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ブランドリア戦記  作者: 夏見静
アレクサンドラ救国篇
13/82

皇都奪還

第5機甲師団本隊は、皇都目前に迫っていた。

飛行戦車なら5分程度で皇城を強襲できる距離だ。

各地に飛ばした、偵察用飛行戦車からの電文でも、各機甲師団は予想通りに直轄領の制圧に向かっており、皇都周辺に機甲師団は存在しなかった。

敵は機甲師団ではなく、歩兵中心の皇都守護師団となる。


アレクサンドラは、第五機甲師団の旗艦である、大型輸送用飛行戦車の作戦室にいた。

これは飛行戦車を最大30機、歩兵を最大300名まで格納し輸送できる、移動作戦司令部である。旋回砲塔式の雷撃砲を有しており、その火力は雷撃砲で最大。現在稼働しているのは2機で、両機とも今回の作戦に参加している。


指揮官クラスの将校兵は全員集めらてており、着席している。アレクサンドラは前方の作戦ボード横にラインハルトを後ろに従え着席している。


アレクサンドラは本人の希望で今回の奪回戦に参加していた。

デュディアーヌやラインハルトは難色を示したが、「皇都を取り戻す戦いに皇族がいないのでは大義名分がたたないし、兵たちの士気もあがらないのでは無いですか?」との皇女の一言で同行が決まった。

アレクサンドラ自身も、もしかしたら皇族の誰かが無事かもしれないと一縷の望みをかけていた。

それを自身の目で確認するためにも同行したかったのだ。


「では最終確認を行う。」レオンハルトが作戦ボード前に立つ。


「今回の作戦に於いては、皇都及び皇城の被害は最小限、皇都市民の被害は0とするのが、アレクサンドラ殿下の御希望である。よって、飛行戦車による空爆ではなく、飛行兵による奇襲を軸とした作戦となる。」


「飛行兵の準備状況は?」


「完了しています閣下。1個中隊が出撃指令待ちです。」


「深夜0:00、第一飛行兵中隊は皇城に突入。ノイマン提督、グランダール中将、ネロ少将、ノイマン少将、キーエンス少将を捕縛、抵抗するようであれば処断する。」


「その後、飛行兵は皇城を制圧。降伏勧告し、応じない場合はこれを殲滅する」


飛行兵。これも遺跡で発見された異形の兵器だ。

人型であったため、オットーが来るまでは兵器とすらみなされていなかった。

オットーの研究で、人が乗り込み動かす人型戦車であることが判明した。

大人の男3人分くらいの背丈で、燃料を必要とせず、操作要領は概ね飛行戦車と同じだ。

人語を話す戦闘補助装置も同様だ。

兵装も、腕に仕込まれた電撃砲で戦い、胴部に格納した大型の雷撃銃で格闘戦も可能となっている。

移動も飛行戦車までの高速滑空はできないが、従来の戦車や馬よりは遥かに速い。

故に第5機甲師団では、飛行兵は市街地制圧を主任務としている第一特殊大隊に多く配備されている。


深夜0時が突入開始時間だ。それまでに飛行兵中隊は皇城近くまで侵入しておかなければならない。

現在、第5機甲師団は皇都手前約3Kmの地点まで接近していた。


「諸君、作戦開始だ、必ずやアレクサンドラ殿下を皇城にお返しするぞ!!」

「おぉー!」「おぉー!」


アレクサンドラは、熱心に各隊を訪問激励し、兵たちと親交を深めていた。今では、アレクサンドラへの忠誠心というか信奉ぶりは尋常ではない。


「ハインツ中尉! 作戦の成否は貴殿の手腕次第だ! よろしく頼む!」

レオンハルトが叱咤激励する。


「了解です。全力を持って任務に当たります。全機発進!」

第一飛行兵中隊の指揮官はそう言って滑空を開始した。


中隊は地下水路を使って皇城近くまで侵入、地上へは、皇城近くの、地下水路整備組織が管理する資材搬入口を利用して出る。

斥候による事前調査では、想定している地下水路経路上に封鎖、見張りの配置は確認できていない。


その後、皇城外壁から城内に突入、ノイマンの執務室兼寝室と確認している、元謁見の間横の貴賓応接室を包囲し、捕縛もしくは殲滅する。


また、飛行兵の城内作戦開始と同時に、第一から第四までの高速起動歩兵中隊で、市中各所の敵を

逐次殲滅し、各所を制圧する。



~ ~ ~ ~


「妙に寝苦しいな。嫌な感じだ。」

ノイマン提督は謁見の間を改修した統合作戦本部横の自室で、呟いた。

皇都を制圧し、皇族および官僚どもは全員もれなく粛清した。

第一皇女は生かして幽閉しているが、すでに生きる屍となっていると聞く。

いつでも弑逆できるし問題ないだろう。

各機甲師団とも連携がとれた。予定通り、第二機甲師団も合流し、それぞれ進軍を開始している。

第5機構師団には第4師団をあてた。すぐに決着はつくだろう、その後は南の直轄領に向かいこれを制圧する。それで完了だ。

諸侯には状況と講和条件を記した書簡をすでに送っている。全てうまく行くはずだ。

しかし、この胸騒ぎはなんだ。。。

ノイマン提督はベッドから起きだし、机の上の水差しから水を飲んだ。


「提督!、大変です!」 作戦本部付きの将校が自室に飛び込んでくる


「何事だ!」


「じょ、城内で見たこともない巨人が暴れています!」


「巨人だと。。。どういうことだ?」


「わかりません。複数の巨人が突然出現し、こちらに向かっています。

途中、ネロ少将が殉職されたとの情報もあります。とにかく提督は奥にお逃げください。」


「私が狙いだというのか? 他の将軍はどうした?」


「閣下!ご無事ですか!!」将軍たちが飛び込んできた。


「うむ。状況はどうなっている?」


「全くわかりません。なんの兆候もなく突然城内に現れた金属の巨人達がこちらを目指しているようです。」


どぉーん!外で何かが破壊される音が響いた。「な、なんだ!」将軍たちは慌てふためく。


謁見の間の大扉を破壊して、飛行兵が入ってきた。確かに鉄の巨人に見える。


「ノイマン提督、こちらにおられるのはわかっています。我々は第五機甲師団第一特殊大隊飛行兵第一中隊です。」

「投降を勧告します。従わない場合は全員処断します。」


「・・・・・・・。」


「だ、第五機甲師団だと?」


「ばかな!第四機甲師団が制圧に向かっているはずだ!。」


「だいたい、なんでこんなに早く皇都に来れるんだ? 事前に計画が知られていたのか?」


将軍たちは混乱していたが、ノイマン提督は思い当たる節があった。

確かに、第五機甲師団の情報には引っかかるところがあった。

いくら実験部隊とはいえ、公開されている兵力が異常に少なかったのだ。他の師団の半分にも満たない。

しかし、内部調査では問題はなかった。実験品の配備はしているようだったが、実戦での実績のない

あくまでも実験品で兵力としては換算できないレベルだとの報告だった。

それゆえ、最大兵力の第四機甲師団をあてればまず問題ないだろうとタカをくくっていた。

この巨人がその実験品なのだろう。


「そういうことか。儂としたことがぬかったわ。。あそこは確かベルンとかいう若造だったかな。」



「最終勧告です。そちらの奥の部屋に7名いることはわかっています。直ちに武装解除して投降しなさい。」


飛行兵も飛行戦車も、原理は不明だが、壁等の障害物の有無にかかわらず、生物の存在を検出できる機能がある。生物だけでなく熱を持つ物であれば、その温度を赤や緑青など色の違いで可視化することができる。


「ふざけるな!」グランダール中将が小銃を発泡しながら飛び出してくる。


「これより応戦する。殲滅せよ。」飛行兵は腕の雷撃砲を起動させた。


勝負は一瞬でついた。ノイマン提督含め、将軍は全員戦死。

守護師団は謀反の際の悪逆な略奪・虐殺・暴行が発覚すればどうせ処刑されると徹底抗戦の構えをみせるも圧倒的な兵力差の前に、壊滅寸前で武装解除し投降した。


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