来訪者
アレクサンドラはいつものように側近たちと皇帝執務室で打ち合わせをしていた。
即位から1か月、現在は内政改革の真っただ中で目が回るほど忙しい。
「では、この件はこれで完了でよろしいですね。では今日はこれで解散しましょう。」
ワインズワース宰相が打ち合わせの終了を告げる。
「ところでベルン総長、アルジェントの一件から、姉上様からなにか連絡はありませんか?」
マリーローズからの最後の連絡からもう2か月以上たっている。アレクサンドラは少し心配になってきていた。
「いえ陛下、まだ何も連絡はありません。インドラ国に向かっているはずですから、まだ道中だと思われます。」
「姉上様の御活躍で、アルジェントのエウロット侵攻計画も未然に潰すことができました。今度は、はるかに遠いインドラ国に行かれるという、本当に御体にだけは気を付けていただきたいものです。」
「連絡がありましたら、随時ご報告させていただきます。私共も全力でサポートさせていただいております。」
グーテンベルク将軍がフォローする。
「よろしく頼みます。増援を検討してもらえませんか。姉上様のなさっていることの重要性はアルジェントの一件で証明されました。支援は惜しまないように。」
「承知いたしました。」
全員が答える。
「失礼いたします。シュタイナー副団長に、お客様が城正面門に見えられているとの連絡がありました。」
話が終わったのを見計らったように扉外から衛兵が声をかける。
「客? そのような予定はなかったが。入室を許可する、入れ。」
「どのような客だ?」
ラインハルトが入室してきた衛兵に問うと、衛兵は言いにくそうに
「そ、それが、その。」
「なんだ、陛下の御前でもあるぞ、正確に報告せよ。」
「はい、その方は、シュタイナー副団長の御息女だと申されております。父上様に面会したいと、供の者と正面門に見えられて、お待ちになられているとのことです。」
「えっ!」「へっ?」「はっ?」「なにっ!」「ごふっ」「おぉ!」
その場にいた全員が一斉にラインハルトを見た。
「御息女、、娘ということですか?
ラインハルト、あなた結婚していたのですか?」
衛兵が退室したあと、アレクサンドラが尋ねる。
「陛下、私は結婚はしておりませが、娘、、、詳しく話を聞かねばならないかもしれません。」
ラインハルトは、いつもの感じでいたって冷静に答える。
「・・・・・。その者に謁見します。準備をしてください。」
アレクサンドラは少し考えた後、皇帝秘書令の者を呼び、命じた。
結局、その場の側近全員が謁見に参加することになった。ほとんど業務に必要のない案件なのだから野次馬根性だろう。アレクサンドラとて、臣下の個人的なことに皇帝が謁見して事情聴取する必要は全くないが、何か気になる点でもあるのだろうか。




