、可愛いよ?美しいとも思ってる。
でもメリカはギャップの振り幅が凄くて」
「それは分かります主様」
「あの、皆、陛下の御前なんだからちょっと静かに」
メリカの言葉で皆ハッと我に返り、黙り込む一同。
その様子が可笑しかったのか、玉座に座る女王陛下は静かに笑っていた。
「ふふふ、皆様ご婚約していらっしゃるそうですけど、本当に仲がよろしいのね」
このあと、立食形式のパーティーが行われるとの事だったので、参加するつもりはなかったのだが、ヴィゼルや陛下の顔を立てるために参加。
歓談したりダンスを踊ったりして楽しい時間を過ごした。
そして3日目。
建国祭も最終日となった。
女王陛下への挨拶も済ませ、アルタの街への帰路についたのは昼を過ぎてからだった。
明日からはAランク冒険者としての生活が始まるわけだが、まあ別に急ぎのクエストがあるわけでもない。
嫁達と冒険者生活を送って、次は旅行の為に金策でもしようかなあ。
そろそろ寒冷期にも備えないといけないし、温泉旅行とかいいな。
どこに行くかは嫁達と相談して決めるか。
さあ明日は何が起こるかな?
何も起こらなければそれはそれで良い、久々にのんびりしよう。




