表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/40

4

メルが屋敷を去ってから、エルデは必至に勉強したり、紅茶の入れ方を忘れないようにノートにとったりした。

新しい乳母のランアイロは、エルデがあまり外に出なければ、いつも部屋の片隅で自分の爪をいじくったり、部屋にある鏡で自らの綺麗な髪の毛を整えたりしている。

ランアイロはあまりエルデに向かって怒る以外にあまり言葉を言うことはないが、ある時ぽつりとつぶやく。

「メルは馬鹿よ。仕事以外の余計なことをするから。いうことだけ聞いておけばいいのに」

やはりメルがメイドをやめたのは、エルデのせいだったのかと、エルデは俯く。メルは懸命にエルデのためを思って働いてくれた。そのことだけは胸に刻んでおくことにした。エルデは自分がもう失敗しないようにと、色んな文献を読み漁っている。今はエルデは貴族という立場だ。立場を誤ってはいけない。失敗すると、メルのような立場の人を苦しめてしまうからだ。

もうすぐエルデは貴族からメイドという人に使われる立場の存在になる。その立場をよくわきまえ、うまく立ち回ろうと一生懸命仕事の働き方を、エルデは本など文献を読み漁っている。


「随分と暇人ね。また余計なことしているんじゃないでしょうね。あなたみたいな不細工な人と兄弟になるなんて、私の評判がおちるじゃない」

 マチルダがエルデの部屋に入ってくるなり、そういうので、エルデは何と答えてよいかわからず、「ごめんなさい」とだけ言う。

「ふん」

マチルダはそういうと去っていく。それだけをわざわざ言いに来たのかと、エルデは肩を落とす。

 姉のマチルダは相変わらずエルデの部屋を訪ねてきては、エルデの粗探ししている。マチルダは輝くように美しい。両親からはいいところに嫁げるように厳しく家庭教師がいつもマチルダを訪ねてきている。

マチルダもストレスが溜まっているのかなと、エルデは最近そんな風に想えるようになった。それもこれも読書のおかげだ。苦しんでいる貴族の文献をいろいろ読んだ。その中で恋愛というカテゴリーの書物もよんだ。正直エルデは恋愛にはまったく興味がわかなかったが、人生一人で生きていくのが重荷で、だれか分かち合える人は羨ましいと思う。

 一応笑顔の練習でもしておこうと、鏡を見て笑顔を浮かべようとするが、まったく笑顔を浮かべることができない。頑張ろうとするが、表情筋が突っ張ってまったくあがることがなかった。

「あれ?」

そういえばエルデは昔から笑うことが苦手であった。メルがいなくなって、ますます笑顔が苦手で笑えなくなっていた。


それから一年半たち、エルデは十三歳になった。

美人で有名なマチルダが伯爵家の嫡男と婚約することが決まって、伯爵家などの大勢の婚約パーティーを開くことになったので、一応エルデも行くことになってしまう。どうあがいても不細工なエルデに社交界などで着るドレスなど似合うべくもなく、笑われるので、エルデは行きたくなくてとても憂鬱になる。

だがもうすぐメイドになるエルデもそういう貴族の集まりにでるのも最後になるだろうと、自分に言い聞かせた。

エルデの両親は見栄っ張りになんで、豪華なドレスは何着かもっているので、安心だが、エルデはため息をついてさっさと寝ることにする。

どうせ何着ても笑われるか、嫌なことしかない。もう少しの我慢だと、エルデはもう一度溜息をついて、大好きなクマのぬいぐるみのペティを抱きしめた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ