7 工具 その1
チューブ・タイヤ交換作業に触れる前に、工具について説明します。
その1 プラスドライバー マイナスドライバー 六角レンチ ペダルレンチ。
7 工具その1
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達人も 工具が無ければ ただの人
とまでは言いませんが、何も工具が無いと殆どの修理はできません。
そこで、パンク修理以外の修理の説明をする前に、工具について触れたいと思います。
修理自体、「壊れた部品を然るべき工具で外し、交換し、然るべき工具で元に戻す」作業です。
修理のできない方、又は失敗する方は、この単純と思える作業ができていないのです。
なお、失敗で一番多いのは最後の所。
「元に戻す」事が出来ていない方が多いと思われます。
初心者だと、部品がどの順番で組み立てられていたかを覚えていなかったりします。
慣れていても、初めて触る中国産電動自転車のモーター廻りなど、一旦バラすと訳が分からなくなったりします。
(ヤバそうなら、弄り出す前に何枚か写真を撮っておきましょう)
「然るべき工具」云々の部分は、ハンマーで叩かなくてはいけない場面でモンキーを使ったりすることです。
流石にそんな事はしないだろ?
と思われるかもしれませんが、仕事に慣れていない従業員はやりがちです。
目にしたら、きっちり叱ってあげてください。
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では、諸々の工具を紹介することとします。
一部を除いて、決して高い物ではありません。
また、販売者、修理者・自転車乗りであるならば、最低限は持っておいて損はありません。
第一、自分の自転車は自分で直さないとお金がかかってしょうがないですし、無くすでもしない限りは、ほぼ一生使える物ばかりですので。
基本的には、勤務するお店で殆どの工具をそろえているのでしょうが、それでも皆さんは自分の工具で作業していらっしゃると推測します。
その方が楽だからです。
そういう前提で参ります。
比較的重要な物から紹介していきますが、
◎は工具箱にいくつかあって良いモノ
〇は工具箱に一つは有った方が良いモノ
▲は仕事場に一つあれば良いモノ
△自転車には使わないかもしれないが、家の工具箱に入っていても良いモノ
☆無いよりはいいモノ
という評価となります。
上記◎の、「工具箱にいくつかあって良いモノ」という所に引っかかるかもしれません。
ですが、修理作業において一番不毛なのは、工具が見つからず探し続ける事です。
きっと、修理屋あるあるだと思います。
基本的には、小さい工具は小さい工具、大きい工具は大きい工具。
若しくは、重要度に従って工具を分けて収納している方が多いと思います。
それでも、8~10レンチや6mm六角レンチを探そうとガシャガシャやったり、別の作業中にどこかに置き忘れたりは良くある……とても良くある事です。
幾つか同系の物を入れておくと、その時間を省けるので便利です。
もちろん、かさばってしまうのが難点ではあります。
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ドライバー プラス
ドライバーの大きさは、全体の長さと、ネジの頭にある十字の溝の大きさに準じます。
長さは10cm以下から30cm位まで。
細いものから#0・1・2・3という物が有ります
(その他の規格は、自転車には使いません)
一番使うのが、20cm位の#2です。
赤く丸いグリップのドライバーは、仕事場でもよくみられるはずです。
ホームセンターで¥1000もしないでしょう。
これで十分です。
出来れば、芯が持ち手まで貫通していて、ハンマーでたたける物の方が便利です。
先端に磁気加工しているとなお良いです。
グリップ部分は太い方が強く握れます。
逆に言うと、細いと力が入りません。
力の入れ方は、単に回すベクトルに向かわせるのではなく、先端に向かって押し込みつつ回すようにしましょう。
そうすれば、若干固まったネジでも、舐めることなく外せます。舐めると相当苦労しますから。
少なくとも自転車関連では強く握れる方が断然使いやすいので、選ぶ際の参考にしてください。
☆#0 ほぼ使いません。
〇#1 内装三段の修理、電動自転車のテールライトに使う程度。
▲#2 長さ5cm前後 籠の取り付けや、内装3段変速ベルクランクカバーのネジ外しに使用。
◎#2 長さ20cm前後 メイン工具。あらゆる場面で使用。
▲#2 長さ30cm以上 稀に、電動自転車の鍵を止めているネジを回したりする際に使用。キャリア等が邪魔をしている場合がある為。
▲#3 錆びて外れなくなった籠の取り外しなどに使用。
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ドライバー マイナス
プラスドライバーと違い、自転車修理には殆ど使いません。
使うとしても、カギを壊したり、何かを無理やり外したりする時程度です。
なお、マイナスのドライバーは、「隠して持ち歩く」と通称「ピッキング防止法」で捕まりますのでご注意を。
これも、#で太さを表します。
▲#2 長さ20cm 何かを壊すときに。ただし、それをするとドライバーも無事では済まない。
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六角レンチ
断面が六角形なので六角レンチと呼びます。アーレンキーとも言います。
後述のヘキサレンチとは別物で、互換性もありません。
また、分数の数字がついている物はインチの規格で、普通の自転車には使いません。
様々な場所に使用する工具です。
特に4~6ミリは、ママチャリのハンドルからクロスバイクのハンドル廻り、ブレーキなどに使われます。
一本二三百円から売っています。必要本数をそろえておきましょう。
先端がボールポイントになっているかどうかは重要ではありません。
ですが、持ち手になる側はなるべく長い方が、梃子の原理を利用できるので力を入れやすくなります。
百均のモノは流石にNGで、折り畳み自転車のオマケについてくるような工具も使ってはいけません。
力を入れただけで工具自体がねじれたり、あっという間に舐めたりします。
怪我や破損の元になりますし、弱い工具ではトルクが足りなくなります。
使い方ですが、基本的には、片手でレンチを持ち、もう片手で90度曲がっている部分を押さえながら回します。
「舐める」という現象は、余計な力が要らぬ角度に逃げる為に起こるからです。
ただ漫然と片手で回すのではなく、暴れないように抑えつつ回すのがコツとなります。
ママチャリのハンドル(クイル)をサドル方面から絞める時には、片手でレンチを持ち、もう片手でハンドルを固定しつつ作業することが殆どだと思いますが、その時もレンチを回して力を掛ける方向は、水平方向を意識してください。
▲12mm たまに安価なサスペンションを締める際に使用。
▲10mm 同上。
▲8mm センタースタンドの増し締め等に使用。
◎6mm ハンドル廻り等に使用。
◎5mm スポーツ車のハンドル・ブレーキ廻りに必須。
◎4mm 同上。
○3.5mm グリップシフターその他に使用。
○3mm 同上。
▲2.5mm 稀に使用。
▲2mm 同上。
▲1.5mm 同上。
▲1mm 同上。
※ちょっと手抜きに見えますが、正解です。
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ペダルレンチ
○ペダルレンチ
非常に負荷のかかる工具であり、業務に使うのであれば丈夫なモノを選ぶべきです。
ペダルを絞める時に壊れて舐めたりなんかしたら、大怪我の元です。
となると、H社のペダルレンチ以外に選択肢は有りません。
A社の商品も気になりますが。
どちらも、鍛造です。
世の中には、数回使用しただけで再使用に耐えられなくなるような「なんちゃってペダルレンチ」も存在しますのでご注意ください。
A社のペダルレンチは、実際に使用したことは有りませんが、片方の口の角度が横になっています。
この形のペダルレンチは、焼き付き寸前の固いペダルを外すのに有利なのです。
自転車販売の際、ペダルの増し締めをすると思います。
この時に力いっぱい締めようとしてはいけません。
(それは、ハンドルだろうがペダルだろうが、どの場面でもいえる事ですけど。ワタクシが思い切り力を掛ける時には、必ず『締め過ぎない』様にする『逆の力』も同時にかけています)
クランク側の金属はペダルの軸ほど固くないので、ネジ山自体が溶けて死んでしまいます。
ペダル脱落の事故は、殆どが締め忘れによるものですが、稀に締め過ぎによる破損からくる脱落もあるのです。
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固くて直ぐに外れないペダルの外し方。
まずペダルの根元、ネジの隙間に油をさして少し置きます。
ペダルを前方に位置させます。
ペダルレンチをはめ込みます。
これで前方からペダルレンチ・ペダル・クランクとなり、更にこれをまっすぐ一列棒状になる様に位置を整えます。
保護手袋をした片手でペダルレンチをしっかりと保持します。
上から足でペダルをガツンと蹴り降ろします。
(使う手や足は、各々利き足利き手によって変わってくると思います)
以上です。
何度かやれば何とかなるモノです。
ただ、ワタクシはこの作業だけで過去4・5回はぎっくり腰を発生していますので、作業の際は重々お気を付けくださいw
また、BBに異常が有ったりする場合に、症状を悪化させたりすることが有ります。
無理ならば、あきらめも肝心です。
恐らく持ち込みの工賃は¥500から¥1000と言った作業ですので、無理をしてのケガはしないように気を付けましょう。
工具編まだまだ長々と続きます。
工具 その〇 一体、いくつまで続くのやら( ̄д ̄)