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ブランドリア戦記  作者: 夏見静
アレクサンドラ救国篇
11/82

天才

オットー・グーデンベルグ。北方諸侯領の出身だというが、同郷のものがいないので定かではない。

幼い頃から、古代史研究に興味を持ち、皇国で最も権威のある皇国軍付属学究院に、15歳の時に飛び級で入学した。

そして学ぶこと4年、この世界で初めて、古代語の解読に成功し、卒業後、皇国軍開発実験部隊に入隊、新遺跡解析チームの所属となった。


そしてこの異形の兵器に出会い、古代語の資料解読から始まり、操縦士の育成まで、8年の歳月をかけて、運用可能なまでに復活させた。


その頃、野心に燃えた若手将校であったレオンハルトと出会った。

レオンハルトは、オットーの研究により、ようやく動き出したばかりの異形の兵器に魅入られた。これがオットーの言う通りのものであったら戦のやり方さえ変わることに気付いた。

官僚の横槍が入る前に、この研究を手のうちに入れなければ、今の弱腰の皇国軍を立て直す機会がなくなる。

軍上層部に掛け合い、研究所付属の古代兵器実証実験部隊を設立。しかし官僚主導の軍縮が進む中、研究予算の確保は難しかった。そこで研究成果の民間流用への協力を担保に、極秘に民間資本の支援を取り付けた。

大きな賭けだった。これが知られれば、関係者は重罪だ。それでも、レオンハルトはこの研究を大成させなければならない。賭けに勝たなければ軍、いや皇国の未来はない。そんな焦燥感に囚われていた。

これが第五機甲師団、後の中央戦略機甲師団となる。


異形の兵器。通常の戦車のように地上を走行する形態ではない。

原理は現在でも解明できていないが、起動すると宙に浮き、滑るように高速で移動する。

外装は漆黒で、材料はわからない。戦車と同じ鋼ではないことは確かだ。

楔のような形で、戦車とほぼ同じ大きさだ。

戦車のように、上部に旋回砲塔があり、主砲から弾丸を射出する方式ではない。

先端に近い位置に短い筒が出ていて、そこから赤い雷撃を発射し対象を溶断する。

雷撃とは言っているが、実際は赤い光の帯である。

今のところ、この兵器の外装を破壊するには、この雷撃以外にはない。つまり同士討ち以外はない。


また、この兵器は燃料の補給を必要としない。

戦車は、ダランで精製する油を補給口から注入する必要がある。

大凡3日の作戦行動で補給が必要となってくる。


この兵器は、最高速度で累積100万時間の飛行毎に、燃料核の交換が必要と資料にはある。

この燃料核が何かは判明していないが、最高速度で100年以上飛行することは当面ないだろう。

なので、燃料の補給は必要ないとしている。


戦車は、操舵者と砲手の2名で搭乗するが、

この兵器の搭乗者は1名のみである。1名で操作と砲撃を行う。

登録した搭乗者が機体の一部に触れると、全面の扉が跳ね上がり操縦席が露出する。

搭乗すると、扉が閉まり外界の映像が、扉内側に表示される。

この外界の映像に合わせて、自機の状態、敵機の情報などが古代語で表示される。

先に述べた燃料核の状態も表示されている。


操舵は、従来の戦車のように、操縦桿では行わない。

座席の左アームレストの先端にあるパームレストに自分の掌をあわせて、

どのように動かしたいか思考を掌に集中させるだけだ。

雷撃は、右アームレスト先に小銃のような引き金があり、それを引いて発射する

その他の補助操作は右パームレストの先のガラス板に浮かび上がる記号に触れて行う。


そして、搭乗者の全ての行動を、この兵器自身がサポートする。

体調、精神状態の監視と対応策の提案、、思考の乱れによる操舵不良の補正、

索敵情報の通知、機体状態の通知。自動操縦による搭乗者操作不能時の戦闘代行。

常に搭乗者とコミュニケーションを取りながら補助してくれる。


しかし、現在でも、完全に使いこなせている操縦士はいない。

使いこなす為には、操縦士が、古代語で、戦闘に関する専門用語を使い、会話ができることが必要である。

戦闘補助機能の提案を理解し、指示を出さなければならない。

指示がなければ、戦闘補助機能はなにもしない。

最も古代語の習得が進んでいる操縦士でも、2割程度しか使えていない。

それでも、師団内での、模擬戦闘では、1機で通常戦車中隊を戦闘不能に追い込むのに2分とかからなかった。

なお、この兵器の正式名称は「飛行戦車」である。


グーテンベルクは、その他にも、異形の歩兵用兵装も復活させた。


ひとつは、飛行戦車の主砲である雷撃砲の歩兵用携帯バージョンである。

正式名称「雷撃銃」は30㎝程の棒状で、先端から雷撃を発する銃として使用する。

別の使い方としては、雷撃の出力を制御して、先端から雷撃の刃を放出する剣としての使用である。

その形状から、古代での主な使用方法はそちらだったのではないかと推察している。

また、一定時間使用すると動作しなくなり、その場合「電力」というものを補充しなければならない。

「電力」は、飛行戦車から補充する仕組みになっている。


もう一つは歩兵用の「高速移動装置」である。

背部に四角い箱が付いている金属のベルトを腰から大腿部にかけて装着し、

歩兵の跳躍を補助するのである。

出力を加減すると人外の速度で走ることもできる。

これを使用すると1回の跳躍で50mは跳躍可能で、

操作は飛行戦車の操舵方法と同じく「思考」である。

動作原理はおそらく、飛行戦車が飛行するのと同じであろうが、

こちらも同じく原理はわかっていない。

この装備を使用する歩兵を第五機甲師団では、高速起動歩兵と呼んでいる。


また、これも「雷撃銃」と同じく、飛行戦車から「電力」を補充しなければならない。

補充は、飛行戦車の操縦席後部、もしは外装後部の浅い窪み内に一定時間置いておくだけだ。

雷撃銃、高速移動装置の箱部分の表示灯が赤から緑に変化したら補充完了である。


「飛行戦車」、「雷撃銃」、「高速移動装置」は使用者登録という機能がある。

登録した使用者でなければ全く起動しない。

登録作業をしなければ、装置が使用者の思考を読み取れないようだ。

この機能のおかげで、敵に奪われて利用される心配がないが、

グーテンベルクはこの登録方法の解読が最大の難関であったと言っている。

現在この使用者登録を初期化、登録する権限があるのはグーテンベルク、レオンハルト、副官のアレクシスのみである。



グーテンベルクによる調査発掘は加速し、この神の遺産ともいうべき未知の技術を次々と手中の収めた。

マリーローズを治療している医療技術もその一つである。

その他にも、製薬技術、食糧生産技術、金属加工技術、光熱技術など人の生活に関連した技術が多い。

そして調査が進むと、この遺跡は古代伝承にある、「コロニー」の一つであることもわかった。



「コロニー」、古代伝承にある、人類を滅びに導いた監獄。


世界は2度滅びた。伝承にはそうある。

一度目は、世界中に大流行した疫病と、それに乗じた東の大国による力と金による支配。

豊かな異民族と、衰え、滅んでいったエウロットの国々。

しかし、長く続いた支配は東の大国の内乱による崩壊で終わりを告げ、混沌の時代となった。


2度目は、それからさらに時代が進み、混沌の時代が終わり、新たな大国が世界を支配した時代。

人類の英知は極まり、人々は天空高く、神の世界にまで住まうようになった。

その時代は長く続いたが、ある日、天空から齎された疫病により、再び終わりを告げる。

どのような手を尽くしても、その疫病は収束せず、人々は各地に「コロニー」を建設し移り住み、

お互いの接触を禁止することで、疫病が収まるのを待った。

しかし、それは人類の滅びを加速させる原因になった。

閉鎖空間である「コロニー」にひとたび疫病が侵入すると、あっという間に伝播し全滅する。

そのような「コロニー」が多発した。

疫病の伝染経路の変化が原因であった。

人々は「コロニー」を放棄し、生き残った人類も神の技を失い、現代に至る。

それが、伝承されている物語である。


閑話休題。


話は、師団本部の貴賓室に戻る。


デュディアーヌは、第三特殊大隊のホーキンス隊長から、教えてもらった、

異形の兵器についてラインハルトとアレクサンドラに一通り説明した。


第三特殊大隊はこれらの特殊装備と従来の戦車、歩兵用火器もあわせて、野戦を主とする部隊である。

兵力は飛行戦車が25機、歩兵は全員が雷撃銃と高速移動装置を装備し、その他、通常型戦車が10両、

その他の工作隊や通信隊等は他の機甲大隊と同様である。


「なるほど、、それでベルン閣下のあの自信でしたか。では他の大隊も同じような装備ということでしょうか?」


「いや、大隊毎に多少装備が変わってくるらしい。飛行戦車は基本どこの大隊も数は違えども配備しているらしいが、市街戦を主戦場とする第一特殊大隊は、飛行戦車の配備は少なく、別の異形の兵器が配備されていると言っていた。」


「別の?」


「うむ、詳しくは教えてくれなかったが、そのうちわかりますよ、と第三特殊大隊長は笑っていたよ。。」

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