ギルドで登録
ギルドに踏み入ると、そこには喧騒が立ち込める、いかにもな雰囲気があった。
奥には受付のカウンターがあるが、その手前には多くのテーブルや椅子があり、三分の一ほどは埋まっていた。
入ってきたシラサギ達を一瞥するもの、気にしない者、興味ありげに見ている者様々だ。
1人が笑顔で話しかけてきた。
中年男性「やぁ、シラサギさん。新しい人ですか?」
シラサギも笑顔で答える。
シラサギ「えぇ、そうです。センネトさん、お元気そうで何よりです。」
センネト「あなたに連れられてもう2年ですね。何とかなってますよ。」
シラサギ「この方はトウシロウさんです、機会があればクエストの助力をお願いします。」
センネト「勿論です。プロ…とは言えませんが、先達ですので。」
二人は少し談笑し、トウシロウも軽い挨拶を済ませた。
では、また、といい、センネトは去っていった。
トウシロ「お知り合い多いんですか?」
シラサギ「えぇ、このような仕事をしているので、自然と増えます。冒険者以外のお仕事も案内していますから、トウシロウさんも、ここが合わない時は相談してくださいね。この世界を知るのに一番適しているのが冒険者という理由で、最初に案内してますから。」
トウシロ「なるほど。冒険者が何をするかによってはお願いするかもしれません。」
そして、いよいよカウンターに到着。
受付は優しげで眼鏡をかけた、光加減によって紫色にも見える髪色の年若いお姉さん。
シラサギ「マリアラさん、新しい方です。登録お願いします。」
マリアラ「はい。畏まりました。」
受付のマリアラは微笑むと慣れた手つきで登録用のアレコレを準備し始めた。
半ば見とれるようにマリアラを見ていたトウシロウに、シラサギは少し小声で話しかけてきた。
シラサギ「彼女も私と同じ組織から派遣されています。組織で鍛えてもいるので、こう見えてかなりの強さですよ。」
トウシロ「!? ぃぇ、変なことは考えてませんからね?!」
作業の手は止めず、マリアラがシラサギを睨む。
マリアラ「聞こえてますよ!もう、やめて下さいよ、新人さん皆に吹き込むの。そんなに強くないですし、新人さんが腫れ物を見るような目になるんですから!」
シラサギ「失礼。何かあってはいけませんし、念の為と…。おっと、用意が出来たようですね。」
話題転換よろしく、シラサギがトウシロウをカウンター付近へ促す。
そこには紙と水晶、冊子がある。
紙の文字は明らかに見たことのない文字だったが、トウシロウには書いてある内容が理解できた。
トウシロ「これは!?」
シラサギ「実はこの世界では言語理解のチカラが働いています。なので、読めるだけでなく…そうですね、その枠内に名前をどうぞ。」
トウシロウは促されるままに名前を書いてみた。
すると、自身で書いたはずだが、見慣れない文字が記されていた。
困惑するトウシロウにシラサギは説明を続けた。
シラサギ「文字も自動でこの世界のものに置き換わります。自動変換されるんです。なので、生活で読み書きに困ることはありませんよ。」
トウシロ「便利ですね、助かりますね!」
シラサギ「えぇ、この世界にいる間は、ですが。」
トウシロ「?」
やや引っかかる物言いだったが、まずは書類を書くことに専念した。とはいえ、余り項目は多くなく、名前や年齢、趣味、やりたい事などだ。下半分は職員が書く欄のようだ。
書き終えるとマリアラが確認し次の手順を教えてくれた。
マリアラ「はい、ありがとうございます。では、次にこの水晶に触れてください。」
トウシロ「これは何を?」
マリアラ「これは、魔力量や適正をある程度調べる装置です。」
トウシロ「おお!定番の!!」
マリアラ「割れたり、眩しいくらい光ることは無いので、ガッカリしないで下さいね?」
トウシロ「定番の!は、なしですか」
皆クスッと笑う。
トウシロ「では、早速。…ワクワクはしますね!」
そして手を置くと、柔らかく光が出て、少しするとそれも消えた。
マリアラ「はい、出ました。ありがとうございます。」
トウシロ「どうでしょう?」
マリアラ「数値では出ませんので、抽象的な表現ですが、お伝えします。」
ゴクリ、と待ち構えるトウシロウ。
もしかしたら、チートな何かが伝えられるかもしれない。
そんな期待が彼の心を満たしていた。