討伐勅使
ハイエス候からの独立宣言から3日ほどたち、皇帝代理第二皇女アレクサンドラ・ブランドリアの名で、逆賊ハイエス候討伐の勅命が発行された。
勅使は、飛行戦車でひそかに、迅速に各候領に差し遣わされた。
すぐさま元第5機甲師団、現在、中央戦略機甲師団の第二特殊大隊が討伐に向かった。
戦力は飛行戦車30、飛行兵10、高速機動歩兵100、大型輸送用飛行戦車1 となる。
現地の戦力から想定すると十分な構成であった。
ここからハイエス候領領都トランシルバまでは、飛行兵団の速力で3日、急げば2日程度の行程である。
現地での作戦指揮は、ロッテンマイヤー少将が直接行う。
師団長であるロッテンマイヤーが大隊遠征の指揮をとるのは、トランの動きが予測できないからで、最悪は他国との戦闘になることを想定してのことである。
現地での戦闘判断は他国とのやり取りも含めて、アレクサンドラからロッテンマイヤーに一任されている。
基本的には今までと同じ作戦である。飛行戦車で領都の行政府と軍司令部を強襲する。
ハイエス候及び幹部の死亡を確認したのちハイエス軍に投降を勧告する。
「なに!、もう討伐の勅使が来たというのか?
そ、そんな馬鹿な。皇都からここまでそんなに早く走れる馬があるか!」
ハイエス候は、伝令にきた兵士に怒鳴った。独立宣言の通知を皇都に送ってから半月たった。
皇都に届いてから5日程度だろう。皇都の連中がすぐに対応したとしても、早すぎる。
早馬を乗り継いでも皇都からここまで10日はかかる。
-------------------------------------
【ハイエス侯領討伐の勅】
ヨーナス・ハイエス、アーブラハム・バント、ヨルク・リーネルトをして
皇祖皇宗の神霊に謝するを忘却し、逆乱せしむるに至るは
我の深く軫念する所なり。
皇国の現状に鑑み、非常の措置を以ってこれを収拾せんと欲し
ここに忠良なる汝臣民に告ぐ。国難を招く叛臣を排し
皇国の安定を庶幾する。
汝臣民それ克く我が意を体せよ。
[署名]アレクサンドラ・プリンツェッシン・フォン・ブランドリア
-------------------------------------
第二皇女は生きていたのか。
勅が偽物の可能性も十分あるが、どちらにせよ、それは些事なことである。
皇国政府は反乱の影響でほぼ機能していないはずだ。
ノイマン提督からの連絡では、ほぼすべての官僚を排し、皇族も全員弑逆したとあった。
その後、反乱軍は鎮圧されたと連絡があったが、我々の独立宣言には当面対応する余裕はないはずだ。
どうして、こんなに早く反応できるのかわからなかったが、どちらにせよ、討伐軍を派兵するとしても来年の春になるのは間違いない。
それまでにはトランと連携して充分な準備ができる。
と、考えていると次の伝令兵が駆け込んできた。
「ハイエス候、こ、皇都からの討伐軍から投降勧告の伝令が届きました!
「なにを馬鹿な。先ほど勅使が来たばかりではないか。ふっ、なるほど。領内に潜伏している間者による攪乱であろう。」
「問題ない。その伝令を持ってきたものを捕縛して、尋問しろ。まずは領内に巣くう間者どもを根絶やしにしてくれる。」
すると。すぐに別の伝令が駆け込んでくる。
「領都北方約10㎞の地点に、突然武装兵団が現れました。数は不明。およそ1個大隊
はあろうかと思われますが、見たこともない乗り物で構成されています。」
「見たこともないだと?」
「軍務長と行政長を呼べ!」
ハイエス候は軍を統括するバント伯爵と行政を統括するリーネルト伯爵を呼んだ。
「候、状況は聞いております。至急、戦車大隊を派遣し、その武装兵団に対し展開させましょう。」
「うむ、そうしてくれバント伯爵。」
侯爵の承認を得て、バント伯爵は軍の指揮の為に出て行った。
「しかし、どこの兵でしょうか?
北からなら皇都から派兵されたと考えるべきでしょうが、討伐軍であれば早すぎます。
1個大隊規模とはいえ、ここまではひと月近くはかかるはずです。
近隣の駐屯兵をかき集めるにしても早すぎます。わかりませんね。。。」リーネルト伯爵は考え込んだ。
「つい先ほど、討伐軍とやらからの伝令で降伏勧告がきた。
間者による攪乱作戦かと思っていたが、本当に来ているのか。」
「そ、そんな。なぜ。。」
「なんにせよ、味方ではあるまい。勝たねば未来はない。
1個大隊規模であれば、地の利があるこちらが圧倒的に有利であろう。」
「そうですね。。
リーネルト伯爵は正体が全く分からない相手に、いきなり戦闘をしかけるのはどうかと思っていたが、今はほかに打つ手がない。
その時、爆音とともに目の前に閃光が走り、ハイネス侯爵とリーネルト伯爵は爆発に巻き込まれあっけなく落命した。




