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ブランドリア戦記  作者: 夏見静
アレクサンドラ救国篇
3/82

プロローグ3

ノイマン提督は憂いていた。

最近の皇帝は官僚どもの言いなりになり、軍部を完全に蔑ろにしている。


近年は、トランとの国境付近での衝突も激減し、皇国に外患はなく、

一見すると平和のそのものであった。

トランは、さらに東、アリアン州のチナという大国の侵攻を受けており、

その対応で手一杯だという情報だ。

それを大きな理由として、官僚達は軍縮を進め、その浮いた予算で私腹を肥やしている。


しかし脅威はトランばかりではない。

近年は、南のエトリカ大陸北部の新興勢力が、強大な軍事力を背景に領土拡張を進めている

との情報もある。しかし皇国は、それを脅威とみなしていない。皇国上層部は驚くほど、

危機意識が低い。


要である皇帝の、目下の関心事は、第一皇女のことだ。既に結婚適齢期になっており、

有力諸侯もしくは有力貴族の子息と、政略結婚させるのが、現状からして妥当だと思われるが、

皇帝は、皇女を溺愛するあまり、愚かなことに一生手元に置くなどという、

馬鹿げた妄想を吹聴して回っているという情報だ。

宰相や官僚達は、皇女の婚姻回避を盾に、皇帝を言いなりにしているとも聞く。


ここ100年あまり、官僚への権力集中による弊害は、皇国を深く蝕んできた。

それを正す責を負うべき皇帝は、無能の極みだ。


自治領は皇国を見限って独自に行政制度を構築して成功し、富んでいる領もある。

しかし、中央に対する納税は無視されており、自治領の成功が皇国の利益には繋がっていない。


納税せず、無断で体制を変更する諸侯を従わせる力は、今の中央にはない。

領土が広大過ぎて、表立って挙兵でもされない限りは、討伐軍を遠征させる体力がない。


あからさまに敵対し、仮に諸侯が結束して反旗を翻せば、中央の皇国軍だけでは皇都を守りきれない。

故に、官僚は自治領の脱税を黙認している。直轄領からの税収だけで、全てを賄えると

本気で考えているようだった。


しかしながら、直轄領からの税収も近年は激減している。

原因は、これも官僚である。直轄領行政府の官僚も同様で、権力の集中と行政の私物化で、

腐敗を極めている。代官である貴族も、官僚に懐柔されて機能していない。全く中央政府の縮図である。

特に、北方4領の領民は、不必要な重税で、貧困にあえいでいると聞く。


今後50年を待たず皇国は瓦解するだろう。大きな内乱になる可能性も高い。内乱になれば、

周辺国が力を増し、いずれ、祖国の地が蹂躙されることは必至だ。


「もう、やるしかない。歴史に逆賊の名を、虐殺者の名を刻んでも、体制を変えるしか、

祖国を守るすべはない。」

ノイマン提督は、吐き出すように言った。

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