表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブランドリア戦記  作者: 夏見静
アレクサンドラ救国篇
23/82

皇位継承問題 その2

そうして、アレクサンドラはブルームエールの兵器研究所で姉と再会した。


「そうですか。本当にあなたもよく頑張りましたね。皇国を救ってくれてありがとう。」


アレクサンドラから、反乱勃発から直轄領奪還までの経緯を聞いたマリーローズは、感情の抑揚の無い、か細い声でアレクサンドラに感謝をつたえる。


「いえ、姉上様。私はなにもできませんでした。すべて臣下たちが成し遂げたことです。

あの者たちはきっと姉上様を盛り立ててくれます。公務に御復帰されるまでには、

皇国もさらに安定していることでしょう。御安心して療養いただけたらと存じます。」


「・・・・・。」

マリーローズの左目は宙を見つめたままで、何も言わなかった。


「?」


アレクサンドラは姉が何を考えているかわからなかったが、

短時間でと言われていたにもかかわらず長居をしてしまい、きっとお疲れになったのだろうと思い、今日は帰ることにした。


「では、姉上様。本日はこれでお暇させていただきます。くれぐれも御自愛いただきますよう。少しでも早い御快復をお祈り申し上げます。」

アレクサンドラは、マリーローズの手をそっと握った。


「ありがとう、あなたも無理をしないように。」


マリーローズもその手をやさしく握り返した。


アレクサンドラが退室した後、マリーローズは大きくため息をついて考えた。

あの子はきっと、私に何が起こったか聞かされていないのだろう。

おそらく軟禁生活で病を得たとでも言われているに違いない。妹の様子からそう推察した。

溌溂とした少女のままの妹は、とてもまぶしかった。

皇族としての誇りを捨てて、生にすがりついた私を、かわらずに姉と慕ってくれている。


「皇族にもどることなんてできるわけがない」

マリーローズはそう思っている。ましてや皇位継承などありえない。

私に起こったことは、妹以外はみな知っているはずだ。

私が女帝になることなど周りが、いや何より自分自身が許さない。

回復したら姿を消そう。いまはそう考えていた。



~ ~ ~ ~



皇都に到着し、自室に戻ったアレクサンドラは、久しぶりに再会した姉のことを考えていた。

ベッドに横たわった姉は、全身を包帯で包れていたことを抜きにしても、どこか以前とは雰囲気が違っていた。

反乱鎮圧までの経緯を話しているときも、宙を見つめたまま、ずっと何かを考えているようだった。


姉は、妹の自分から見ても人とは思えない美しさだった。

どのような芸術家でもあの方以上の美を描くことはできない、人の技ではない、まさに神様の造形だった。

以前、兄の立太子の式典で来城されたノルト教の法皇様が姉の姿をみて、おもわず神に祈りを捧げ、この方は、神の御使いでありこの大陸の宝玉だから、決して手放してはならないとおっしゃたのもわかるほど、人智を超えた美しさだった。それ以来、姉は「エウロットの宝玉」と呼ばれるようになった。

しかし姉はそんな自分の美しさを特に意識してはいないようで、本当に婀で優雅な方だった。

アレクサンドラにとっては母上以上に優しく、お転婆だった自分をいつもかばってくれて、暖かく抱きしめてくれた。


しかし再会した姉はそんな婀な雰囲気は消え去り、どこか暗く冷めたような雰囲気に変わっていた。

唯一包帯の隙間から垣間見える左目の瞳は、澄み切った青空の色から、霧の掛ったような光のない青色になり、感情が全く見えなかった。


「きっと、病のせいでお疲れになっているのよ。回復すればきっと元の姉上に戻られるわ。」

アレクサンドラは自分に言い聞かせるように、呟いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ