8 工具 その2
工具紹介のその2です。
レンチ コンビレンチ ハブコーンレンチ 眼鏡レンチ モンキーレンチ ラチェットレンチ。
普段使っている方は読み飛ばしていただいて構いません。
8 工具その2
8-1
レンチ
レンチとは、別名スパナとも言います。
ボルトやナットを回して絞めたり緩めたりする工具です。
「工具です」と一言で言っても、その形は色々あります。
前章では六角レンチ(7-3-3)やペダルレンチ(7-3-4)を取り上げましたが、今回はレンチ・コンビレンチ・眼鏡レンチ・ハブコーンレンチ・モンキーレンチ・ラチェットレンチの紹介です。
言うまでもなく、百均で売っている物は、業務には使わない方が良いでしょう。
逆に、高価な工具もありますが、業務用であっても、ホームセンターで売っているレベルの工具で十分事足ります。
☆評価☆
◎は工具箱にいくつかあって良いモノ
〇は工具箱に一つは有った方が良いモノ
▲は仕事場に一つあれば良いモノ
△自転車には使わないかもしれないが、家の工具箱に入っていても良いモノ
☆無いよりはいいモノ
8-2-1
コンビレンチ
これも使用頻度の高い工具です。
両端に違うサイズの解放部が有るものも、片方が眼鏡型になっているものも、コンビレンチと言いますが、ここでは、両端が解放部になっているレンチを指す事にします。どれも数百円から千円ちょっとです。
例えば、片方が8mm、もう片方が10mmのコンビレンチは非常によく使用します。
8mmはバンドブレーキの調整ネジ止めナット、ブレーキレバーの止めボルト、籠を止める金具のナットなどにも使います。
10mmはブレーキワイヤー止めナット、ピボットブレーキの止めナット。ローラーブレーキの微調整用アジャスタ等、点検整備によく使われるものです。
レンチの両端のミリ数の組み合わせは、大体決まっています。
10mm-16mmなどと言うレンチは、(多分)存在しません。
市販されているコンビレンチの組み合わせは、大体以下の通りです。
▲ 6-7mm 6mmも年何回かは使います。
7mmは主に、(3-2-2)の場合、すなわち、チューブをリムから外そうとしたけれど、バルブを固定している輪のようなナットが斜めに入っていて外れない時に使用します。
あのバルブの裏表の平らな部分は、7mmに合う様になっているのです。
そして7mmスパナでバルブを固定し、10mmのラチェットレンチで外しにかかれば、ただの10mmで作業するよりも数倍速く終える事ができます。
〇 8-9mm 8mmは普通に使います。
が、8-10mmのレンチがあるなら、こちらは一つで十分でしょう。
9mmは、ディレイラーのワイヤを止めている部分や、同じくディレイラー固定金具に使用されていることが多いです。
◎ 8-10mm 最も使用頻度が高い工具です。
使用箇所は上記にあるので省きます。
力を入れやすい、厚めの物を選びましょう。
◎ 10-12mm 薄型の10-12mmが市販されていますので、それを一つ持っておきましょう。キャリパーブレーキの芯を抑えているナットを締めこむのに便利です。(前方のナットと袋ナットが重なっている部分)
かつては、そのキャリパーの片利きを修正する部分は12mm使用でした。現在はほぼ15mmです。
▲ 11-13mm 11mmは不使用。
13mmはハブ廻りで稀に使用。
◎ 14-17mm 特に必要なのは10-12mmと同じ薄型タイプ。
ハブ廻りや、コッタレスBBの左側カップにも多用。厚型タイプも一つあってよい。
☆ 19-21mm 自転車にはほとんど使わず、モンキーレンチで事足りる。
8-2-2
ハブコーンレンチ
ハブコーンレンチは、その名の通り、車輪の軸周りに使います。
ベアリングを抑える玉押しや、それを固定するロックナットは薄い工具で無いと回せませんので、必須です。
ただ、コンビレンチの薄型(特に14-17mm)でも代用は利きます。
それでも、15mmの薄型コンビレンチは見た事が無いので、少なくとも15mmのハブコーンレンチは手に入れておいてください。
▲ 13mm 軽快車前輪のハブに使用する事があります。
〇 14mm 薄型レンチの14mmで代用可能です。前後のハブ廻りで多用します。
◎ 15mm 非常に多用します。ハブ廻りよりも、一般車ピボットブレーキの左右バランス調整に対して使用するのです。他に代用品がありません。
☆ 16mm 使いません。
◎ 17mm ハブ廻りで多用します。時折、BBの左ワン緩めにも使います。
8-2-3
眼鏡レンチ
片方、若しくは両端が円形になっているレンチ。片方だけ眼鏡型のレンチはコンビレンチとも言います。紛らわしいですが、業務上はまず気にしないでいいでしょう。
解放型のレンチよりも、しっかりナットを保持したい場合、すなわち固くなってしまっているナットを緩めたい時に使います。
普段あまり使う事はありませんが、どうしても必要になる場面があります。
力を掛けたい時に使うと言う事は、梃子の原理を利用するために、長めの物をチョイスする必要があると言う事でもあります。
△ 8mm 稀に、籠を止めている錆びたナットを外す時に使用。
〇 10mm バンドブレーキのワイヤー止めナットが固着している場合などに使用。
▲ 12mm 某社の某電動自転車のモーターを外す際に有ると楽。
▲ 13mm サドルのやぐらを止めているナット外しに。ただし、ラチェットの方が良い。
△ 14mm 前ハブナット、サドルのやぐら止めナットに使う事も。
〇 15mm 後ろハブナット、特に電動自転車のギアワイヤがさびていてベルクランクが動かない時に。
8-2-4
モンキーレンチ
言わずと知れた便利道具。
工具箱に一つは入っている工具のうち一つでしょう。
日曜大工であれば特に考えずに¥1000程度の物を買っておいてもいいでしょうが、自転車販売の業務に使うのであれば、どれを選べばいいかは限られてきます。
使う場所は概ね以下の通り。
ヘッド止めナット。
BBまわり。
後はエアコンプレッサーの整備。
この程度でしょうか。意外に少ないです。
かなり解放部が大きく開くモンキーレンチで、大体50mm開くものが有ればOK。
更に、先端が薄めのモンキーレンチ。BB左ワンを締めたい・緩めたい時に、適当な工具が無い場合に突っ込みます。
ワタクシの場合、両者ともに使えるような、薄型の大口径モンキー一本で作業していますが、BB周りに使用すると消耗が激しいので、ちょいちょい買い替えしております。
保持部がゆがんだり削れたりすると、ヘッド止めナットを弄る時に周囲を傷つけてしまいます。
また、消耗を防ぐために、下あご部に力が加わらない様な使い方をしましょう。
ヘッドレンチなる工具が有りますが、正直どれも薄すぎて力を掛けられないので、ワタクシは使用していません。
☆ 小型モンキー
△ 中型モンキー
◎ 大型モンキー ヘッド止めナットを緩めたり締めたりします。
販売時点検で、微妙に籠(ランプかけの方向)が斜めを向いている時には、これでヘッドを止めているナットを少し動かし調整します。
また、BBのワンを締めたり緩めたり、コッタレス抜きを使う時にも必要です。
8-2-5
ラチェットレンチ
ラチェットレンチの言葉がさす工具は、主に分けて二種類。
コンビレンチの形で、片方は解放型、もう片方がラチェットレンチになっているタイプ。若しくは、眼鏡レンチで両端がラチェットになっている形。
もう一つは、「輪業用ラチェットレンチ」と呼ばれるもの。片方が14mm、もう片方が15mmのソケット型ラチェットレンチとなっています。
後者は特に、タイヤ・チューブ交換でハブナットを緩め締めする時に必須です。ただ、某社の「輪業用ラチェットレンチ」は高価です。ホームセンターで探せば(あまり見かけませんが)もっと安価な14/15mmが存在します。
▲ 10mm 英式のチューブをリムから外す際、バルブ根本を固定している輪型のナットが斜めに入っていて外れない事があります。(3-2-2) 7mmのレンチでバルブを固定し、10mmのラチェットレンチで地道にナットを外します。通常のレンチでこの作業をするととても時間と手間がかかりますので、この作業の為だけにでも一個あった方が良いと思います。
〇 13mm サドルのやぐらを固定しているナットに使います。サドルの交換が速くなります。
◎ 14/15mm 必須です。できれば二つあった方が良いです。ハブナットを絞める際に、内側若しくはハブ全体が共廻りする事があり、その時に左右両方からラチェットで絞めるとハブ全体が緩んだりすることを防ぐことができます。
工具編まだ続きます。
修理以外のコラムでも挟もうかと画策中です。