表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ちいちゃんと雪の花

作者: 水野泡

 ちいちゃんの家に雪が積もった。

 一面真っ白。とってもきれい。

 ちいちゃんは大はしゃぎ。それを見てお母さんは楽しそうに笑った。


 雪だるまを作っていると、お母さんが思い出したような顔をして、

「そういえば、雪の日にしか咲かない花があるのよ」

と、教えてくれた。


 それはとても真っ白な花で、雪の中で隠れたように咲いている。

 とっても珍しい花の話を、お母さんはしてくれた。

「とってもきれいな花だったわ。ちいちゃんにも見せてあげたかった」

 そう言ってお母さんは残念そうな顔をした。


 次の日。ちいちゃんは近所にお出かけをすることにした。

 今日の目標は、雪の日にしか咲かない花を見つけること。

「おかあさん、よろこんでくれるといいなぁ」

 ちいちゃんはお母さんの顔を思い浮かべて言った。


「ここにはないかな?」

 公園の花壇を探してみる。


「こっちにはないかな?」

 細い道路の、日当たりの悪い場所を探してみる。


「どこにあるかなぁ?」

 誰かが作ったかまくらの中を覗いてみる。


 たくさん歩いていろんなところを探してみた。

 けれども花は見つからない。


「そうだ!」

 思い付いたちいちゃんは、お花屋さんへ、やって来た。


「ちいちゃん、いらっしゃい。どうしたの?」

「雪の日にしか咲かない花って、ないですか?」

 お花屋のお姉さんに聞いてみた。


「その花はね、ここ家の人に聞いてみると良いよ」

 お花屋のお姉さんは手書きの地図をちいちゃんに渡して教えてくれた。


 地図をたよりに行ってみると、大きな古いお家があった。

 お家の前ではおじいさんが、雪だるまを作っていた。

「こんにちは、お嬢さん。何かお探しかな?」

 おじいさんはちいちゃんに気がついて、そう声をかけてくれた。


「雪の日にしか咲かない花はありますか?」

 ちいちゃんは聞いてみた。


「あぁ、それなら、あそこにあるよ」

 おじいさんは笑って、家の庭を指差した。


 真っ白な雪の中、よく見ると真っ白い花が咲いている。

 光が当たって、近くの雪と一緒にきらきらと輝いてとってもきれい。

「もし良かったら、持って帰るといいよ」

 おじいさんは、花を一本手折って、ちいちゃんに渡した。


「おじいさん、ありがとう!」

 ちいちゃんは大事そうに花を抱えて、嬉しそうに笑った。


 家に帰ってちいちゃんはお母さんにお花を見せた。

 お母さんはそれを見てとても嬉しそう。

「暖かいところに置くと消えてしまうから、涼しいところに置こうね」

と言って、庭の、家の窓からよく見える位置にその花を置いた。


 春になって花が消えるまで、ちいちゃんは窓からその花を毎日眺めた。

 きれいなその花は見てもらうのが嬉しいとでも言うように、ちいちゃんが見ている時はいつも、きらきらと輝いていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ