ちいちゃんと雪の花
ちいちゃんの家に雪が積もった。
一面真っ白。とってもきれい。
ちいちゃんは大はしゃぎ。それを見てお母さんは楽しそうに笑った。
雪だるまを作っていると、お母さんが思い出したような顔をして、
「そういえば、雪の日にしか咲かない花があるのよ」
と、教えてくれた。
それはとても真っ白な花で、雪の中で隠れたように咲いている。
とっても珍しい花の話を、お母さんはしてくれた。
「とってもきれいな花だったわ。ちいちゃんにも見せてあげたかった」
そう言ってお母さんは残念そうな顔をした。
次の日。ちいちゃんは近所にお出かけをすることにした。
今日の目標は、雪の日にしか咲かない花を見つけること。
「おかあさん、よろこんでくれるといいなぁ」
ちいちゃんはお母さんの顔を思い浮かべて言った。
「ここにはないかな?」
公園の花壇を探してみる。
「こっちにはないかな?」
細い道路の、日当たりの悪い場所を探してみる。
「どこにあるかなぁ?」
誰かが作ったかまくらの中を覗いてみる。
たくさん歩いていろんなところを探してみた。
けれども花は見つからない。
「そうだ!」
思い付いたちいちゃんは、お花屋さんへ、やって来た。
「ちいちゃん、いらっしゃい。どうしたの?」
「雪の日にしか咲かない花って、ないですか?」
お花屋のお姉さんに聞いてみた。
「その花はね、ここ家の人に聞いてみると良いよ」
お花屋のお姉さんは手書きの地図をちいちゃんに渡して教えてくれた。
地図をたよりに行ってみると、大きな古いお家があった。
お家の前ではおじいさんが、雪だるまを作っていた。
「こんにちは、お嬢さん。何かお探しかな?」
おじいさんはちいちゃんに気がついて、そう声をかけてくれた。
「雪の日にしか咲かない花はありますか?」
ちいちゃんは聞いてみた。
「あぁ、それなら、あそこにあるよ」
おじいさんは笑って、家の庭を指差した。
真っ白な雪の中、よく見ると真っ白い花が咲いている。
光が当たって、近くの雪と一緒にきらきらと輝いてとってもきれい。
「もし良かったら、持って帰るといいよ」
おじいさんは、花を一本手折って、ちいちゃんに渡した。
「おじいさん、ありがとう!」
ちいちゃんは大事そうに花を抱えて、嬉しそうに笑った。
家に帰ってちいちゃんはお母さんにお花を見せた。
お母さんはそれを見てとても嬉しそう。
「暖かいところに置くと消えてしまうから、涼しいところに置こうね」
と言って、庭の、家の窓からよく見える位置にその花を置いた。
春になって花が消えるまで、ちいちゃんは窓からその花を毎日眺めた。
きれいなその花は見てもらうのが嬉しいとでも言うように、ちいちゃんが見ている時はいつも、きらきらと輝いていた。