ファースタの街
ファースタの東門、そこには門番が立っていた。
トウシロウは道中での話から、金属鎧に槍、といういかにもな門番を予想していたのだが、目の前にいる門番(と、シラサギに紹介された人)は…
俺「え、嘘、めっちゃラフな格好」
中世ぽさもある上下の服に、現代感のあるデザインのベストと、手首や指にも小物が数点。
髪も金髪でオサレにたなびくアップバングスタイル。
門番と言われなければ、ただのイケメンとしか思えない。
門番「ども〜、ようこそ転移者さ〜ん。ここがファースタだよ〜。」
しかも、この軽さである。転移者が女性ならナンパを始めそう。
門番「女の子ならナンパしてたんだけどなぁ〜(^^)」
しているそうだ。
シラサギ「では彼から識別魔法を受けてください。どの街でも行う、入場検査です。」
識別魔法は、その者の魂の色を見る魔法と説明された。
種族により基礎の色が違い、輝きにより善悪の度合いが分かるとのこと。
犯罪者は色がくすんでいくのだが、これまで悪事を働いていなくとも、思想的に犯罪を犯しそうな者も輝度が低いそうだ。
つまり、悪いことをしようと考えて街に入ることが出来ない仕組みらしい。
門番「はい、オッケー。ファースタの許可マークも付与したから、今後は簡易検査で入れるよ〜。」
識別はすぐ終わった。輝度も問題なし。
今後識別魔法を受けた際、ファースタのマークも浮かぶ為、訪問歴が分かる仕組みだ。
トーシロ「悪人が分かるなら、街中は結構安全なのかな?」
門番「ワ〜ルイ奴が素直に門なんて通るかな〜?偽装魔法もあるしね〜。」
シラサギ「高い城壁も結界魔法も、熟練した能力者には無いも同然ですしね。」
そう言ってシラサギは門番と笑いあった。
笑ってて良いのかと思いつつも、門番が気楽な理由も納得できた。
門番「んじゃ、異世界の街を楽しんでね〜。」
ヒラヒラと手を振っている門番に礼を言いつつ、門の中へと進んだ。
まず目の前に広がったのは広い広場。
地面は石のようなコンクリートのような硬い素材で、綺麗に真っ平らだ。
大きな公園のような広さで、円を描くように木も植えられており、
ベンチには談笑する人、木陰で屋台を開く人、瓶を持ち陽気な酔っぱらいなど様々だ。
よく見れば獣耳や尻尾が目につく。ファンタジーだ。
更には半魚人が歩いている。フ、ファンタジーだ。
なお、服は着ている。サハギンが服を着ている…。ファンタジーとは…
ただ、その後ろを行く半鳥人は服を着ていない。畳んだ翼と全身の羽毛で鳥感溢れる人だ。
種族によって様々なのか。
トーシロ「凄いですね…SF映画の世界に紛れ込んだ気分です。」
シラサギ「ここまでごった煮だと、逆に現実味が無くなりますよね。」
トーシロ「服装も色々なんですね。サハギ…あの人なんてスーツですし…」
そう、先程見かけたサハギンはピシッとしたスーツ姿だった。
スーツを着ると誰でも知的に見える…そう、サハギンでもね。(失礼)
シラサギ「スーツも転移者が持ち込んだものですね。素材はこの世界で取れるものですので頑丈だったりしますよ。」
トーシロ「色々持ち込まれてるんですね…。とはいえ、元の文化も残ってそうですね。あの鳥の人は服着てないですもんね。」
シラサギ「あっ、あの鳥人は露出魔ですね。今魔法で通報しました。」
トーシロ「!? 文化の違いじゃないのか…」
種族のサラダボウルに驚きつつ広場を進んでいく。
この広場は敵襲があった時には戦場になるため広く確保されているそうで、門の付近はどこもこの造りだそうだ。
警察?に連行される鳥人を尻目にその広場を後にした。
ちなみに、その鳥人の名はペルックル、寝ぼけて着ていないだけで、わざとではないそうだ…。
どこの世界にもいるんだな、そう思いつついよいよ街中へと入っていった。