ギルドを目指して
広場の先は大通りで、道は相当広く、道沿いには大小様々な店と露店が立ち並んでいた。
大きな道路の真ん中付近は馬車が規則正しく並んで進んでいる。
馬車とは言ったが、引いているのは馬だけではなさそうだ。
巨大なヌーの様なものや、アルマジロを大きくしたようなものなど様々だ。
その中でも、異世界初心者の目を引くのは…半人半馬の馬車だ。
その馬車を見ると引き手は力いっぱいな表情で、重そうな荷車を引いている。
トーシロ「あの人(?)は?」
シラサギ「あぁ、ケンタウルスですね。種族的には珍しくないですよ。通りにも割と見かけますよ。ただ…馬車を引くのは珍しいんですが…」
トーシロ「奴隷で引いてるとかでは…?」
シラサギ「奴隷制はずいぶん前に廃止されてますし、種族間差別も今はほぼ無いです。
引いてるのは、多分ですが…」
トーシロ「ナズェナンデス?」
シラサギ「趣味でしょうね」
トーシロ「…」
そのケンタウルスは引き締まったマッチョな上半身を見せつけるような薄手の服装で、馬車と連結した下半身も肉厚な馬の足で、素人目にも日頃から鍛えているのが分かる。
そして彼はたまにニヤリとした顔をしている…体への負荷を確かめているのだろう…
その時、空いていた御者台に小さな子供たちが器用に飛び乗ってきた。3人のわんぱくな子供は楽しそうに騒いでいる。
「いけ〜!」「もっと風を切って!」「キレてるよ!」
その声を聴きケンタウルスの男はスピードを上げて、更にはポージングも始める。
「ひゃっほー!」「アレよりずっと速い!」「肩にスイカ載せてるのかい!?」
なかなかの速さで通り過ぎるソレを、トウシロウはただ呆然と見送った。
シラサギ「子供にも人気のようですね。」
トーシロ「…はぇ〜…」
シラサギ「ではまず冒険者ギルドへ向かいましょう」
トーシロ「…アッハイ!」
ハッと我に返るが、異世界の深淵を覗いたような心地は拭いきれなかった。…あれは多分、深淵とは関係ないけど。
ちなみにケンタウルスはドバクと呼ばれていた。
大通りは賑わっており、行き交う人も多く商店も色々と並んでいる。
シラサギ「ギルドの登録が終わりましたら、大通りを中心に散策してみるとよいです。
武器防具、道具屋などが並んでいて、観光地のようになってますから。」
トーシロ「いかにもな武器とか並んでますか?」
シラサギ「そういうことです。とはいえ、服飾店などはスーツやジャージもあるので、完全にファンタジーでも無いですけどね。
さて、ギルドはもう目の前ですよ。」
大通りに入ってすぐの場所にギルドはあった。
大きくそびえ立つ建物。並び立つ他の物より一段高い堅牢な佇まい。
一階部分は酒場になっており、食事も取れるそうだ。
由緒正しい(?)ギルドだ。
シラサギの後に従い中へ…。