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ブランドリア戦記  作者: 夏見静
アレクサンドラ救国篇
16/82

治療

第一皇女は悲惨な状態だった。


生きているのが不思議なくらいだ。

毛布につつみ大尉が背負子に乗せて落ちないように軽く縛り、地上への階段を急ぎ登る。

少尉はレオンハルトに状況を伝えて指示を仰ぐために、先行して戻っていった。


捜索チームは、第5機甲師団第六特殊大隊諜報中隊から選抜し、そこにデュディアーヌが加わって構成していた。


色々な情報を総合すると、第一皇女は、仮に存命でも、尋常ではない状況に晒されている可能性が高い。

そのような状況を大勢の人目に晒すことは避けなければならないため、探索は最小部隊構成の3人とした。

隊長はコード大尉、そしてテスラ少尉である。二人共生え抜きの諜報員で、国の秘密はあの世まで持っていく、他国の秘密は死んでも持ち帰るという信念の持ち主だ。

デュディアーヌが参加しているのは、唯一、第一皇女の顔を知っているのと、女性がいたほうがよい状況だろうという判断である。

もちろん、報告を心待ちにしているアレクサンドラを安心させるためでもある。


階段も残り僅かとなったところで、テスラ少尉と見知らぬ将校が待っていた。少し警戒しながら近づく。

階級章からすると将校は大佐だった。


「こちらが、マリーローズ殿下ですね。」大佐は、少し毛布をめくり観察する。

「うむ、確かにひどい状態ですね。まずは階段上に小部屋が有ります、

そこに応急処置の準備をしているので、そちらに運んでください。」


「了解しました。」コード大尉は大佐とは知己の様で、諾々と指示に従ってた。


小部屋に入ると、鉄棒を組み合わせた見たことのない造りのベッドがあり、その周囲には、

管がついて中に液体が入った、これも見たことのないガラス瓶が何本か吊り下げられていた。


ベッドの両脇には白衣を着た女性が2名待機していており、大佐はその女性達に指示を出し、

彼女達は大尉から受け取ったマリーローズを、手慣れた手つきでベッドに寝かせた。


毛布をめくると、暗闇ではよくわからなかった、更に悲惨な状態を見ることになった。


「なんてことを!」「どうしてここまで!」 

デュディアーヌは怒りに涙をこぼし、震えながら声を絞り出す。

大尉と少尉は目を背け 「われわれは、外の警備をしています。」と部屋を出た。


「あなたも外に。」と大佐はデュディアーヌに言ったが、

「いえ、近衛大隊の責務です。何卒お側で警護させてください。」と退室を拒んだ。


大佐はちょっと考えていたが、「いいでしょう。ですがこれからは治療です。

治療には口を出さなようにしてください。殿下をお助けしたいのであれば。」

そう言って、ベッドに向き直る。


それは、デュディアーヌが知っている医者の治療とは全く異なる 「治療」であった。

しかし大佐曰く、これは単なる応急処置で、本格的な治療はブルームエールの研究所に戻ってからになると言った。

命をつなぐことができれば、完全には戻ることはないが、見かけ上はある程度元の状態になるかもしれないと言ってくれたことが唯一の救いだ


その後、レオンハルトの指示で、救出できたことは極秘事項になった。

この状態の姉に会えば、ただでさえ張り詰めているアレクサンドラ殿下の気持ちが切れかない恐れがあり、

治療がある程度進むまでは伏せておくことになった。

マリーローズ殿下の状態を実際に見たデュディアーヌとしても異存はない。


応急処置が済むと、第一皇女は輸送用飛行戦車でブルームエールに運ばれることになった。

ついていくべきか迷ったがアレクサンドラ殿下から離れるのは避けたかった。


「大丈夫ですよ。名乗るのが遅くなりましたが、私は皇国軍兵器研究所所長オットー・グーテンベルク大佐です。あっと、最近、少将に格上げになったんですね。」


「治療には半年以上かかるでしょう。退院には1年近くかかるかもしれません。

しっかり治療しますので、安心して近衛兵団団長としての任務を果たし、

アレクサンドラ殿下をしっかりお守りください。」

そう言って、グーテンベルク少将は飛び立っていった。


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