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公爵令嬢の婚約者  作者: よしの
第一話 アリクレット男爵家
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第二話 婚約者

魔法使いとして楽しい日々を過ごし、九歳となった。

魔力量も大幅に増え、魔力コントロールも自在に出来る様になり、魔法は上級、回復全て覚え、威力、数、形の変化等出来る様にもなった。

魔法の中で一番気に入っているのが飛行魔法だ、風の上級魔法で、最初は魔力の量が少なく長時間飛べなかったが、今ではかなりの時間飛んでいられるようになった。

空から見る景色は最高に気持ちがいい!

魔力は使えば使うだけ増えていて、今でも毎日増えている、魔力が増えないという事は俺には当てはまらなかった様だ。

周りに他の魔法使いがいないので、他人の魔力が増えているのかは分からない・・・。

相手に触れる事によって、その人の魔力を見る事も出来る様になった。

これは回復魔法を覚えている時に分かった事だ、回復魔法は自分の魔力を患部に注ぎ込んで治す。

最初はこれを無詠唱で出来なかった、自分の怪我は治せたが他人のは出来なかった、それは回復魔法が相手の体内の魔力に合わせないと発動しなかったからだ。

他人の魔力が見れるようになって分かった事だが、家にいる家族全員、使用人も含めて、全て少量の魔力を持っている事が分かった。

つまり俺と同じように魔力を使う事で魔力が増えるとしたら、全ての人が魔法を使えるという事になる。

魔法の呪文の魔力量を決める所を、『我が少量の魔力を糧として』とかに変えると、もしかして誰でも魔法が使えるかも知れない。

しかし今は誰にも教えてはいない、何故ならこの世界は戦争に溢れていて、全ての人が魔法を使えるようになったらどれだけの被害が出るのか分からないからだ。

いずれは誰かで試したいとは思うが、それは信頼できる人でないといけない。

剣の腕の方は二人の兄達には負けなくなり、アンジェリカとはいい勝負だ、これは勇者としての経験が物を言っている。

家庭の状況は、近いうちにマデラン兄さんと、ヴァルト兄さんの結婚式が同時に行われる事になっている。

本来であればヴァルト兄さんの結婚式は一年後の予定だった、しかし隣国の状況が思わしくなく、軍備を整えているとの情報がもたらされた。

その結果、ヴァルト兄さんの結婚式も同時に行う事となった、敵が攻めて来ては結婚式どころの話ではなくなるからな。

敵が攻めてきた場合は俺も戦争に参加しないといけない様だ。

魔法使いの数が少なく、使える戦力を遊ばせておく余裕は無いと、父上から言われた。

まぁ当然だな、防衛線が破られたらこの家はまず攻め落とされる事だろう、そうなれば戦争に出なくても殺される未来しかない。

一つ懸念があるとすれば、勇者の時も今回も人を殺した事が無い事だ。

戦争で魔法を使えば多くの人を殺める事になる、その覚悟が俺には出来てはいない。

その時になってみないと分からないか・・・。

結婚式の準備は慌ただしく進められている、俺は特にやる事が無い、と言うか邪魔になるので剣と魔法の訓練に勤しんでいた。

アルティナ姉さんは、ヒルデンブルク男爵家の長男の所に嫁ぐことが昨年決まっていた。

マデラン兄さんの所には、アンスラート子爵家の次女セシル・フォンアンスラートが、ヴァルト兄さんの所には、デッケン男爵家の三女イアンナ・ハインリッヒ・デッケンが嫁いでくる予定だ。

慌ただしい日々は過ぎ、結婚式当日を迎えた。

出席者は、アンスラート子爵家から両親と本人、デッケン男爵家から両親と本人、何故か関係無い、ラノフェリア公爵家から当主と娘が一人、後は領内の有力者だ。

結婚式会場は、家の前の庭に急遽建てられた柱と屋根だけの小屋だが、中は綺麗に飾り付けが施されていた。

結婚式は神父様が来て、新郎、新婦の誓いを交わすだけのシンプルな物で、後は会場に並べられた料理と会話を楽しむ物だった。

料理はいつにも増してかなり豪華な物で、俺は特にする事も無く一人で料理を食べていた。

兄達の所は、挨拶に訪れる人達で常に一杯で、俺が話せるタイミングは全く無く、夕刻前に式は終了した。

結婚式が終わり、ようやくここで挨拶出来た。

「マデラン兄さん、セシル姉さん、ご結婚おめでとうございます」

「エルレイありがとう」

「エルレイさんありがとう」

セシル姉さんは、栗色の髪がとても美しく、可愛らしい感じの顔立ちが、優しそうな印象をうける。

マデラン兄さんは今まで通りこの家に住み、領地経営を父から引き継ぐべく勉強の日々だろう。

「ヴァルト兄さん、イアンナ姉さん、ご結婚おめでとうございます」

「エルレイありがとう」

「エルレイ君ありがとう」

イアンナ姉さんは、金色の髪を短く整え整った顔立ちで、活発そうな印象を受けた。

「ヴァルト兄さんはいつ頃出立する予定なのですか?」

ヴァルト兄さんはこの町の名主では無く、国境の砦付近の名主と成り、砦の管理もやるそうだ。

住む家も新しく建てられており、使用人達も新しく雇われて、後は本人たちが行くだけで生活できるようになっている。

「明日には出て行く予定だ」

「随分と早いですね」

「あぁ、なるべく早く現場を把握しておきたいからな」

「敵が攻めて来た時は、僕も兄さんの所にお世話になるので、よろしくお願いします」

「エルレイの魔法には期待している、お前が来てくれれば力強い」

「ヴァルト兄さんの期待を裏切らない様に、これまで以上に頑張ります」

「あぁ頑張ってくれ」

ヴァルト兄さんは俺の頭を撫でてくれた、ヴァルト兄さんは何時も俺の頭を撫でてくるのだが正直恥ずかしい。

夕食はアンスラート子爵家の両親、デッケン男爵家の両親、ラノフェリア公爵家の当主と娘さんが揃い、賑やかな物だった。

それぞれこの家で一泊してから帰る様だ。

翌朝の朝食後、父上に応接室に呼び出された、部屋に入ると父上と、その正面には昨日結婚式に参加していたラノフェリア公爵家当主と娘さんが座っており、俺は父上の横に座る様言われた。

席の前に行き挨拶をする。

「ラノフェリア公爵様初めまして、私はエルレイ・フォン・アリクレットと申します」

アンジェリカより厳しく教えられた礼節に則って挨拶をした。

「ロイジェルク・ヴァン・ラノフェリアです、こちらが娘のルリア十歳だ」

「ルリア・ヴァン・ラノフェリアです」

ラノフェリア公爵様は、赤い髪がきれいに整えられたイケメンだ。

ルリアさんも、赤い髪が腰まで伸びていてとても美しい、顔立ちは目が少し吊り上がりきつめの印象を受ける、そして何故かこちらを凄く睨んでいる様だ。

「エルレイ、こちらのルリアさんがお前の婚約者となる」

父はにこやかにそう言った。

えっ?確かに婚約者が決まってもいい時期には来ていたが、公爵家と男爵家では身分の差がありすぎるのでは?

「お前が驚くのは当然かもしれないが、ルリアさんは魔法使いだ、お前との相性もいいだろう?」

魔法使い同士の子供が必ず魔法使いになるという事は全く無い様なのだが、迷信的に魔法使い同士を結婚させる風習があるらしい。

そもそも魔法使い同士の子供から確実に魔法使いが出来るなら、もっと魔法使いがいてもいい訳だがそうはなっていない。

「ルリアはラノフェリア公爵家の四女で正妻の子供、身分的には釣り合っていないのは分かっているが、やはり魔法使い同士を結婚させた方が良いだろうと思ってね、エルレイ君受けてくれないだろうか?」

ラノフェリア公爵様はにこやかにそう尋ねて来たが、男爵家の三男がそれを断る事は当然出来ない訳だ・・・。

「はい」

「そうか、ありがとう」

ラノフェリア公爵様は満面の笑みだ。

「エルレイ君は無詠唱で魔法が使える素晴らしい魔法使いだと聞いた、ルリアはこの家に置いていくので魔法を教えてやってくれないか?

それと、君が欲しがっている空間魔法の魔法書を手に入れる事を約束しようではないか」

「それは本当でしょうか!?」

「あぁ本当だとも、ルリアを立派な魔法使いにしてくれた暁にはそれを渡そう」

俺は立ち上がらんばかりの勢いでラノフェリア公爵様に問いかけた、それを見たラノフェリア公爵様はにやりと笑っていた。

空間魔法の魔法書は以前より父上に頼んでいた物だ、転移の魔法とか収納の魔法など記されているらしい。

その為誰にでも手に入れられない様、王城の地下宝物庫にあるとかないとか、噂程度の事しか分かってはいなかった。

未だに使った事がある魔法なら威力や形を変えたりできるのだが、使った事が無い魔法に対しては正しいイメージが出来ないからか使えないでいた。

だから、空間魔法の書は喉から手が出るほど欲しい物だったから即答した。

「ルリアさんを立派な魔法使いにする事をお約束致します」

「ルリアをよろしく頼む」

「はい」

若干、いやかなり餌に釣られた感じだが仕方ないだろう。

ラノフェリア公爵様は終始満面の笑みを浮かべていた、それに比べ、ルリアさんは俺の事をずっと睨んでいた。

「では私はこれで失礼するよ、ルリア元気で頑張ってくれ」

「はい、お父様」

ラノフェリア公爵様を玄関を出て馬車まで見送った。

「エルレイ、ルリアさんの事は任せた」

父上はそう言うと家の中に入って行った。

そこに残されたのは、俺とルリアさんとお付きのメイドの三人だけとなった。

俺は改めて挨拶をする。

「ルリアさん、これからよろしくお願いします」

そう言った所でルリアさんに顔面を思いっきり殴られ、俺は後ろへと倒れこんだ。

とても痛い!最近アンジェリカとの訓練でも打撃を受ける事は少なくなっていたので久々の痛みだ。

ルリアさんは仁王立ちで俺を睨みつけ宣言した。

「私と勝負なさい、私が勝ったら貴方は私の奴隷よ!!」

・・・いきなり勝負、しかも奴隷とか意味が分からない。

「なぜ勝負をしないといけないのでしょうか?」

俺は立ち上がり、殴られた所に回復をかけながらそう言った。

「貴方と結婚したくないからよ!」

なるほど、俺も今そう思いましたよ。

確かに彼女の身分からすると男爵家三男と結婚はしたくないだろう、しかし既に決まった事で撤回は出来ない、だから俺を奴隷か・・・。

「ルリアさんのお気持ちは分かりました、では勝負して私が勝った場合は私と結婚して頂けると?」

「私が負ける事は無いから、そんなことは気にする必要無いわ!」

ルリアさんはこちらを睨み、自信満々な表情だ。

ルリアさんがどれくらい強いのかは分からないが、今まで負けたことが無いのだろう。

勝負して勝つことは多分出来るが、きちんとこちらが勝った時の条件を決めておかないと、うやむやにされそうな気がする。

「勝負はお受けします、但し私が勝利した時は対等な立場でのお付き合いをお願いします」

「分かったわ、最初に言った通り私が勝ったら貴方は奴隷よ!いいわね!」

「はい、構いません」

「リリーに証人になって貰うから、言い逃れは出来ないわよ!」

「分かりました」

メイドさんはリリーと言うのか、銀色の綺麗な髪がポニーテイルに纏められていて、俺より年下に思え非常に可愛い、出来る事ならリリーとの婚約が良かった・・・。

「では訓練場に向かいましょうか、服装は着替えられますか?」

「このままで構わないわ」

ルリアさんはドレス姿だ、動きにくいとは思うがそのままでいいと本人が言ってるからいいのだろう。

「勝負の方法はいかが致しましょう、魔法もしくは剣でしょうか?」

「魔法に決まっているわ、審判はリリーやって頂戴」

「畏まりましたお嬢様」

リリーさんはお辞儀をすると二人の間に入った。

「僭越ながら私が審判を務めさせて頂きます、ルールは降参、もしくは動けなくなった方の負けと致します」

「分かった」

「では準備はよろしいでしょうか?」

「いつでもいいわよ」

「準備は出来ている」

「私が手を下ろしたら始めてください」

リリーが後ろに下がり、手を上げて振り下ろす。

それと同時にルリアさんが詠唱を始めた。

お手並み拝見と行きましょうか。

「全てを焼き尽くす炎よ、我が魔力を糧として火の玉を作り敵を焼き払え、ファイヤーボール」

ルリアさんが呪文を唱え終わるとバレーボール大の火の玉が俺に迫って来る、なかなかの威力と速度を持っている。

俺はそれを障壁を出して受け流す。

「なっ!」

ルリアさんは、まさか受け流されると思っていなかったのか驚いている、だがすぐに次の魔法を唱えた。

「全てを焼き尽くす炎よ、我が大いなる魔力を糧とし炎の嵐で敵を焼き尽くせ、ファイヤーストーム」

ルリアさんは、俺の障壁を見て火の中級魔法ファイヤーストームを撃ち込んできた、それを避けるのは簡単だが、力の差を見せつけるために周囲を囲むように障壁を張りファイヤーストームが消えるまで耐えきる。

ルリアさんは、ファイヤーストームが俺を包むのを確認すると、勝利を確信したのか仁王立ちのまま笑みを浮かべていた。

ファイヤーストームが収まり、俺が無傷で立っているのを見るとルリアさんはとても驚いていた。

「ルリアさんの実力はこんなものなのでしょうか?」

「そんな訳無いわ、まだまだ行くわよ」

ルリアさんは、またファイヤーストームの詠唱を始めた、もしかして二つしか使えないのだろうか?

俺はルリアさんの顔にピンポン玉大のウォーターボールを当て、ルリアさんの詠唱を止める。

「なっ、真面目にやりなさいよ」

ルリアさんは、詠唱を止められたのが気に入らないのか怒っている。

「真面目にやっていますよ、それと今後ルリアさんの詠唱は先程と同じように止めさせて頂きます」

「やれるものなら、やってみなさいよ」

そう言うと、ルリアさんは何度詠唱を止められても必死に続けた・・・何度目かの詠唱を止めた所で彼女は諦めたのか詠唱を止めた。

「卑怯よ、正々堂々戦いなさい!!」

ルリアさんは怒りの表情を浮かべ、俺に怒鳴りつけて来た。

「正々堂々戦っていますよ、私には詠唱が必要無いだけで、ずっと魔法使っているじゃないですか」

「ぐぬぬぬぬ」

ルリアさんにもそれは当然分かっている事だが、納得はしてくれない様だ・・・。

「剣で勝負よ!」

魔法では勝てないと思ったルリアさんは、剣での勝負に変えてきた。

「魔法では私が勝ったという事でよろしいのですか?」

「私は負けていないわ、でも勝負がつかないから剣で決着をつけるのよ」

どうあっても負けを認めたくはないのだろう、まぁ俺もルリアさんを倒したわけでは無いからな。

ルリアさんを魔法で打ちのめす事は簡単だが、婚約者で今後の事を考えると流石にそれは出来ないしやりたくも無い。

「分かりました、剣で勝負を付けましょう、再度お伺いしますがお着替えになった方がよろしいのでは?」

「問題無いわ」

「では剣を取ってまいります」

家に戻り、訓練用の剣を取り戻ってルリアさんに一本渡す、ルリアさんは何度か素振りをして感触を確かめていた。

「剣の感触はよろしいでしょうか?」

「構わないわ、ルールは先程と同じ、リリー合図を」

リリーさんは頷き、手を上げ振り下ろした。

ルリアさんは開始と共に、ドレスとは思えない速度で踏み込んで剣を撃ち込んできた。

「ギィン」

金属の擦れる音と共にそれを受け流し距離を取る。

「なかなかの打ち込みでした」

「まだまだ行くわよ」

ルリアさんは先程と同じように間合いを詰め、先程とは違い素早い連撃を放ってきた。

「ギンギンギンギン」

連撃をすべて剣で受け止めまた距離を取る。

ルリアさんの剣の腕前はなかなかの物だ、兄達では相手にならないだろう。

だがアンジェリカほどではない、これは経験の差が出る所だろう。

「ルリアさんほどの強さを持っていれば分かると思いますが、今の貴女では私に一撃を与える事は出来ないでしょう、私も貴方を傷つけたくありませんので降参して頂けないでしょうか?」

「私はまだ負けていないわ!」

「ギンギンギャンギンギンギャン・・・」

ルリアさんはその後も剣を振るい斬りかかってきた、俺はそれを受け流し続け・・・ついにルリアさんが疲れ果てしゃがみこんでしまった。

ルリアさんは肩で息をして俯いている。

「ルリアさん提案がございます」

「・・・はぁはぁ・・・なによ」

「今回は引き分けと言う事に致しませんか?」

「嫌よ!」

座り込んでなお俺を睨む目は鋭かった。

「ルリアさんは私を倒せない、私は貴方を傷つける事が出来ない、故に引き分けです」

「なによ、私が女だから?公爵令嬢だから?それで手を抜いたの?」

ルリアさんは相当お怒りだ、ここで受け答えを間違うと更に怒らせそうだ。

「いえ違います、私は家族を大切に思っております、ルリアさんは私の婚約者で家族になる方ですから傷つけられないのです」

ルリアさんは俯いたまま黙り込んでしまった。

「・・・・・・エルレイだったわね」

「はい」

「今回は貴方の提案を受け引き分でいいわ」

「ありがとうございます」

「それと今後私の事をルリアと呼ぶように、後敬語もいらないわ」

これは彼女に認められたと考えていいのだろうか?

「分かったよルリア」

そう言ってしゃがんでいるルリアに手を差し伸べた。

ルリアは暫く思案した後、俺の手を取り立ち上がりながら反対の手で顔を殴ってきた。

しかし強くはなく痛みもほとんどなかった。

「エルレイ、貴方とは引き分けたのだから対等な立場よ、それと私に魔法を教えなさい」

「あぁ分かったよ、ルリア改めてよろしく」

そう言って微笑むとルリアも笑みを返してくれた、この時初めてルリアの事を可愛いと思えた・・・。


ルリアとの勝負が終わり、昼食のため三人で玄関に向かった所で、ヴァルト兄さん達が出発の準備をしていた。

「ヴァルト兄さんもう出発されるのですか?」

「あぁもうすぐ準備が終わる、そちらのお嬢さんは?」

「私の婚約者、ルリアです」

「ヴァルト・フォン・アリクレットだ、ルリアさんよろしく」

「ルリア・ヴァン・ラノフェリアよ」

「ルリアさんのお噂はお伺いしております、炎の魔法使いにして剣術にも優れているとか、しかし今回は相手が悪かったようですね」

「ふんっ!」

ルリアは腕を組みそっぽを向いた。

「ヴァルト兄さん、今回とは?」

「あーまぁエルレイの事だから勝負には勝ったんだろ、つまり婚約者になった相手をことごとく負かし、相手から婚約破棄を言い渡されていた訳だ」

「なるほど・・・」

それで公爵家から男爵家三男の所に来る事になった訳か・・・つまりじゃじゃ馬を押し付けられたと。

「ルリアさん、エルレイは生意気で何でも出来るが、家族思いで俺の可愛い弟だ、よろしく頼む」

ヴァルト兄さんは頭を下げた、生意気の件は要らなかったと思うが・・・まぁヴァルト兄さんからすればそうなのだろうか。

「ふんっ!」

ルリアは先程の婚約破棄の辺りから機嫌が良くない。

「ヴァルト兄さんすみません」

「なに構わないさ、そろそろ準備が終わったようだな、エルレイ暫く会えないが元気でな」

「ヴァルト兄さんもお元気で」

そこにイアンナさんも近寄ってきた。

「エルレイ君、短い間だったけどまたね、今度会った時はゆっくりお話ししましょう」

「はい、イアンナ姉さんもお元気で」

「楽しみにしてるわね」

二人は馬車へと乗り込んで行った、家族と使用人全員でヴァルト兄さんとイアンナ姉さんを見送った。

少し寂しくなるな、周りを見渡すとマデラン兄さんが一番寂しそうにしている様だった。

二人で喧嘩はよくやっていたがやはり仲が良かったんだな・・・。

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