夕食の場で
「夕食の準備しますね」
そう言って台所に立つメリカちゃんの後ろ姿を見送る。
エプロン姿の少女の可憐さは、先刻立ち合った
彼女とはかけ離れた印象だった。
何故冒険者をしているのか。
メリカちゃんの可愛い顔立ちや、甲斐甲斐しさは初めて会った俺でも好ましく思う。
試験会場で見た時は無愛想、というか人形みたいな無表情だったけど、そうじゃない。
多分だけどアレは所謂仕事モードなんだろうな。
料理を作る彼女の顔に見る微笑みは、見た目に相応な少女のそれだ。
「まあ今日は大人しく世話になるかな」
しばらくして俺の前に出されたのは1杯のシチューとパン。
そういえば今日なんも食べてないな。
「おかわりもありますので、どうぞ遠慮なく」
「ありがとう、いただくよ」
そう言って手を合わせる。
いやはや、もうこっちの世界での生活は幾度目だというのに、コレだけはやってしまうなあ。
メリカちゃんが目を丸くしている、やっぱり変なのか。
「お父さんが食事の前によくそうやって手を合わせてました。
何処の国のしきたりなんですか?
お父さんはとても遠い国のマナーだと言っていましたけど」
もしかして、メリカちゃんの父親って転生者だったのか?
いや、どうなんだろうか、俺が知る限り食事の前に祈りを捧げる国はあったが、頂きますの合掌をする国は見たことが無い。
しかしなあそれも200年前までの知識だしなあ。
「俺も両親がこうやってお祈りしてたから俺も自然とね」
そういう事にしておこう、本人がもう他界しているのでは日本からの転生者なのか確認しようがない。
「そうですか。
あのセツナさん、お願いがあるんですが」
「お願い?」
さっきの伴侶どうこうの話では無さそうだ。
「明日から私とクエストを受けてくれませんか? その、つまりパーティーを組んで欲しくて」
それは願ったり叶ったりだ。
メリカちゃんは強い、素質もあるし、まだまだ強くなるだろう。
打算的ではあるが、何よりも好意を寄せてくれているのだ、信頼性という点ではこの上ない。
「もちろん良いよ、他にメンバーはいるの?」
「いえ、私ソロで活動してて」
メリカちゃんの実力なら他のパーティーからの勧誘がありそうなもんだけどなあ。
理由を聞くのは、野暮か。




