ジークフリートの決意
ジークフリートには、マリーローズが、なぜ皇位継承権を放棄し、
それがなぜ、アレクサンドラや皇国首脳陣に了承されたのかわからなかった。
本当に何も知らなかったし、詮索しようとも思ってはいない。
しかし、マリーローズの、皇国に命を捧げるという決意は本物だと感じている。
先ほどの話だけでなく、治療中や、兵装使用訓練の鬼気迫る姿からもわかる。
その目的を聞かされた今であれば、あの命がけの特訓もうなずける。
本気で、皇国の脅威と戦うつもりなのだろう。
間違いなく、死を覚悟している。いや、死ぬことを望んでいるような気すらする。
「あの方を、死なせてはならない。あの方は、皇国に必要だ。」
ジークフリートは、今はそう確信している。
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研究所から、ラント候領のバルスルトまでは、飛行兵を不眠不休で全速で飛ばして5日。
マリーローズの体調を考えて、道中は大凡2週間とみている。
夜明けから、日没まで進み、日没後は、就寝までの間で、戦闘訓練をする。
2日に一度は、進路上の町や村の近くに機体を隠し、宿を取る。
やはり、マリーローズは飛行兵内で休んでも疲れがうまく取れていない。
それはラインハルトの感覚ではなく、戦闘補助装置の診断によるものだ。
マリーローズは、庶民の暮らし、例えば、宿のとり方、屋台での注文、極端に言えば貨幣の使い方すらも知らなかった。
当然である、反乱までは、城から出たことはなかったのだから。
ジークフリートは、この道中で、戦闘技能だけでなく、生きるための術も教えた。
そのため、なるべく野営ではなく、町に宿泊し、町中を散策するようにした。
ただ、マリーローズが普通に出歩くと、その美貌ゆえのトラブルも多い。
ならず者に絡まれたりは普通にある。最初はジークフリートが撃退していたが、そのうち、マリーローズが自ら対応するようになった。
戦闘の素人相手なら、複数人相手でも後れを取ることはないレベルになっている。
しかし、ちょっとしたトラブルでは雷撃銃や高速移動装置は目立ちすぎて使えない、使えば立ち所に噂がたつだろう。
噂は流布するのが速い。
目的遂行に支障がでるのは避けたい。
そこで、マリーローズには扱いやすい細身で短めの片手剣を、ジークフリートは、周囲を威圧する意味も含めて、太めの両手剣を買い求め、装備に加えた。
マリーローズの為に、大きめのフードがついたマントも買ったのは言うまでもない。
そして、予定よりすこしかかったが、16日ほどしてバルスルトに到着。
そこで情報を得て、マルガに向かっているのである。




