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公爵令嬢の婚約者  作者: よしの
第一話 アリクレット男爵家
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第二十六話 平和な大陸

リアネ城の玄関に戻ってきた俺はリアネ城を見上げ、皆で無事戻って来れた事を安堵した。

「無事帰ってこれましたね」

「そうね、しばらくゆっくりしたいわね」

リリーとルリアも笑顔でリアネ城を見上げていた。

「中に入って、皆に帰って来た事を報告しよう」

俺が城に入ろうとすると、ルリアに手をつかまれて止められた。

「エルレイは先に、ユーティアを連れてきなさい」

ルリアに言われて気が付いた、確かに王都にいるユーティアとエルミーヌを連れて来ないと、皆揃わないからな。

「そうだな、行って来るよ」

「お願いね」

ルリア達と別れて、王都のロイジェルク様の別邸へとやってきた。

ベルを鳴らし、執事に扉を開けてもらい、ユーティアがいるところに案内してもらった。

「ユーティア様、エルレイ様がお越しです」

執事が声をかけると、中から扉が開かれて、エルミーヌが向かい入れてくれた。

部屋に入るとユーティアは椅子に座り、資料をまとめているようだった、俺が傍に行くと書いていた物を仕舞って、見せてはくれないようだ・・・。

あの資料に貴族の情報が書かれているのだろうと思うと、少し見てみたい気もするが、見ても顔も名前も知らないような人達の情報だろうからな、知らない方がいいのかもしれない。

「ユーティア、エルミーヌ、ただいま」

「エルレイ、お帰りなさい」

「エルレイ様、お帰りなさいませ」

俺が席に座ると、エルミーヌがお茶を入れてくれた。

俺はエルミーヌが入れてくれたお茶を飲んで一息ついた・・・。

「ユーティア、何も用事がなければリアネ城に帰ろうかと思うが、どうだろう?」

「えぇ、問題無いわ、荷物をまとめる間、少し待って頂戴」

ユーティアがそう言うと、エルミーヌが荷物をまとめ始めた。

「エルレイがここに来たと言う事は、戦争は終わったのかしら?」

「戦争自体はほぼ終わった、これから事後処理が大変になるが、危険はなくなったから安心してくれ」

「それは良かったわ」

ユーティアは戦争が終わったと聞いて、安心しているようだった。

「詳しい話は帰ってから話すよ」

「お願いね」

ユーティアと話している間に、準備は整ったようで、二人を連れてリアネ城へと戻ってきた。

「俺はアドルフに報告してくるから、先に部屋に戻っていてくれないか」

「分かったわ」

「承知しました」

二人と別れて、アドルフがいる執務室へとやってきた。

「アドルフ、ただいま」

「エルレイ様、お帰りなさいませ」

さすがに今回はアドルフも心配していたのか、俺の顔を見てアドルフは安堵の表情を浮かべていた。

「戦争は無事終わり、ミスクール帝国はキュロクバーラ王国によって滅ぼされた、まだ各地の鎮圧が残っているが、それは俺の仕事ではないからな」

「そうでしたか、それでリースレイア王国はどうなったのでしょう?」

「現状維持だな、しかも今回俺が援助に向かった時の条件に不可侵条約の締結も含まれていたので、全ての国がどこにも侵攻できず、平和になったと思う」

それを聞いてアドルフは喜びの表情を見せていた。

「さすがエルレイ様です、この大陸を制覇したのですね」

「アドルフ、俺は別に大陸全土を制覇した訳ではないぞ?」

ルフトル王国、キュロクバーラ王国、リースレイア王国、ソートマス王国、この四ヵ国が仕切っていて、俺はソートマス王国の侯爵でしかないのだから。

「いえ、エルレイ様は全ての国に多大な影響力を持っております、制覇したと言っても過言ではないでしょう」

いくら俺が言ってもアドルフは意見を変えないだろうから、この事はいいとしよう・・・。

「それと、まだ正式に決まった訳ではないが、キュロクバーラ王国から旧ラウニスカ王国の領土を全て貰う事になっている」

「はい、その事はロイジェルク様よりお聞きしております、そのための準備もすでに進めておりますので、ご安心ください」

ロイジェルク様は既に動いてくれているようだな、俺は領土を貰って来るだけで、後の事は心配する必要なさそうでよかった。

貴族に知り合いがいない俺では、新しい領土の管理をする貴族を探せないからな、募集して変なのが来ても困るし、ロイジェルク様にはお礼をしなければならないだろう。

「分かった、人を魔物に変える魔石はもう作られないようにしてきたが、今まで作られていた分に関しては不明だ、多分大丈夫だとは思うが、他所から来る荷物の確認は暫く厳重にしてくれ!」

「承知しました」

ミスクール帝国軍が持っていた分と、キュロクバーラ王国に運び込まれようとしていた分で最後だと思いたいが、残っている可能性もあるからな、人が魔物にされてしまってからでは遅いので、しばらく用心しておいた方がいいだろう。

「こちらからは以上だ、アドルフからは何かあるだろうか?」

「はい、エルレイ様が留守の間、問題はございませんでした」

「それは良かった」

「ただ、今後この城の使用人を、新しく貴族になられる所に少し配属しなくてはならなくなりました、それで不足した人数を新たに募集したいのですが、その許可をお願いします」

さすがにロイジェルク様の所の使用人を、また融通してもらう訳にはいかないか、それは仕方のない事だろう。

「それはもちろん構わない、俺はアドルフを信用しているから、使用人の雇用に関して俺に許可を取る必要はないぞ」

「そう言うわけには参りません、使用人の雇用に関しましては、エルレイ様の許可なく出来ません」

「まぁそうか、俺達のために働いてくれる人の事を、知らないで雇う訳にも行かないか」

「はい」

「それで、またパーティでも開いて集めるのだろうか?」

前回ロイジェルク様のパーティで集めたから、同じような事をするのだろう。

「いえ、さすがに前回のでいい人材は集めましたので、あまり残っていないのです」

「それもそうか、それならどうするのだ?」

「はい、街で募集をしてみようと思います」

「街で募集か、良いんじゃないのか、ホルフィーナの執事の様に、アイロス王国の貴族に仕えていた有能な人材が見つかるかもしれないからな」

「はい、では明日から領内の街に募集をかけて見ます」

「よろしく頼む、それと、ロイジェルク様に無事帰って来た事を伝えといてくれないか、陛下にも報告しないといけないから、謁見できるようお願いしておいてくれ」

「承知しました」

アドルフに報告が終わり、皆が待つ部屋へと戻って行った。

扉を開け、部屋に入るなり、アルティナ姉さんに抱きしめられた。

「エルレイ、お帰りなさい!」

「アルティナ姉さん、ただいま」

アルティナ姉さんの温かさに包まれて、帰って来たんだなと実感した。

「エルレイ、何処も怪我して無いわよね?」

「大丈夫、何処も怪我して無いよ」

「良かったわ」

アルティナ姉さんは、さらにぎゅっと抱きしめて来る。

ずっとこうしていたいが、それが叶わない事はアルティナ姉さんも分かっている・・・名残惜しそうに俺から離れて行った。

俺はヘルミーネの所へ向かい、抱きしめた。

「ヘルミーネ、留守中問題は無かったか?」

「うむ、問題無かったぞ、しかし、エル達が良い事をしていたのは見ていたぞ!」

ヘルミーネは毎日俺達の事が心配で、鏡の魔道具で見ていたのだろう、多分俺たちが遊んでいたのを羨ましそうに見ていたのだろうな。

「そうか・・・ヘルミーネもやってみたいか?」

俺がそう聞くと、ヘルミーネは目を輝かせてこちらを見ていた。

「勿論やってみたいぞ、エルの事は大好きだからな!」

大好きと言われては、やらない訳には行かないだろう。

「俺もヘルミーナの事は大好きだぞ!」

ヘルミーネにそっと口づけをした。

時間にして十秒も無かっただろう、ヘルミーネは満足した様で、顔を離しニヤニヤと口づけの感触を思い出して楽しんでいる様だった。

次はヘルミーネの横にいたラウラを抱きしめる。

「ラウラ、ただいま」

「エルレイ様、お帰りなさいませ」

ラウラは泣いている様で、体が震えていた。

「心配かけてしまった様だね」

「いえ、その様な事はございません、エルレイ様が無事戻られた事を嬉しく思うのです」

「そうか、俺もラウラとこうして抱き合えてうれしいよ」

「はい・・・はい」

俺が体を少し離すと、ラウラは少し屈んでくれた、それでも俺は少し背伸びをして、ラウラと口づけを交わした。

ラウラとの口づけは、俺の体に温かい物が流れてくるような感じがして、心が穏やかな気持ちになる。

ラウラとの口づけが終わると、ラウラも同じ気持ちなのか、穏やかな表情をしていた。

ラウラの所を離れて、ロレーナの前に移動した、

「ロレーナ、ソル、ただいま」

「お帰りなのじゃ」

「「お帰りだワン」」

元気に尻尾を振っているソルの頭を撫でてやると、じゃれてきて非常に可愛い。

ウィルが出て来てソルと遊び始めたので、俺はロレーナと向き合った。

ロレーナと見つめ合うと、皆の前で口づけをするのが恥ずかしいのか、顔を赤くしてもじもじしていた。

「ロレーナ、いいだろうか?」

「も、もちろん、いいに決まっているのじゃ、わ、私はお姉さんだからな、そうだ、お、お姉さんだから、エルレイには私からしてやるのじゃ」

ロレーナはそう言ったが、一向に顔を近づけてくる様子はない。

「ロレーナ、こう言うのは男性からする物だからな」

「そ、そうじゃな、よ、よろしく頼むのじゃ」

ロレーナにそっと口づけをすると、ビクッっとしてかなり強張っている様だったが、口づけしたまま優しく抱きしめてやると、緊張がほぐれたのか、俺に体を預けて来てくれた。

ロレーナからそっと体を離すと、先程より顔を赤く染めたロレーナが幸せそうな笑顔をしていたので、思わずもう一度抱きしめてしまった。

愛らしいロレーナだけ贔屓する訳には行かないので、体を離してエンリーカの所に行った。

「やっと私の番ですのね」

「エンリーカ、待たせたね」

俺はエンリーカを抱きしめると、エンリーカも抱きしめてくれた。

抱きしめ合ったまま、俺は背伸びをして、エンリーカと口づけを交わす。

エンリーカは堂々としていたので、恥ずかしく無いのかと思ったが、それは違っていた様だ。

顔を離すと、エンリーカの顔は真っ赤になっていた。

「エンリーカは可愛いな」

「なっ、と、当然ですわ!」

このまま、またエンリーカを抱きしめようとしたら、エレオノラが俺に抱き付いて来た。

「次は私の番です!」

エンリーカとエレオノラが少し睨み合っていたが、いつもの事だな、この四姉妹は常に競争し合っているような感じだ、そういう風に育てられたと言うのが正解だろうか・・・。

「エレオノラも可愛いよ」

「はい、エンリーカより可愛いです」

ここでエレオノラの方が可愛いと言うと、問題が起こるので、俺は答えずに口づけする事で誤魔化した。

エレオノラは美しいと俺は思っているのだが、それを言うと残りの三人が言い争いを始めるので黙っている。

エレオノラから離れて、改めてエレオノラの姿を見ると、やはり四人の中では一番美しい。

俺がエレオノラに見とれていると、横から衝撃を受けた。

「何時までエレオノラを見ているんだよー」

やや怒っているリディアの頭を撫でてやると、表情は笑顔に戻った。

「リディアは大人しくしていたのだろうか?」

「毎日訓練していたよー、だから今度は私も連れて行ってよねー」

多分もう戦争は無いと思うが、出掛ける時連れて言ってやればいいだろうか・・・。

「しっかり訓練していれば、連れて行くよ」

「約束だからねー」

リディアはそう言うと俺に口づけをして来た、リディアが勢いよくして来たので多少痛かったが、リディアらしいからいいのだろう。

「えへへ、ちょっと痛かったー」

リディアは笑顔でそう言って離れて行って、入れ替わる様にエミリアがやって来た。

「やっと私の番」

「エミリア、ただいま」

「うん、お帰り」

エミリアを抱きしめながらそっと口づけをする、エミリアは俺より身長が低い数少ない相手だから、とてもやりやすかった。

その分俺も余裕を持って相手が出来て、エミリアの唇の柔らかさと可愛さを堪能する事が出来た。

「エルレイ、大好き!」

「エミリア、俺も大好きだよ」

エミリアの頭を撫でてやると、とても嬉しそうにしていた。

エミリアの頭を撫で終え、ユーティアの前に立った。

「エルレイ、正面から見つめ合うのは恥ずかしいわね」

ユーティアは珍しく表情を変え、恥ずかしそうにしていた、確かに恥ずかしいが、それよりユーティアの表情が可愛くてずっと見つめていたい気分になる。

「ユーティア、好きだよ」

「エルレイ、私も好きよ」

しばらく見つめ合ってから、口づけを交わした。

ユーティアは直ぐに離れて行った、公爵令嬢として、こう言うのは長く続けるものでは無いのだろうか?

本人から離れて行ったので構わないのだろう、さて次はエルミーヌだ。

エルミーヌに抱き付いて胸に顔を埋めたいが、それをやってしまうと皆から冷たい目線で見られるので何とか我慢する。

「エルミーヌ、ただいま」

「エルレイ様、お帰りなさいませ」

エルミーヌに抱き付き、胸の柔らかな感触を楽しみながら、口づけをした。

「エルミーヌ、仕事には慣れて来ただろうか?」

エルミーヌは元貴族令嬢でメイドになったばかりだ、色々困る事があったりするのでは無いだろうか?

「大丈夫です、お母様から使用人として働く様躾けられてきましたので」

「そうか、でも困った事があれば皆に相談するのだぞ」

「はい、ありがとうございます」

名残惜しいがエルミーヌから離れて、マリーの所へといった。

するとマリーは泣きそうな表情で抱き付いて来た。

「マリー、心配かけてしまった様だね」

「いえ、エルレイ様が無事お戻りになられましたので、安心致しました」

マリーは泣いてしまったため、暫く抱きしめ頭を撫でてやった。

マリーは泣き止むと顔を上げ微笑んで来た、俺も優しく微笑みかけ、口づけをした。

「マリー、好きだよ」

「エルレイ様、私も好きです」

マリーは再び涙をこぼしていたので、抱きしめたやろうと思ったが、大丈夫ですと離れて行った。

これで全員と口づけを交わしたかなと思って、ソファーに座ろうとすると、アルティナ姉さんに抱きしめられた。

「お姉ちゃんとは、まだして無いわよ!」

そう言えば、部屋に入った時抱きしめられたが、口づけは交わしてなかったな。

「アルティナ姉さん」

俺が顔を上げると、アルティナ姉さんは優しく口づけをしてくれた。

アルティナ姉さんはなかなか離してくれず、暫く抱き合っていると、久々にルリアに引き剥がされた。

「何時までやっているのよ!」

「だって私で最後でしょう、次の人がいないからいいじゃない」

なるほど、それでアルティナ姉さんは最後にしたのか・・・。

「限度って物があるでしょ!」

「そうだな、お腹もすいて来たし夕食にしよう」

久々に全員揃っての夕食で、楽しく食べる事が出来た。

夕食後お風呂に入って、皆で寛いでいる時に今回の出来事の詳細を話した。

「お父様達の領土が増えたのですね!」

エンリーカ達四姉妹は、キュロクバーラ王国の領土が増えたととても喜んでいた。

「エンリーカ、まだ正式に決まったわけでは無いが、王様からラウニスカ王国の領土を貰う事になっている」

「そうでしたのですね、それでもお父様とエルレイの領土が増えた事には変わり無いのでしょう」

「そうだな、そしてすべての国と不可侵条約を結ぶ事になるだろうから、これ以上戦争が起きる事は無いので安心してくれ」

皆戦争が無くなると聞いて、とても喜んでいる様だったが、リディアだけは不満な表情を見せていた。

「エルレイは私に嘘をついたなー」

「嘘はついて無いと思うが・・・」

「だってそうじゃないかー、今度は連れて行くと約束したのに、戦争は無いんじゃないかー」

「確かに戦争は無いが、小競り合いはあるかも知れない、その時は絶対連れて行くよ」

「うぅー」

リディアはまだ納得してくれない様で唸っていた。

「それに戦いの場が無い訳では無い」

「そうなのか!」

リディアは立ち上がり期待の眼差しを向けて来ていた。

「もうすぐ、武闘大会が開かれるからな、リディアはそれに出場するといい」

「武闘大会!出ていいのか!」

「俺はいいと思うぞ、エンリーカ、構わないよな?」

「構いませんわ、お父様は率先して出場しろとおっしゃるでしょうし、その事を知ったら兄様達も出場するかも知れませんよ」

そうだな、あの血の気の多いマティアスの弟達は出場しそうだが、今は忙しくて無理だろう。

「やったー」

リディアは飛び上がって喜んでいた、アドルフも前回ルリアが出場したから止めはしないだろう。

「それで俺は、暫く各国の調整をしないといけないだろうから、また出かける事になる」

「そうね、私も着いて行くわよ!」

ルリアも着いて来る様だな、俺の監視をまだ続けるようだ・・・。

「分かった、ルリアとリゼに着いて来てもらう事にするから、またしばらく留守を頼む」

皆もルリアが着いて来るのには納得しているのか、特に反対する声は上がらなかった。

その後は雑談をしてから就寝となった。


翌朝、出掛けていた間に溜まった書類をかたずけるべく、執務室へと向かった。

「アドルフ、おはよう」

「エルレイ様、おはようございます」

「今日の予定は何かあるだろうか?」

「はい、午後より陛下への謁見の許可が得られたと、ロイジェルク様よりご連絡が御座いました」

「それは良かった、早い所片付けてゆっくりしたいからな」

「それと本日より、昨日許可を頂いた使用人の募集を領内の街で始めました、集まってきた人材の試験は私達で行いますが、最終的にエルレイ様に面接を行って頂きます」

「分かった、グールで調べればいいのだな?」

「よろしくお願いします」

「マスター、俺様もう少しまともな使われ方をしたいと思うぜ・・・」

「十分まともな使い方だと思うぞ」

「はい、グール様の素晴らしい能力によってエルレイ様の安全が確保されるのです、これ以上の事は無いでしょう」

「そうか、まぁ当然だな!俺様に任せておきな!」

グールはアドルフに褒められてまんざらでもない様子だ、それがたとえアドルフの策略だとしても・・・。

「次の武闘大会の開催はどうなっている?」

「はい、前回の反省した個所の修正は完了しております、ただ、女性の治療魔法の使い手が見つからず、奥方様のお手を煩わせる事になり、申し訳ございません」

「それは気にしなくていい、本人もやる気がある様だしな」

「それと今回貴族を招待しておりませんが、よろしいのでしょうか?」

「今回はグループ分けの順位戦だし、貴族を呼ぶのは年一回の一番大きな大会の時だけでいいだろう、見たい人は来て貰っても構わないが、そこは個人の判断に任せよう」

「承知しました」

貴族を呼べばパーティーを開かないといけない、面倒な挨拶とか極力やりたく無いので年に一回で十分だ・・・。

「後、武闘大会にリディアが出場する、上級の所に登録しておいてくれ」

俺がそう言うとアドルフは眉をひそめていた。

「奥方様の出場は遠慮して頂きたいのですが・・・」

「リディアはキュロクバーラ王国の王女だ、既に王様の許可は得ているので断る事は出来ないぞ!」

王様の許可はまだ貰っていないが、話せば許可を出してくれる事は間違いないだろうからな。

「・・・承知しました」

アドルフは王様の許可だと聞いて、しぶしぶ了承してくれた。

少しアドルフに申し訳ない気持ちになったが、リディアに嫌われたくないからな・・・。

その後は資料に目を通して、判子を押す作業を午前中行った。

午後はルリアとリゼを連れてロイジェルク様の館へ行き、ロイジェルク様と共に王都へ転移して、城へと向かう馬車へと乗り込んでいた。

「エルレイ君、ルリア、無事戻ってきてくれてよかった」

ロイジェルク様はルリアの姿を見て笑みを浮かべ、安心しているようだ。

「無事戻ってこれたのも、ロイジェルク様に支えていただいた結果です」

ロイジェルク様に陛下から親書を書いてもらってなかったら、キュロクバーラ王国は動いてくれなかっただろうし、最悪俺達だけでミスクール帝国を滅ぼして居座ってたかもしれないからな。

その様なことになってたら、リアネ城はロイジェルク様に任せて、アドルフ達を連れて来て統治をしようと思っていた。

そうならなくてよかったのだがな。

「うむ、大したことはしておらんがな、それより魔石の制作場所は押さえたのか?」

「はい、吸魔石を発見し、グールを使って破壊しました、その後研究所を全て燃やし、そこの責任者も倒しましたので、今後二度と作られる事は無いと思います」

「そうか、それを聞いて安心した」

俺もロイジェルク様も、そのことが一番の懸念だったからな、今後同じようなことは起こらないとは思うが、注意しておいた方がいいのかもしれないな。

馬車は城へ到着し、今日も陛下の執務室へと通された、リゼには申し訳ないが扉の外で待機してもらった。

部屋に入ると、陛下はいつものように忙しそうに机で作業をしていた。

「陛下、ミスクール帝国より戻ってまいりました」

「エルレイ、ご苦労だった、掛けてくれたまえ」

ソファーに座ると、陛下もこちらに来て座った。

そこで俺は今回の戦争の詳細を陛下に説明した。

「エルレイ、よくやってくれた、これでこの大陸から争いごとが無くなったと言う事だ!」

陛下は大いに喜んでいた、戦争の脅威に怯える必要がなくなったのだからな。

これで俺もゆっくりと過ごせるわけだ・・・。

「エルレイにはもうしばらく働いてもらう、全て事が終わり次第、エルレイには改めて褒美を与えることとするからな」

「ありがとうございます」

褒美なんていらないんだけど、受け取らないと陛下の体面に関わるから、拒否することは出来ない・・・。

「エルレイ、ルフトル王国、リースレイア王国、キュロクバーラ王国の三か国から、この四枚の書面にサインを貰って来てくれ」

陛下から差し出された書類は四枚とも同じ内容が記されている。

内容は今後戦争をしませんよという事と、破った場合全ての国が敵になりますよと言う事が記されていて、後はサインを貰えばいいだけになっている。

「後これも渡してくれ」

「お預かりいたします」

陛下から三つの親書を受け取った、渡す相手を間違えない様にしないとな。

「では各国と連絡が取れ次第行って参ります」

「頼んだぞ」

陛下の執務室を出て帰る事となった、ロイジェルク様を館まで送り届けて、リアネ城へ戻って来た。

今日は連絡を取って、明日以降伺う事になるからな。

「エルレイ、私は訓練に行って来るわね」

ルリアは帰るなりリゼと共に訓練に行った、もう戦争は無いが日々の訓練を怠る事は出来ないからな、俺も行きたかったがまだやる事があるからそれは出来ない。

取り合えず執務室へ向かい、その後連絡する事にしよう。

「アドルフ、ただいま」

「エルレイ様、お帰りなさいませ」

「これから各国に連絡し、明日以降行って来る事になる」

「承知しました」

「それと宝物庫は使っているのだろうか?」

「いえ、現在使用しておりません」

「それならよかった、ミスクール帝国軍を降伏させた際に武装解除をさせた、その武器や魔導具を回収して来たので、宝物庫に一時保管していいだろうか?」

「構いません、そちらの処理は私共で行ってよろしいのでしょうか?」

「頼む、ただ魔導具が安全かどうかは分からないから、それは後で俺が確認しておく」

「承知しました」

「では、各国と連絡を取る事にする」

「はい」

さてまずはリースレイア王国からだな、三か国の中で一番行きたくない国だから、最初に片付けておきたい。

王様に近い人と連絡を取らないといけないが、生憎ソートマス王国に使者として来ていたノーリッシュしか念話で連絡を取れる者はいない、彼は多分まだ防衛任務に就いている事だろうが仕方が無い。

『ノーリッシュ、エルレイだ』

『エルレイか、どうかしたのだろうか?』

『リースレイア王と面会をしたいのだが、どの様にしたらいいだろう?』

『そうだな、エルレイが来る日時を教えて貰えば、街の門に迎えの馬車を用意させよう』

『助かる、では明日の朝伺ってもいいだろうか?』

『分かった、用意させておこう、陛下への話はミスクール帝国に関する事だろうか?』

『そうだ、どうせすぐ分かる事だから教えておこう、ミスクール帝国はキュロクバーラ王国によって滅ぼされたぞ』

『なんだって!!それは本当の事か!!』

ノーリッシュの表情は念話で分かる事は出来ないが、凄く驚いている事だろう。

『本当だ、故にリースレイア王国にミスクール帝国が攻めて来る事は無いぞ』

『それが本当の事ならとても喜ばしい事だが・・・ちょっと待てよ、もしかしてエルレイはキュロクバーラ王国と共に攻め込んだのか?』

『もちろん攻め込んだぞ、キュロクバーラ王国とは戦争に協力するという条約を結んでいたからな、悪く思うなよ。

リースレイア王国軍にミスクール帝国を滅ぼせる様なら、そのまま帝都まで俺も着いて行ったが、そうでは無かったからな』

『確かにこちらの軍勢では攻めきれなかったが・・・』

まぁノーリッシュが納得出来ない気持ちは分かるが、ろくに敵の情報を調べないで攻め込もうと判断した上が悪いのだと思う。

しかし、あのままミスクール帝国を滅ぼさなかったら、間違いなくリースレイア王国は滅んでいただろうからな、あの城塞都市に集められていた軍勢をリースレイア王国軍では守り切れなかっただろう。

『その事は明日正式にリースレイア王に伝える、それまでは内密にしておいてくれ』

『分かった・・・』

次はキュロクバーラ王国と連絡を付けないといけないな、まだミスクール帝国の掌握に奔走しているだろうから、王様といつ会えるか分からない。

『マティアス、今いいか?』

『エルレイ、構わないぞ』

『王様に面会したいのだが、都合がいい日はあるだろうか?』

『王は今ミスクール帝国の城を根城にして、毎日各地を飛び回っている、夜でいいならいつでも構わないぞ』

『分かった、では明日の夜に伺う事にするよ、転移する場所は城門前で構わないだろうか?』

『構わない、転移してくる前に俺に連絡をくれ』

『分かった』

意外と早く王様に会う事が出来る様で助かった、最後はルフトル王国だ、女王様にはいつでも会えるから、空いている明日の午後に会いに行こう。

『ソフィアさん、エルレイです』

『エルレイ様、こんにちは』

『明日の午後、女王様と面会したいのですがよろしいでしょうか?』

『えぇ、構いませんよ、女王様はエルレイ様がいつ来るのかと、気をもんでおりましたから』

女王様はどの様な状況になっているのか分かっているのだろうからな・・・。

『それは申し訳ございませんでした』

『エルレイ様が謝る事ではありません、単に女王様は話し相手が欲しいだけですから』

『分かりました、では明日はロレーナも連れて行きましょう』

「それはとても喜ぶと思います』

『では失礼します』

『はい、お待ちしております』

女王様は千五百年あの場所にいるのだろうから、それは話し相手が欲しいのはよくわかる。

夜まで予定は無いから、ゆっくり話をする事にしよう。

「アドルフ、午前はリースレイア王国、午後はルフトル王国、夜にキュロクバーラ王国に行って来る、それでキュロクバーラ王国に食料を援助したいのだが用意できるだろうか?」

「はい、明日の午後までになら用意できます、他の国へは必要御座いませんか?」

「そうだな、リースレイア王国には不要だが、ルフトル王国に果物を用意できるだろうか?」

「承知しました、ルフトル王国に行く前までに用意いたします」

「急がせて済まない、よろしく頼むよ」

さて、明日の準備は整ったので、目の前に積み上げられた書類を片付けて行く事にした・・・。


翌朝ルリアとアルティナ姉さんの服を着たリゼを連れて、リースレイア王国の王都の街の外に転移してやって来た。

リゼとロゼの服は、アルティナ姉さんが留守中に頼んでいてくれた様だが、まだ出来上がっていなかった。

街の門に行き用件を伝えると、門の中に用意されていた馬車に乗せられ城へと城へと送られて行った。

城に着くと待たされる事無く謁見室へと通された。

「王様、お久しぶりです」

王様の前に跪いて挨拶をした。

「面を上げよ、エルレイ、久しいな」

顔を上げ王様の表情を見ると、少しやつれているような印象を受けた。

「ソートマス王より、親書を預かって参りました」

親書を差し出すと、文官によって王様に渡され、今回は親書をきちんと読んでいる様だった。

そう言えば周りにいる文官たちの数が少ないような気がするな、今は戦争中だったから忙しくていないのだろうか?

それは良いとして、親書を読む王様の表情がどんどん険しい物へと変わって行った。

「なんだと!エルレイ!ミスクール帝国がキュロクバーラ王国によって滅ぼされたのは本当なのか!」

王様は俺を睨みつけ大声で聞いて来た。

「その通りです、ですのでリースレイア王国が攻め込まれる事は無くなりました」

俺は出来るだけ笑顔でそう答えた。

「ぐぬぬぬぬぬ・・・・」

リースレイア王国としては自分たちが奪うはずだった領土を、キュロクバーラ王国に取られて悔しいのだろうが、現状ミスクール帝国に滅ぼされかけていた所を、キュロクバーラ王国に救って貰った形になるので、文句が言えないのだろう。

「用件はそれだけか!」

親書に全部書いてあると思うが全部読んでいないのだろうな・・・面倒くさいが説明しないといけない様だ。

「いえ、前回私がリースレイア王国に助力した際の契約に署名をお願いします」

「契約だと!」

「はい、ソートマス王国、ルフトル王国、キュロクバーラ王国の三か国と不可侵条約を結ぶという事です」

俺が説明すると、王様は複雑な表情を浮かべていた。

領土を増やしていない状態で結びたく無いだろうが、それを拒否するという事は三か国を敵に回す事になる。

周りの文官たちもそれは十分わかっているだろうから、返答をしない王様の事を心配そうに見ていた。

「・・・・・・分かった、署名しよう」

王様は力なく答えた、俺は文官に署名して貰う四枚の紙を渡した。

それを王様の元へ運んで貰い、署名して貰った物を再び受け取り、四枚とも署名されているのを確認した。

「ありがとうございます、全ての署名がなされた物を再びお持ちします」

「うむ・・・」

王様は心ここにあらずといった感じだ、この国が今後どうなって行くのかは俺の知った事では無いな、役目が終わったからさっさと帰る事にしよう。

「失礼します」

謁見室を出て、帰る為に廊下を歩いていた。

「文官の数が少なかったわね」

「ルリアもそう思ったのか、戦争で忙しかったのでは無いのか?」

「そうだといいけど、逃げ出したのでは無いかしら?」

ルリアはそう言うが、文官ってそう簡単に逃げ出したり出来るのだろうか・・・。

例えばアドルフ達が逃げ出したとすると、俺は警備隊に確保するよう命令を出すだろう。

しかし、アドルフ達が俺の元から逃げ出すような状況になっているという事は、警備隊も俺の言う事を聞かない可能性が高いな、という事は逃げられてしまうのか・・・。

「なるほど、俺はあのような君主にならないよう気を付けなければならないな・・・」

「そうね、でも大丈夫よ、エルレイがそうなったら私がエルレイを引きずり下ろすわよ」

「そうしてくれると助かる」

ルリアがしっかりしてくれているので、俺がどうなっても大丈夫だな。

「馬鹿ね、そこはそうならないと答えるところでしょう!」

「そう答えないのが、エルレイ様らしいです」

「それもそうかもね」

ルリアとリゼは笑っていたが、ルリアが言ったように答えるべきだったのだろうか・・・まぁ二人が笑っているからあの答えでよかったのだろう。

城を出て、馬車で街の外まで送って貰った俺達は、人に見つからない所でリアネ城へと転移で戻って来た。

意外と早く終わったので、ルリア達と訓練をして、午後はルリア、ロレーナ、リリー、エンリーカ、リゼ、ロゼとルフトル王国の結界前へとやって来ていた。

ロレーナを連れて行くと言うと、エンリーカがシルクの勉強のために着いて行くと言い出したので、それならばとリリーとロゼも着いて来た訳だ。

『ソフィアさん、ただいま結界前に着きました』

『エルレイ様、少々お待ちください』

暫く待つとソフィアさんが現れて来て、結界内へと入れてくれた。

「今日は人数が多いですね」

「ソフィアさん、エンリーカ達はシルクの勉強に来たので、見学させて貰っても構わないでしょうか?」

「構いませんよ、後で送って行きますね」

「それには及びませんわ、許可を頂ければ私達だけで向かいますわ」

「よろしいのでしょうか?」

「本人たちが言ってるので構いません」

「分かりました、ではエルレイ様、お城へ参りましょう」

俺達はエンリーカ、リリー、ロゼと別れて、女王様の所へ向かった。

「ソフィアさん、果物を持ってきたので皆さんで食べてください」

「あら、いつもありがとうございます」

女王様の部屋に行く前に台所の方に行き、アドルフが用意してくれた果物を置いて女王様の元へと向かった。

部屋に入った俺達を女王様は笑顔で迎え入れてくれた。

「エルレイ、それから皆さんも、この大陸に平和をもたらしてくれたことに感謝をします」

「いえ、ルフトル王国をはじめ、皆様の協力があって出来た事です、それにまだ終わった訳ではありません」

「そうですね、そのために私を訪ねてきたのでしょう」

「はい、ソートマス王より親書と、こちらに署名をお願いします」

俺は親書と、女王様に署名してもらう書類を四枚渡した。

女王様は親書を受け取ると真剣な表情で読み始め・・・読み終わると書類に署名をして俺に渡してくれた。

「これで戦争の心配をする必要は無くなった訳ですね」

「少なくとも、私が生きている間はそう願いたいです」

今の王様達は大丈夫だと思うが、次の世代がどう判断するかまでは分からない、キュロクバーラ王国の次の王はマティアスだろうから安心だが。

リースレイア王国は今回の件で一番不利益を被っているからな、次の王が納得いかないと条約を破棄して戦争を仕掛けてくるかもしれない。

そうなったら全力で叩くだけだが、出来ればそうなって欲しくはない。

ソートマス王国もそうだ、次の王が俺の領地が多い事を不服に思い行動を起こしてくる可能性もある、そうならないためにも戦争が無くなったからと言って、軍備を疎かには出来ないのだろうな。

嫌な話ではあるが、平穏に生活するためには必要な事だろう。

「難しい話はここまでにして、ロレーナ、元気にしていましたか?」

「はい、女王様、元気にしていたのじゃ」

女王様はロレーナにやさしく微笑みかけ、楽しそうに話を始めた。

俺達やソフィアさんも会話に加わり、エンリーカ達が戻ってくるまでの間、楽しく過ごした。

夕方ごろに、エンリーカ達が戻ってきたので、皆を連れてリアネ城へと戻ってきた。

俺とルリアとリゼは、これからミスクール帝国のお城までキュロクバーラ王へと会いに行くので皆と別れた。

『マティアス、今からそちらに向かうがいいだろうか?』

『構わない、玄関で待っていてくれ』

『分かった』

俺はルリアとリゼを連れて、ミスクール帝国の城へと転移してきた、暫くすると城の中からマティアスが出て来てくれた。

「エルレイ、待たせたな」

「マティアス、いつも思うが、次期王のお前が慌てて出てくるのは良くないのではないか?」

「皆にも言われているが、これは俺の性格だから変えようがないな」

マティアスはそう言って笑っていた、本人と周りが気にしていない様だからマティアスはこのままでいいのだろう。

マティアスに案内されて城の中に入って行った。

「マティアス、少しだが食料を持って来た」

「それは助かる、倉庫の方に案内しよう」

マティアスは非常に喜んでくれた、今一番欲しい物だろうからな、毎日前線に出ている兵士達には美味しい物を食べさせてやらないと士気が下がるって物だ。

倉庫に食料を置いて、マティアスに連れてこられた所は食堂だった、既に王様とマティアスの弟達が席に着いていた。

「皆様お待たせしました」

「エルレイ、挨拶は後にして先に食事にするぞ」

「では遠慮なく、失礼します」

俺とルリア、さらにリゼの席まで用意されていて席に座った、リゼは前から王様には認められているからな。

食事はマヌエルとヴィートがいつもの様に喧嘩を始めた事以外は、終始和やかな雰囲気で食べる事が出来た。

食事の後は部屋を変えて、応接室へとやって来た、謁見室の方は部屋が広いため、物資の搬入場所となっているそうだ。

俺の正面のソファーに王様とマティアスが座り、俺の両隣にルリアとリゼが座った。

「王様、こちらがソートマス王からの親書になります」

王様は俺から親書を受け取ると読み始めた、暫くして読み終わると、それをマティアスへと渡した。

「これだけじゃないんだろ?」

「はい、こちらに署名をお願いします」

俺は既に三か国の署名がなされている四枚の書類を渡した。

「ふむ、よくリースレイア王が署名した物だな・・・」

王様はリースレイア王の署名を見て、不思議そうな表情をしていた。

「それに関しては、前回私がソートマス王より貸与された時の条件に含まれていましたので、それに署名しなかった場合、三か国を敵に回す事になりますからね」

「それもそうだな」

マティアスが親書を読み終え、こちらの会話に参加して来た。

「エルレイはなぜ、リースレイア王国にミスクール帝国を滅ぼさせなかったのだ?転移門だったか、あれを使えばリースレイア王国が誇る魔剣部隊で今回と同じように城を強襲すれば、簡単に落とせていたのでは無いのか?」

マティアスが疑問に思った様な事をやろうと思えば出来ていたが、単に俺がリースレイア王が嫌いだったというだけなんだがな・・・。

正直に話す訳には行かないので、色々理由を付けて話さないといけない。

「そうですね、魔剣部隊と言うか、リースレイア軍は纏まっていてかなり強い軍だと思いました。

ただ上層部が私の情報も、ミスクール帝国に関する情報も全く調べていなかった、そんな国に広大な土地を渡すのはもったいないですからね」

「エルレイ、素直にリースレイア王が気に入らないって言えばいいのよ!」

俺が理由を説明したのに、ルリアの一言で台無しになってしまった・・・。

「そう言う事だったのか・・・」

「わはははは、気に入らなかったか、それならこちらに話を持って来た事には納得した」

マティアスは納得し、王様は大いに笑っていた。

「エルレイ、気に入らなかったのなら、リースレイア王国も滅ぼせばよかったのでは無いのか?」

マティアスは物騒な事を言って来るものだな・・・。

「そうだな、ここでリースレイア王国を滅ぼしていれば面倒は無くなるが、離れた領土の管理は大変だし、ソートマス王国がこれ以上大きくなり過ぎるのも問題だからな」

「ふむ、確かにそうだな、エルレイが生きている間は良いだろうが、その後傲慢な王が出て来ないとも限らない」

「その時は、キュロクバーラ王国が止めてくれると信じていますよ」

俺が笑顔でそう言うと、マティアスが真剣な表情で答えてくれた。

「任せておけ、戦争が無くなろうとも軍備を怠るような事はしない!」

マティアスがしっかりしているから大丈夫だろう、勿論俺もそうならない様、子供の教育はきちんとやるつもりだ。

「では、この書類に署名する事にしよう」

そう言って王様は四枚の書類に署名をした。

「一枚はキュロクバーラ王国で保管しておいてください」

「うむ」

俺は王様から残りの三枚を渡して貰った、明日にでもこれを渡して来れば終わりだな。

「エルレイ、領土の件は一か月後に引き渡す事にする、こちらも準備があるのでな」

「はい、分かりました」

一か月後か、意外と早かったな・・・ロイジェルク様とアドルフに準備をお願いしないといけないな。

「ではこれで失礼しますね」

「うむ」

俺達は応接室を出て玄関へと向かい、そこから転移でリアネ城へと戻って来た。

「すっかり遅くなってしまったな」

「そうね、早くお風呂に入って寝るわよ」

「エルレイ様、お風呂に行きましょう」

リゼに手を引かれて、そのまま風呂へと直行させられた・・・。


翌朝、ルフトル王国とリースレイア王国に連絡を入れ、四人の署名が書かれた書類を渡してきて、午後からは陛下に渡して終わりだ。

城に向かう馬車にロイジェルク様とルリアの三人で乗り込み、リゼは御者台に座っている。

「ずいぶん早かったな」

「はい、忙しいキュロクバーラ王にすぐ会えましたので、助かりました」

「そうか、それで領地はいつ頃こちらに譲ってくれるのだ?」

「一か月後という話でした」

「ふむ、こちらの準備も急がねばならないな」

「申し訳ありませんが、よろしくお願いします」

準備に関して俺は何もできないから、ロイジェルク様に頼るほかない・・・。

「なに、構わんよ、新たに貴族となる者とその家には恩を売れるわけだからな」

ロイジェルク様はにやりと笑っていた、なるほど、恩を売られた貴族はロイジェルク様に逆らえなくなるのか・・・。

こうして借りを作っている俺も同じと言う事だな、まぁロイジェルク様に逆らうつもりは無いけどな、今まで色々頼まれてきたが嫌なことはさせられなかったからな。

馬車は城へと到着し、陛下の執務室へと向かった、王城内も大分覚えて来た物だな・・・。

今はリアネ城に住んでいて、何となく似たような作りになっているからな。

部屋に入ると、いつもの様に陛下は自分の机で仕事をしていた。

キュロクバーラ王もそうだが、王様と言えど忙しくしている物なのだよ、リースレイア王が仕事をしていない訳では無いだろうが、二人の様に働いているとは思えなかった。

あの国がどうなろうと、今となっては関係無い事だな。

「陛下、書類に署名して頂いてきました」

「ご苦労、掛けてくれたまえ」

ソファーに座ると、陛下もこちらにやって来て座った、俺は陛下に書類を渡した。

「これで戦争の心配は無くなるのだな・・・」

陛下は種類を見て、感慨にふけっている様子だ。

「しかし軍備をおろそかにする訳には行きません」

陛下が軍備を縮小するとは思わないが、ロイジェルク様が念を押していた。

「分かっておる、ロイジェルクから提出された魔法軍化も進めて行こう」

「ありがとうございます」

ロイジェルク様は、魔法を軍に覚えさせる話を既に陛下にしていたのか、軍が魔法を使える様になれば様々な面での活躍が期待できるな。

「エルレイ、改めて礼を言う」

陛下が俺に頭を下げた。

「陛下、頭をお上げください、私はただ与えられた役割を果たしたまでの事です」

俺が言っても陛下は頭を上げてくれなかった。

「エルレイはこれまで誰も出来なかった事を成し遂げたのだ、いくら感謝してもしきれない」

「ですが・・・」

「陛下のお気持ちは十分伝わりましたから、頭を上げてください」

俺が困っているとロイジェルク様が助けてくれて、ようやく陛下は頭を上げてくれた。

「そうか、ではエルレイへの礼はあらためてするとして、ロイジェルクよ、日取りなどの調整をお願いできるか?」

「はい、お任せください」

「うむ、頼んだぞ」

「では、失礼します」

陛下の執務室を出て玄関へ向かっている途中で、ロイジェルク様とは別れる事となった。

先程の調整を行うのだろう、俺達だけで城を出てロイジェルク様の館から転移でリアネ城へと戻って来た。

「これでようやくゆっくり出来るな」

「馬鹿ね、これからもっと忙しくなるわよ」

「そうだが、命の危険は無いから気楽にやれるよ」

「確かにそうね・・・」

新しい領地に道を作ったり、キュロクバーラ王国の手助けもしないといけないだろうが、戦うよりはいいな。

ルリアが言ったように、この日から忙しい日々が続いて行く事となった・・・。


二週間後、マデラン兄さんとヴァルト兄さん、それからアヒムを含む領内の十名の男爵を連れて王城へとやって来ていた。

俺は陛下から褒美を貰う為に呼ばれており、マデラン兄さんは父上から家督を譲って貰った為、陛下から爵位を頂く事になっている。

俺の祖父はヴァルト兄さんが生まれた時に、父上に家督を譲って気ままに農業をしながら暮らしている。

父上も早く家督を譲ってのんびりと暮らす事を選択した様だ、俺も将来はそうしたいと思っている。

しかし全ての貴族がそうかと言う訳でも無い、中には死ぬまで家督を譲らない人もいるらしい。

ヴァルト兄さんとアヒム含む男爵達は、しょう爵する事が決まっている。

アヒムは難民の対応での功績が認められ、他の男爵達も領地を繁栄させた事が認められた訳だ。

単に新しい領地に前回と同じ数の男爵を配置するには人が足りず、少しでも頑張っていた男爵を子爵にして、少し多めの領地を与える事で人手不足を解消した訳だ。

部屋に通された俺はソファーに座り、メイドさんが入れてくれたお茶を堪能していたが、マデラン兄さん達はガチガチに緊張している様子だ。

ヴァルト兄さんは陛下と会うのは二度目だろうけど、その他は初めて陛下に会うのだから仕方のない事だろう。

「ヴァルト兄さんは二度目なのですから、そこまで緊張しなくてもいいのではないでしょうか?」

「エルレイの様に何度も会っているのでは無いのだぞ、緊張しない方がおかしいだろ!」

ヴァルト兄さんが怒るのも当然か・・・確かに俺も最初の頃は緊張しまくっていた記憶があるな、最近各国の王様と会っていたせいで感覚がマヒしていた様だ。

「まぁ二人共、今日はめでたい日じゃないか・・・もっと気楽にいこう・・・」

俺達の間に入ってくれたマデラン兄さんだったが、声は緊張のあまり震えていた。

「ヴァルト兄さん、すみません」

「いや、俺も怒ったりして悪かった・・・」

ヴァルト兄さんはその事が可笑しかったのか、笑いをこらえながら俺の頭を撫でてくれた。

その事でヴァルト兄さんの緊張はほぐれた様だが、マデラン兄さんと他の貴族達の緊張はほぐれないまま部屋の扉が開き、謁見室へと向かう事となった。

謁見室に入ると、いつもより横にいる貴族の数が多い様に思える、その中にロイジェルク様と何故かついて来たルリアも立っていた。

俺はいつもの様に膝を突き頭を垂れると、マデラン兄さん達も同じ様に頭を下げていた。

「頭を上げよ」

俺はゆっくりと頭を上げて陛下の表情を見ると、にこやかに笑みを浮かべていた。

「皆も既に知っている者もおるだろう、ミスクール帝国はキュロクバーラ王国によって滅ぼされた・・・」

知らなかった貴族もいる様で、周囲がざわめきだした。

「だが安心するが良い、ここにいるエルレイがキュロクバーラ王国に助力し、ミスクール帝国の滅亡に大いに貢献した。

その事によって、キュロクバーラ王国とは不可侵条約を締結する事となった。

既にルフトル王国とは不可侵条約を締結しておる、更にリースレイア王国とも不可侵条約を締結した、これがその証拠の書面だ」

陛下は四人の王の署名が掛かれた書面をこちらに見せたが、ここからでは判断できない、要はそのような物がある事が伝わればいい訳だな。

「つまり、この条約がある限り、この大陸で戦争は起きないという事だ、そしてそれをもたらしたのがエルレイと言う事だ」

今まで影で行って来た事が、皆の知る事となった・・・俺としては公表しなくてもよかったのだが、経緯を説明するためには仕方のない事だろう。

周囲の貴族達のどよめきが大きくなった、ロイジェルク様の配下の貴族達は好意的に受け止め、そうで無い者達にとっては面白くない話だろう。

グールに指摘されなくても、この部屋に入ってから敵意に満ちた視線がいくつか飛んできているし、宮廷魔導士辺りからは特に厳しい視線が向けられている。

魔法軍化なんてものを、ロイジェルク様は進めている様だし、二、三年もしたら宮廷魔導士なんて要らなくね?ってなるのは目に見えているからな。

「そこでエルレイにはその功績を称え、公爵位とキュロクバーラ王国から譲り受ける領地を授ける事とする」

今日一番のどよめきが起こった、公爵位はここに呼ばれている時点で皆も気が付いている事だろうが、領地に関しては俺と陛下とロイジェルク様以外は知らなかっただろうからな。

隣にいるマデラン人さんと、ヴァルト兄さんも驚いている。

そのヴァルト兄さんは、新しい領地を治める事になる訳だ。

せっかく慣れて来た所に、また新天地に行って貰うのは心苦しいが、ヴァルト兄さんなら問題無くやってくれるだろう。

ここに呼ばれた男爵達も同じだ、アヒムだけは国境沿いだったため、そのままラウニスカ方面の土地を増やすだけで移動しなくていいのだがな。

「静粛に、静粛にお願いします」

暫くしてもどよめきが収まらないので、横にいる文官が皆を静めていた。

静まりかえった所で、陛下が俺を見て宣言した。

「ゼルギウス・フェリクス・ド・ソートマスの名において、エルレイ・フォン・アリクレットに公爵位を授ける事とする」

「謹んでお受け致します、今後一層、王国の為に誠心誠意尽くす事をお約束致します」

「うむ」

これでなりたくは無かったが、公爵になってしまった。

俺の後、マデラン兄さんに父上から譲り受けた伯爵位を、ヴァルト兄さんも伯爵位を授かり。

アヒム達男爵は、子爵位を陛下から無事授けられた。

さすがの陛下も、男爵達の名前は紙を読み上げていていたので、男爵の名前は覚えきれないのだと安心した。

公爵になったが、俺はまだ子供と言う事で、領地の管理や男爵の任命はロイジェルク様に任せられる事になった。

式は終了し、部屋を出て行こうとしていた所、ロイジェルク様に貴族達が押しかけているのが見えた。

今更言い寄った所で、ロイジェルク様が話を聞く訳もなく、軽くあしらわれている様だった。

新しい領地の管理に貴族が必要になる、そこに自分たちの息子を押し込めたいのだろうが、既に決まっているんだよね。

この二週間、ヴァイスさんとアドルフによって、新たに男爵になる者と、それに就ける使用人達の選別が行われていた。

今頃男爵になる者達の元へは連絡が行っている事だろう、前回はロイジェルク様の館に集められたが、今回は道も整っている事でリアネ城へと集合して貰う事になっている。

俺はキュロクバーラ王の許可を得て、既に旧ラウニスカ王国へと繋がる道を、ヘルミーネとロゼとラウラの協力を得て作り始めていた。

そんな準備が進んでいる段階だから、ロイジェルク様もさっさと部屋を出て来てくれた。

城を出て、ロイジェルク様の館へと戻り、そこで会議室へと全員集められた。

「皆おめでとう」

ロイジェルク様が俺達がしょう爵した事を祝ってくれた。

「先程陛下からの話にもあったように、君達には新しい領地へと行って貰う事になる、こちらの地図を見てくれ」

ロイジェルク様は、テーブルに広げてある旧ラウニスカ王国の地図を指した、この様な地図があったのなら、ラウニスカ王国に攻め込んだ際に見せて欲しかった・・・。

地図には区分けと、ヴァルト兄さん達が治める所に名前が書き込まれていた。

もちろんヴァルト兄さんはラウニスカ城があった街だ、城は無くなっているが、貴族が住んでた家があるだろうからな、そこに移って貰う事になる様だ。

「こんな大きな街を俺が治める事が出来るのだろうか・・・」

ヴァルト兄さんは不安そうな表情を浮かべていた、他の子爵たちも似たような感じだ。

「ヴァルト兄さん、ご心配なさらず、こちらで新たに仕える使用人達を用意しております、俺もそうですが最初は使用人に任せてしまった方がお互い助かると思います」

「そうか、それは本当に助かる」

ヴァルト人さんはそれを聞いて、心底安心した様子だ。

「うむ、他の子爵達にも同じように使用人を用意している、不要だと言うのならそれでもかまわないぞ」

ロイジェルク様は意地悪そうにそう言ったが、子爵達は必死に首を横に振っていた。

「この領地に移って貰うのは二週間後となる、それまでに準備をしておいてくれたまえ」

マティアスから領地の受け渡しの正式な日取りが伝えられて来たから、二週間後には俺達の領土となる事が決まっていた。

「アヒムは移動しなくていいが、家を新しく建てる必要がある、既に職人は手配していてそちらに向かわせるので、立てる場所を指定してやってくれ」

「分かりました、ありがとうございます」

子爵家となったアヒムには使用人も増え、今の家では狭くなるからな、こう言うのはお祝いとして、アヒムの上司となる俺が建ててやらないといけないとアドルフに言われた。

「ロイジェルク様、以上でよろしいでしょうか?」

「うむ、しかしエルレイ君は公爵になったから、私に様付けする必要は無いのだぞ、これからは対等な立場として振舞って貰わねば困る」

「そう言われましても、ロイジェルク様は目上の方ですし、今までずっとこのように呼ばせて頂いていましたので、急に変えるのはどうかと思うのですが」

「ふむ、ならばこうしよう、私の事を父と呼んでくれないか?」

呼び捨てよりハードルが高くなっているような気がするが、いずれそう呼ばないと行けないのは確かだな・・・。

父上の事は父上と呼んでいるから、それ以外の呼び方をしないといけないな、ロイジェルク父上、ロイジェルク父様、いまいちピンとこないな、ここは普通にお父様が良いだろうか・・・。

「では、お父様と呼ばせて貰います」

「うむ、娘に呼ばれているような気もするが良いだろう!」

確かにルリアはお父様と呼んでいたが、まぁいいだろう。

「ではお父様、これで失礼します」

「これから忙しくなるだろうが、頑張ってくれたまえ」

皆を連れてリアネ城へと戻って来て、マデラン兄さんとヴァルト兄さんを送り届け、最後に家を知っているアヒムを送り届けて来た。

他の子爵達は来る時もリアネ城まで馬車で来て貰ったので、そのまま自分達で帰って貰った。


翌日新しく使用人にするための面接をお願いしますとアドルフに言われ、謁見室の玉座に座らされた。

この玉座は豪華で、しかも普通の大人用だから、俺が座るとどうも締まらないというか変な感じに見える事だろう。

もしかしてこの状態を見て、笑わない事も試験だったりするのだろうか・・・。

隣にいるアドルフを見ても、表情からは何を考えているのかは分からない。

そんな事は関係無いといった感じで、面接が始まった。

面接と言っても俺の前に一人ずつ来て、二、三質問をするだけだ。

一応俺の横にアドルフと反対側にリゼが立っていて、近くにはカリナさんとトリステンも控えている。

いきなり俺を襲って来る人はいないと思うが、用心のためだそうな。

ちなみにニーナは子供を身ごもったようで、念のために仕事も休んでいる。

他にも使用人の中にも、俺が休日を与えた事で、子供を身ごもった者が増えたそうだ。

俺はとても喜ばしい事だと思ったが、アドルフはそう思わなかった様で、仕事に支障が出ない様に調整をしないといけないかも知れませんね、と真剣な表情で言っていたのでそれは止めさせた。

支障が出る様なら、使用人を増やせばいいだけの話だ、十人、二十人増やした所で傾く様な財政状況では無いのだから。

面接は順調に進んでいるかのように思えたが、グールからは数名ダメ出しを受けた。

『マスター、あいつは駄目だ、敵意は無いが怪し過ぎるぜ!』

グールに指摘された男は、表情は笑顔だが、目が怪しいく見える?グールに言われたからそう見えるのだろうけど、まぁ変なのは雇わないに限るか。

俺は手元にある紙に書き込んでいく、後でアドルフに見せて雇わないようにするだけだ。

その中で見た事がある人物が目の前にやって来て挨拶をした。

「エルレイ様の下で働きたく思い、やってまいりました」

「確か、リースレイア王国の王様の傍にいなかったか?」

「はい、ヒューイットと申します、以前リースレイア王国では財務官を務めておりました」

「それがなぜここにいるのだ?」

「仕事に嫌気が差し辞めてまいりました、他にも数名私と同じようにここへ来ております」

あの王様の所で働いていれば嫌気も差すだろうが、それはここで働いていても同じ様になるのでは無いだろうか?

「ヒューイット、ここでの仕事はリースレイア王国に比べてとても忙しいと思うぞ、また嫌気が差して辞めるのでは無いのか?」

俺がそう聞くと、ヒューイットは真剣な表情で返事をして来た。

「決してそのような事は致しません、もし私が辞める事になった場合は命を捨てましょう!」

別に命は要らないが、辞められると色々面倒だからな・・・。

『アドルフはどう思う?』

『そうですね、雇って見る事にしましょう』

アドルフが雇うと言うとは思わなかった。

『どうしてそう思うのだ?』

『最初は重要な仕事は任せませんのでしばらく様子を見ます、これは他の使用人も同じです、もし使えない様であればその時に辞めさせれば良いだけの事です』

『なるほど、分かった、雇う事にしよう』

『はい、ありがとうございます』

「分かった、下がっていいぞ」

「はい、失礼します」

その後の面接は問題無く無事終了した。

俺は気になったので、リースレイア王国で唯一連絡が取れるノーリッシュに念話で連絡をした。

『ノーリッシュ、エルレイだ』

『エルレイ、また陛下に用なのだろうか?』

『今回は違う、少し聞きたい事があって連絡した』

『聞きたい事とは?』

『ヒューイットと言う者を知っているだろうか?』

『もちろん知っている、以前財務官を務めていた者だ、それがどうかしたのか?』

『他の者には言わないでもらいたいのだが、俺の所に来ていて使用人として働いて貰う事になった』

『そうか・・・』

ノーリッシュは沈黙して考えている様子だ。

『やはり、問題があっただろうか?』

『いや、その事に関しては問題は無い、単にこちらの問題なだけだ、ヒューイットに限らず、陛下のやり方が気に入らない文官達が、ヒューイットと共に辞めて行ってな、こちらでは騒ぎになっている』

『そうだろうな、そちらで捕らえようとはしているのだろうか?』

『その様な事はしていない、逆に戻って来て貰っては困るのだ』

『普通戻って来て貰わないと困るのでは無いだろうか?』

『そうだが、先程言ったように陛下のやり方が気に入らないで出て行った訳だ、下手をすると反乱を起こされていたかも知れない、そんな人達を無理やり連れ戻したとなれば、他にも陛下に反旗を翻す者が出ないとも限らない』

『なるほど。確かにそうかも知れないな』

『陛下は今回の事で恐怖を覚え、戦争も起こらない様になったため、反乱を起こされない様、軍備の縮小もするつもりの様だ』

『それは逆効果なのでは無いのか?軍を辞めさせられた人々が、仕事が無い事を不満に覚えて蜂起したりしないのだろうか?』

『もちろんその懸念がある事を、軍団長のアンドレアルス様が陛下に意見を述べたのだが、聞き入れてはもらえなかった様だ』

『そうか、もしそのような事になったら俺の所に来て貰って構わないぞ』

『それは本当か、かなりの人数になるのだぞ!」

『農業か警備隊で働いて貰う事になる、後は腕に覚えがある者なら、俺の所で開催している武闘大会で食っていけるかも知れん』

実は警備隊は人が足りていない、ヴァルト兄さんが治める事になっている所の警備は一時的に俺の所の警備隊を派遣する事になっているが、あくまで一時的であって更に募集しなくてはならない状況だった。

リースレイア王国から人が来てくれるなら大いに助かる事だ。

『分かった、アンドレアルス様にもその様に伝えてもいいだろうか?』

『構わない、農業に関しても家と畑はこちらで用意するから、開墾する必要は無いと伝えてくれ』

『確かに伝えよう』

ヒューイットが来た事で問題が起きるかと思ったが、逆に人材不足を解消出来るかも知れないな。

リースレイア王国のお国事情がどうであろうと構わないが、こちらとしては助かるな。

アドルフにもその事を知らせ、人が大勢押しかけて来ても混乱しない様警備隊にも通達を出して貰った。


準備は着々と進み、俺の領地と旧ラウニスカ王国を結ぶ道も完成した。

この後キュロクバーラ王国の道も作らないといけないが、それはこちらの領土が落ち着いてからだな。

何故かと言うと、ノーリッシュから連絡があり、あれからアンドレアルスが移住希望者を募った所大勢いたらしく、こちらに受け入れの打診をされていた。

しかし、領地を受け取った後でないと無理だと伝え、待って貰っている。

そして今日新しい領地に配属される貴族達が、リアネ城へと集まっていた。

当然お父様、いや、まだ慣れないのでロイジェルク様と呼ぼう、そのロイジェルク様も来ていて、新たに男爵となる者達へ爵位を授けていた。

「エルレイ様、そろそろご挨拶をお願いします」

アドルフがやって来て集まった人たちに向けての挨拶を催促された、俺は高い壇上へと上がった、当然のごとく横にはロイジェルク様も立っている。

俺は一度周囲を見渡してから、挨拶を始めた。

「今日ここに集まって貰った者達は、新しい領地へ配属される事は知っている事だろう。

その領地は旧ラウニスカ王国で、キュロクバーラ王国との戦争で疲弊していて、君達には大変な困難が待ち受けている。

だが私は君達がそれを乗り越え領地を発展させてくれる事と信じている、もちろんこちらからの支援は最大限行う事を約束する。

既にこの街から繋がる道も完成していて、更にキュロクバーラ王国と繋がる道も作る予定だ。

君達の努力次第でどれだけでも発展させる事が可能だ、頑張ってくれたまえ」

俺の挨拶が終わると拍手が起こった、若干不安な表情を浮かべている者もいるが仕方のない事だろう、今言った事は嘘では無く、現実的に人口が減っているのだから。

戦争で減ったのもあるが、主に難民としてアヒムの所で受け入れた人達だ、今更帰す訳にも行かないからな。

人に関しては、リースレイアからやって来る人達がいるから補えるかも知れない、それを言わなかったのはまだ確定していない事だからな。

さて、リアネ城の玄関に出ると、貴族に仕える使用人達と荷物を載せた馬車が並んでいた。

俺はこれから全員を領地へ送り届ける事になっている、自分たちで行かせてもよかったのだが、そんなのは時間の無駄だし、俺も大した手間では無いからな。

道を整備している時に場所は調べてあるので、全員を送り届けるまで一時間も掛からなかった。

それが終わってからは、いよいよリースレイア王国から人材の受け入れが可能になった事をノーリッシュに伝えた。

ノーリッシュからは農業をしたい者、警備隊として働きたい者、武闘大会に出たい者の人数を教えて貰い、それに合わせて、新しい領地の方に分散して農地を作って行った。

難民の時とは違って一か所にまとめる必要は無いからな、警備隊として働きたい者達はヴァルト兄さんの所に全て預けた。

こうしてリースレイア王国からの人材受け入れも無事終了した所で、ようやく一息つく事が出来た。


月日は流れ、領地経営は順調に行っている。

果実酒の生産は、材料の果物が安定して採れるようになり、順調に行っている。

シルクの生産は、エンリーカ達が頑張ってくれたおかげで、こちらも軌道に乗り始めた所だ。

まだ糸にして布を作っている段階で、洋服の生産までは手が回っていない。

しかし、そこは心配する必要は無かった、俺の領地で布を作っている事を調べたルノフェノが、自分の所で縫製の職人を雇って育成していたのだ。

ラノフェリア家の人は抜け目が無い物だと、あらためて思った。

リアネ城に目を向けると、今城の中は小さな子供達で溢れかえっていた。

俺の子供と言う訳では無く、使用人達の子供なのだが、休日を与えた事で使用人達の間に多くの子供が出来、使用人達が交代で子供達の面倒を見ているのだが、子供達をまとめておくには使用人達の居住空間では手狭になったので、城を解放している訳だ。

広い謁見室には多くのベビーベッドが置かれていて、そこでまとめて面倒を見ている訳だが、三、四歳になった子供達は大人しくしている訳もなく、城中を駆けずり回って遊んでいる。

その事をアドルフは快く思わなかった様だが、俺が許可した事で使用人達にも怒られる事は無かった。

自由に出来るのは五歳までだそうで、それからは使用人としての教育を厳しく施していくとの事だった。

すでに五歳以上の子供達は教育を受けていて、俺に会っても礼儀正しく挨拶をしてくれるからな。

俺はと言うと十四歳となり、ついこの間リゼとロゼの身長を追い越した事で、子供扱いされる事は少なくなった・・・。

いまだにリゼやロゼに着替えと入浴の手伝いをさせられているからな、さすがにこの年齢では体の作りが大人になったので、もういいと言ったのだが、聞き入れては貰えなかった。

それはまだ今までずっとやって来た事だから良いとして、最近マリーが俺の世話をリゼから週に二日ほど譲って貰った様で、マリーから着替えと入浴の手伝いをされるのがとても恥ずかしかった。

まぁそれも、もうすぐ終わる事になるだろう。

何故ならルリアが十五歳となった事で、俺との結婚が許されたからだ。

俺が十五歳になっていなくていいのかと思ったのだが、結婚するのに年齢は決まっていない様で、単に慣例で十五歳の成人になってからと言う事だったのだ。

ヘルミーネは俺より二つ下の十二歳で俺と結婚する訳だから、確かに関係無い事だな。

俺達の結婚式はソートマス城で行われる事になっている。

いくら公爵とは言え、ネレイト様がそうであったように、自宅でするのが普通で、ソートマス城で行うとは前代未聞の事だった。

最初はリアネ城でやる予定にしていたのだが、陛下がどうしてもヘルミーネの結婚式に参加したいと言った事で、ソートマス城で行われる事が急遽決まった。

陛下をリアネ城へと招待すればいい話なのだが、俺が陛下を転移で運んで来る訳には行かない。

陛下の移動ともなれば、威厳を示すためにも多くの馬車と騎士たちを連れ、立ち寄った領地の貴族と会って状況を確認したりと、色々と面倒なうえにお金もかかる為、簡単に出歩けないという事だった。

それならば安上がりとなる、ソートマス城で行う事となった訳だ。

俺もリアネ城でやった方が気楽でよかったのだが仕方が無い、しかし俺もソートマス城での結婚式には条件を付けさせて貰った。

それは妾となる、リゼ、ロゼ、ラウラ、エルミーヌ、マリーも参加させるという事だ、元々リアネ城での結婚式に参加させるつもりだったからな。

最初は許可されなかったが、ロイジェルク様と陛下も許可して下さった事で実現する事が可能となった。

俺が使用人達と食事を共にしている事は貴族達の間では有名な事だったため、そこまで苦労はしなかったと、後でロイジェルク様に教えて貰った。


そして、結婚式の日を迎えた。

俺は控室でカリナさんに着替えさせて貰った後、大勢の来客達の対応に追われていた。

俺の領地の貴族達に、ロイジェルク様の配下の貴族達、ルフトル王国からソフィアさん、マルギットさん、ワルテさん、カーメラさん、それとロレーナの母親カミーユさんが来てくれた。

キュロクバーラ王国からは王様と妻たち全員に、マティアス、マヌエル、ヴィート、ベニート、レンツオの兄弟が来てくれていた、喧嘩にならなければいいのだが・・・。

陛下は自由に動けないのに対して、キュロクバーラ王は自由に俺の領地に遊びに来てたりするからな、今回も結婚式の後は王都を観光して帰るそうだ。

父上と母上も来てくれている、マデラン兄さんに家督を譲った後は二人でゆっくりと生活をし、あちこち旅行に出掛けている様だ。

マデラン兄さんとヴァルト兄さんも、家族を連れてやってきているが、俺と同じように挨拶攻勢を受けている。

公爵の俺に取り入ろうとしても難しい物があるが、伯爵の兄さん達なら何とかなるだろうと思っている貴族達が集まっている訳だ。

名前を覚えられなくても、以前お会いしましたよね?と言う事実が欲しいのだという事らしい。

俺の場合そう言う話は全てアドルフに任せている、俺の領内の貴族なら話を聞くが、それ以外の貴族の話は大抵、お金を貸してくれか、まだ生まれてもいない俺の子供との縁組を持ちかけて来るの二つだそうな。

前半は分かるが、後半は酷く無いかとアドルフに聞いたが、そうでもないらしい。

確かに俺とユーティアの子供の一人は既に行先が決まっている、しかしまだ見ぬ子供の嫁ぎ先を決めるのは可哀そうなので全て断らせている。

と言いつつ陛下からは、ヘルミーネとの子供の一人を王族の誰かと結婚させてくれとは言われていたりする。

という事で式が始まるまで俺への挨拶は続けられていった・・・。

ようやく式が始まるとアドルフが呼びに来てくれて、俺はここでルリア達のウエディングドレス姿を初めて見る事が出来る。

今までウエディングドレスを作る所も、試着する所も一切見せてくれなかったからな。

カリナさんに案内されて、皆がいる部屋へと入って行った。

皆の美しさに、俺はそこで暫く立ちすくんでしまった

「皆綺麗だよ」

俺はそう言って、ルリアに抱き付こうと近づいた所でカリナさんに腕を掴まれて止められた。

「エルレイ様、抱き付くのは式が終わってからでお願いします」

ルリアは、母親のアベルティア様の様に胸が大きくなり、今ではエルミーヌより大きくなったのかもしれない。

そして美しいルリアに抱き付けないとは残念過ぎる。

「そうよ、近づかないで頂戴、これ着るの大変だったのよ!」

ルリアにも言われたし諦めるしか無いか、リリー達も同じだよな。

皆純白のウエディングドレスに身を包んで、髪も美しく飾っているから、抱き付けないか・・・。

「皆様、式場へとお願いします」

ここで一人ずつゆっくり話したかったが、その時間は無い様だ。

俺は部屋を出て式場の扉の前に立った、皆も俺の後ろに並んでいる。

扉が開き、式場へと足を踏み入れると、暖かい拍手で迎え入れられた。

その中を歩くのは非常に恥ずかしかったが、堂々としていなければならない。

式場の一番前までゆっくりと歩いて行き、神父様より祝福をして頂いた。

そして神父様が一人ずつ名前を読み上げて行き、誓いを確認した。

神父様、全員の名前を覚えきれなかったのか、下の紙を読みながらだったので、笑いをこらえるのに必死だった。

「「「誓います」」」

皆で誓いを述べて式としては終わりだ、長々とやるよりはましだと思うが、実際に自分の結婚式だとあっさりと終る物だと思ってしまう。

ここで妻とのダンスを披露する訳だが、人数が多いので、ヘルミーネ、ロレーナ、エンリーカ、各国の王女とのダンスを披露して、後は他の人達もダンスが出来る様になってから踊る事になった。

ロレーナは便宜上だけの王女だが、それでも王女には変わりないからな。

「ヘルミーネ、これからもよろしく頼む」

「エル、よろしく頼む」

ヘルミーネの手を取り踊り始めた。

「エル、もう少し体を寄せてくれ、踊りにくい」

「すまない、ドレスを気にし過ぎていた」

俺はヘルミーネに体を寄せて踊り続けた、俺の身長が急激に伸びた事で身長差が出来てしまったからな。

「エル、すぐに追いついて、胸もルリアの様に大きくなるから楽しみにしているといい」

「そうか、俺は今のままでも可愛いから良いと思うぞ」

ヘルミーネはルリアの様に胸が大きくなると言ってはいるが、今の段階で大きくなっていないので無理だろうと思う・・・。

「それは当然だが、今以上に可愛くなるからな」

「それは楽しみにしておこう」

ヘルミーネとのダンスが終わり、ロレーナの所へ行って手を取った。

「ロレーナ、ドレスが似合っていてとても可愛いよ」

「エルレイ、ありがとうなのじゃ」

ロレーナは顔を真っ赤にしていて、非常に可愛らしい。

「そうだ、今日は記念日だから、ウィル、ソル」

「は~い、ご主人様」

「「お呼びだワン」」

「二人も一緒に踊ってくれないか」

「分かった~」

「「踊るワン」」

ソルは俺の呼び掛けでも表に出て来てくれるようになっていた、と言うより誰が呼んでも出て来て尻尾を振って喜ぶのだがな。

俺とロレーナが踊り始めると、ウィルとソルは俺達の周りを飛び回りながら一緒に踊ってくれた。

「エルレイ、とても嬉しいのじゃ」

「そうだな、精霊に祝福されいる様で嬉しい気持ちになるな」

ウィルとソルが踊っているのを見てつられて出て来たのか、ソフィアさんのミル、マルギットさんのソル、ワルテさんのモル、カーメラさんのシャルも一緒に踊ってくれていた。

シャルは見た目がスライムで、宙に浮いているのに違和感を覚えるが、精霊には違いないからな。

それを見ていた王族や貴族達も、驚きと、精霊の美しさに見とれていた様だ。

ロレーナとのダンスが終わると、精霊達も姿を消してしまった。

しかしこれでロレーナがルフトル王国の王女だと、誰もが認める事となっただろう。

俺はエルミーヌの所へとやって来た。

「あの後だとやりにくいですわね」

いきなりエンリーカに文句を言われてしまった。

「そうだな、すまなかった、しかしロレーナを喜ばせてやりたかったからな」

「それは良く分かりますわ、先程までロレーナは自信が無さそうにしていましたからね」

「そうか、でもエンリーカの美しさを見れば先程の事など皆忘れるさ」

「まぁ、そうですわね、エルレイ、踊りましょう」

俺はエンリーカの手を取り踊り始めた。

エンリーカが美しいと言うのはお世辞ではなく、純白のウエディングドレスに、この国では珍しい黒髪がとてもよく似合っていて美しい。

踊っているエンリーカの黒髪が美しく光を反射させるたびに、周囲が見惚れているのが分かる。

「ほら、皆エンリーカに見惚れているよ」

「その様ですが、私はエルレイだけに見つめられたいですわ」

「そうだな、今はエンリーカだけを見つめているよ」

「はい」

二人で見つめ合いながら踊り続けた。

エンリーカとのダンスが終わり、ここでようやく食事や飲み物が式場にいる皆に振舞われる事となった。

俺はまだ踊っていない妻達と踊らないといけない、それが無くても食事にありつける事など、今までの経験上無いだろうからな・・・。

先ずはルリアだ、この後の順番は皆で話し合って決めていた様だが、ルリアだけは俺が一番最初に踊ると決めた。

ルリアは一番最初に俺の婚約者となったからな、本当ならヘルミーネの前にルリアと踊りたかったのだが、ロイジェルク様に言っても、気持ちは嬉しいがどうにもならないと言われ、諦めるしか無かった。

「ルリア、踊ろう」

「分かったわ」

ルリアはいつもの調子で俺の手を取り、踊り始めた。

「今日のルリアはとても綺麗で、今すぐにでも抱きしめたのだが・・・」

「お願いだから、それは後にして頂戴」

「それは残念だ、しかし今日ほどルリアの赤い髪が美しく映えて見えるのは初めての事だ」

「そう、エルレイが買ってくれた櫛で毎日梳いていたお陰かしら?」

エルフの大樹の櫛を買ってからは、目に見えて髪が綺麗になって行ったからな。

実はあれから女王様にお願いして、大樹の枝を分けて貰い、櫛を全員分購入していた。

「ルリア、愛しているよ」

「もう、そう言うのも後にして頂戴、踊れなくなるじゃない」

「そうか、ではルリアとのダンスを楽しむ事にしよう」

「そうして頂戴」

ルリアはまだダンスが苦手で踊りながらの会話は難しい様だ、仕方が無いのでルリアの柔らかな胸の感触を楽しむ事にした・・・。

ルリアとのダンスが終わり皆の所へ行くと、リリーが俺の所へやって来た。

「エルレイさん、踊りましょう」

「リリー、踊ろう」

リリーの手を取り踊り始めた。

「リリー、とても美しくて妖精の様だよ」

「エルレイさん、ありがとうございます」

リリーの銀の髪が、純白のウエディングドレスに散りばめられた宝石と一緒に輝いていた。

エンリーカの黒髪もウエディングドレスに良く映えていたが、リリーの銀の髪は、ウエディングドレスと一体となって美しさを際立たせていた。

それは先程出て来たウィルのような感じだ。

「しかし、リリーと夫婦になったのに、さんはもういらないんじゃないのか?」

「いえ、これからもエルレイさんと呼ばせて貰います」

何かリリーの中でこだわりがある様だな。

「まぁ、無理にとは言わないが・・・」

「はい、エルレイさんと呼んでいるのは私だけですからね、これは特別なのです」

「そういう物なのか・・・」

「ヘルミーネもエルと呼んでおりますし、エルレイさんと呼ぶ事は私だけに許された事なのです」

確かにヘルミーネだけがエルと呼んでいるが、あれはヘルミーネがエルレイと呼ぶのが面倒だからそう呼んでいる物だと思っていた。

最初はヘルミーネも面倒だからだとは思うが、今は意図的にそう呼んでいると言う訳か、それならばリリーにエルレイさんと呼ばれる事は悪い事では無いな。

「分かった、これからもそう呼んでくれ」

「はい、エルレイさん」

リリーは嬉しそうに微笑んで俺の名を呼んだ。

リリーとの楽しいダンスを終えると、リディアが走って俺の所にやって来た。

「エルレイ、踊ろう!」

「リディア、踊るのは良いが、その姿で走るのは良く無いと思うぞ」

「そうなんだよね、この服走りにくいんだよねー」

「そう言う意味で言った訳では無いのだが、まぁいい、踊る事にしよう」

リディアの手を取り元気よく踊り始めた。

リディアはダンスの練習を真面目にやって、うまく踊れるようになっていた。

以前の様に倍の速度で踊っていては周りに迷惑が掛かるからと、エンリーカやラウラから教え込まれていたのだ。

「リディアはもう武闘大会に出なくていいのか?」

「うん、もう十分勝ったからねー、それにエルレイの子供を作らないといけないしねー」

リディアは常に女性部門で優勝を果たしていた、最近では男性部門に特別に入り、優勝は出来てはいなかったが上位に食い込む事は出来ていた。

俺は男性部門で優勝するまで辞めないのだと思っていたのだが、昨日突然もう出ないと言われていた。

「残念だが、リディアが決めた事ならこれ以上は言わないよ」

「大会に出なくても、ルリアとエルレイと戦えるから良いんだよー」

ルリアも未だに毎日訓練を欠かさずやっていて、リディアは未だに一度もルリアに勝った事が無かった。

俺もルリアには勝てないし、リディアとは互角の勝負をしていた、最近男性部門に出る様になって俺が押されては来ているが、まだ負けてやる訳には行かない。

「それより子供を早く作れって、お母様がうるさいんだよー」

「そうか・・・」

リディアは俺より一つ下の十三歳だから、もうしばらく子供は作らない方が良いと思っていたのだが、そう言う訳には行かない様だな。

「その事に関しては二人で話し合って決める事にしよう」

「分かったー」

リディアは子供を作る事がどのような物か知らないだろうからな、慌てずに行こうと思う。

リディアが再び走らない様に、皆の所まで手を繋いで連れて行った。

「エルレイ様、次は私です!」

リゼがリディアに負けないくらい元気よく、俺の前に出て来た。

「リゼと他の皆も、今日から夫婦になるから、様は要らなし、敬語も不要だぞ」

「いえ、これからもエルレイ様と呼びますからね!」

リゼが皆を代表するかのように力強く言って来た。

とにかくリゼの手を取り踊る事にした。

「リゼ、愛しているよ」

今回はリゼの目を見ながら素直に言えた。

「エルレイ様、愛しています」

「うーん、リゼ、一度様を抜いて言って見てくれないか?」

「分かりました・・・エルレイ、愛しています」

なるほど、今までリゼからエルレイ様と呼ばれていた事に慣れていて、違和感があるな。

「どうでしたか?」

リゼが不安そうに聞いて来た。

「いいと思うぞ、そのうち慣れると思うから続けてくれないか?」

「そのうち慣れるって、変って事なんじゃないですか!」

「まぁそうだが、夫婦で様を付けている事の方が変では無いのか?」

「そうでもないですよ、様を付けて呼ぶ方もいらっしゃいますし、旦那様ともいうじゃないですか」

「そう言われてみればそうか、分かった、リゼの好きな様に呼ぶといい」

「はい、エルレイ様」

リゼにエルレイ様と呼ばれた方がしっくりくることは間違いないな。

リゼとのダンスを楽しみ、リゼも手を放さず皆の所まで戻った。

「エルレイ、ダンスの相手をお願い」

「ユーティア様、喜んでお相手をさせて頂きます」

ユーティアが、ネレイト様の結婚式の時に俺をダンスに誘って来たような表情をしていたので少し戸惑ったが、俺もその時と同じように答えて、ユーティアの手を取り踊り始めた。

「ふふっ、エルレイは覚えていてくれた様ね」

ユーティアは笑みを浮かべ、俺の耳元で囁いた。

「覚えていますよ、あの時初めてユーティアの声を聞いたからな」

「あの時は悩みましたが、私の判断は間違っていなかった様ですね」

「そうだな、あの事が無ければユーティアとは会話をしていなかっただろうし、ロイジェルク様も婚約を許してはくれなかっただろう」

「えぇ、そう思うわね」

「思い出も大事だが、今この時も大事だ、ダンスを楽しもう」

「そうね、楽しみましょう」

ユーティアと笑い合って、楽しく踊り続けた。

ユーティアとのダンスが終わると、待ちきれなかったのか、エレオノラがこちらにやって来た。

「エルレイ、次は私です」

「エレオノラ、踊ろう」

エレオノラの手を取り踊り出す。

エンリーカと同じく、長く伸びた黒髪がウエディングドレスに映えて美しい。

「エレオノラ、綺麗だよ」

「私はいつも美しいのです」

「そうだが、今日はいつもより、と言う事だな」

「今日からは妻として常に美しく、そしてエルレイの役に立って行きたいと思います」

「それなら俺も夫として頑張って行かないといけないな」

「はい」

エレオノラは笑顔で答えてくれた、俺はエレオノラの笑顔に応えるべく、今まで以上に頑張らないといけないと心に決めた。

でも今は、笑顔のエレオノラとダンスを楽しむ事にした。

エレオノラを連れて皆の所へ戻ると、エルミーヌが恥ずかしそうに俺の前に出て来た。

周囲の目もエルミーヌの胸に向けられているから仕方が無いよな。

「エルミーヌ、綺麗だよ」

「エルレイ様、ありがとうございます」

エルミーヌの手を取って踊り始めた。

エルミーヌの目を見つめながら踊ってはいるが、どうしても意識は胸の方に行ってしまう。

「エルレイ様、踊りにくくありませんか?」

「そんな事は無いぞ、エルミーヌは大丈夫か?」

俺の身長が伸びた事で小柄のエルミーヌとバランスが取れていない。

「少し・・・もう少し体を抱き寄せてください」

「分かった」

エルミーヌを軽く抱きよせるような感じにすると、スムーズに踊れるようになった。

「エルレイ様、動きやすくなりました」

「そうか、エルミーヌも様付けと敬語なんだな」

「呼び捨ての方がよろしいでしょうか?」

「そうだな、強制はしないが、エルミーヌは貴族だったのだから、普通に話しても問題無いのでは無いのか?」

そもそもこの結婚でもエルミーヌは妾と言う事になっている、子爵の娘だったから正妻でも構わないと思ったのだが、そうすると身分の問題や子爵家との関係という問題も出て来るので、ユーティアとエルミーヌからも妾で構わないと言われた。

「・・・分かりました、コホン・・・エルレイ、愛していますわ」

「俺もエルミーヌを愛しているよ」

エルミーヌの雰囲気が変わった、これが貴族として振舞って来たエルミーヌの姿なのだろう、凛としていて少し近寄りがたい感じがする。

「どうかしら?これが以前のわたくしですわ」

「貴族令嬢らしくて、良いんじゃないのか?」

「ですが、所詮子爵の末娘で貴族に嫁ぐ事も出来ないのですからね、高貴に振舞った所で意味が無いのですわ」

「それを言うなら、俺は男爵家三男だったのだぞ、それに今日からエルミーヌは公爵夫人になったのだ、高貴に振舞っても問題は無い」

「そうでしたわね、ですがこの口調は疲れますので、元に戻しますわね」

エルミーヌはそう言うとスーッと力を抜いて、いつものような柔らかい雰囲気へと戻って行った。

「エルレイ様、こちらの方が気を使わなくて済みますので、お許しください」

「エルミーヌが気を遣わないのですむのならそれでいいよ、だが、先程のエルミーヌも可愛らしかったぞ」

俺がそう言うと、エルミーヌは顔を真っ赤にしていた。

「エルレイ様、先程の事は忘れてください」

「分かったよ、でもエルミーヌがどの様な話し方でも俺は嫌いになったりしないからな」

「はい、ありがとうございます」

その後も顔を赤くしたエルミーヌと、楽しく踊り続けた。

エルミーヌとのダンスを終え戻ると、ラウラが笑顔で出迎えてくれた。

「ラウラ、ウエディングドレスが良く似合っていて綺麗だよ」

「エルレイ様も、とても可愛らしいですよ」

ラウラの手を取り踊り始める。

「ラウラ、俺は何時になったら可愛いでは無くなるのだろうか?」

「そうですね・・・ずっとでしょうか?」

ラウラは笑いながらそう答えた。

「身長も皆より高くなったし、筋肉もかなりついていると思うのだが・・・」

「はい、毎日拝見させて頂いていますからよく知っています、ですが他の皆様もエルレイ様を可愛いとおっしゃるのでは無いでしょうか?」

そうなのだ、皆から可愛いとは言われても、格好いいとはあまり言われない、身長も伸びたしそろそろ可愛いと言われたく無いのだが無理なようだ。

「そうだが・・・それなら、ラウラの事も可愛いという事にしよう、ラウラ、可愛いよ」

「はい、ありがとうございます」

女性に可愛いと言っても喜ばれるだけなのは分かっているが、何となく負けた感じがして嫌なので言い続ける事にしよう。

ラウラは終始ご機嫌のまま踊り続けていた。

ラウラを連れて戻ると、マリーが待ち構えていた。

「マリー、とても可愛らしいよ」

「エルレイ様も、お洋服が似合っていて可愛らしいです」

またか、それを聞いていたラウラが、笑みを浮かべて去って行ったのが印象的だった。

気を取り直して、マリーの手を取り踊り始める。

「エルレイ様と本当に夫婦になれるのですね」

「あぁそうだぞ、先程誓いを済ませたばかりじゃないか」

「もしかしたら夢なのかもと、思ってしまって・・・」

「大丈夫、夢なんかじゃないよ」

俺は涙を浮かべているマリーを、そっと抱き寄せた。

「エルレイ様、温かいです」

「俺も温かいよ、夢なんかじゃないだろ?」

「はい」

マリーは頭を俺の胸に預けて、俺の存在を確認している様だった。

孤児として腕まで切り落とされていた時からすると、この状況が夢だと思ってしまうのは仕方のない事かも知れない。

「今日はマリーと結婚した大事な日だ、ダンスを楽しもう」

「はい、分かりました」

マリーは顔を上げて笑顔を見せてくれた、俺も笑顔で応え、楽しくダンスを踊った。

笑顔に戻ってくれたマリーとのダンスを終え戻ると、アルティナ姉さんに抱き付かれた。

「エルレイ、ごめんなさい」

「アルティナ姉さん、どうしたのですか?」

「最後になれなかったのよ」

なるほど、アルティナ姉さんが口づけの時俺を独り占めした事で、皆も最後になれる様にしているのは気が付いていた。

今回どの様にして決めたのかは分からないが、アルティナ姉さんは敗れて最後ではなくなったという事だ。

「ですが、最後で無くとも踊れる事には変わりませんよ」

「そうね、今日は大事な日ですから、踊りましょう」

アルティナ姉さんとダンスを始めた。

「アルティナ姉さん、美しいですよ」

「エルレイ、ありがとう、だけど、以前約束したように、今日からはお姉ちゃんでは無くなるのよ」

「そうでした、アルティナ、これからよろしくお願いします」

「エルレイ、こちらこそよろしくね」

笑顔のアルティナと見つめ合いながら踊って行く。

アルティナとは姉弟だが、その様な感じは全くしないのは、俺が転生者だからだろうか・・・。

「エルレイ、愛していますよ」

「アルティナ、愛しているよ」

ここで口づけでもしたい所だが、周りに人が大勢いるしダンスの最中だからな。

「もう、ここは口づけして来るところでしょう」

「そう思ったのですが、他の妻達にもしていなかったので、それは帰ってからですね」

「結婚後一番最初にと思ったのだけど、仕方が無いわね」

そんな事だろうとは思ったが、ここでアルティナに口づけすると皆にもしないと行けなくなるからな。

大勢の人がいる所では流石に恥ずかしい。

「エルレイ、その分楽しく踊るわよ」

「はい、アルティナ」

アルティナは口づけできなかった分を取り戻すかのように、楽しみながらダンスを踊った。

さて残るは二人、どちらが最後になるのだろう、そう思いながら皆の所に戻ると、エミリアが長いドレスを引きずる様にして出て来た。

「エミリア、ウエディングドレスが少し長いのでは無いのか?」

「これでいいの、綺麗でしょ」

「確かに綺麗だな、ではエミリア踊ろうか」

エミリアの手を取って踊り始めたが、やはりウエディングドレスが長くて非常に踊りにくい。

仕方が無いので、エミリアを少し持ち上げるような形で抱き上げて踊った。

「エミリア、大丈夫か?」

「大丈夫、さすがエルレイ、私がやって欲しい事が分かるとは」

「あのままでは踊れないから、こうするしかないと思っただけだよ」

最初からこれを狙っていた訳か、それならこちらにも考えがある。

俺はエミリアの足を持ち上げて、お姫様抱っこをした、さすがに周囲からも驚きの声が聞こえたが、今日は俺達が主役だから文句を言われる事は無いだろう。

抱き上げられたエミリアはと言うと、満面の笑みを浮かべていた。

「エルレイ、大好き」

「エミリア、俺も大好きだよ」

エミリアを抱きかかえたまま踊っていると、皆から羨ましそうな視線が飛んできていた。

これはエミリアの作戦勝ちだな、エミリアは非常に頭が良く、皆を出し抜いて俺に甘えて来る。

その頭の良さが仕事に向けばいいのだが、残念な事に仕事の方ではやる気が出ないのか、結果を出せてはいない。

まぁ働く必要は無いのだが、エンリーカはシルクや、蜂蜜を作っている、エレオノラは執務室でアドルフ達と働いていて、リディアは武闘大会に出場している。

四姉妹の中でエミリアだけ何もしていない状況だったので、エンリーカが何かやらせようとしている様だったが、本人のやる気が無い物を無理にやらせても良い事は無いので、俺が止めさせていた。

エミリアは頭が良いから、そのうち自分に合った物を見つけると俺は思っている。

エミリアを抱きかかえたままの、ダンスを終えると、なぜか周囲から拍手が沸き起こった。

よく分からないが、恥ずかしかったので、皆の所に戻ってエミリアを下ろした。

最後に残っていたのはロゼだ。

「ロゼ、綺麗だよ」

「エルレイ様、ありがとうございます、ですが、私を抱きかかえて踊らないで下さいね」

俺の心が読まれていた様だ、エミリアを抱きかかえて踊ったから、ロゼもそうしてやろうと思っていたのだが・・・。

「それは残念だが、踊ろうか」

「はい」

ロゼの手を取り踊り始めた。

「今日はロゼが最後を勝ち取ったのだな」

「はい、大切な日ですから、どうしてもエルレイ様と最後に踊りたかったのです」

「それは嬉しい事だな、ところでリゼは最初の方だったが、あれはリゼが選んだのか?」

「はい、リゼは最後まで我慢する事が出来ませんからね」

「確かにそうだな」

リゼの性格からすると、最後まで待っている事は出来ないだろう。

「エルレイ様、今は私を見ていてください」

「そうだな、すまなかった・・・ロゼ、愛しているよ」

「エルレイ様、愛しています」

ロゼと見つめ合いながら、優雅に踊って行く。

「エルレイ様、とても幸せです」

「そうだな、これからずっとこの幸せが続いて行くように努力するよ」

「はい、私も協力致します」

ロゼが最後と言う事で、二曲踊ってから皆の所に戻って行った。

その事に関しては、誰も文句を言う事は無かった、これからも最後になった者の特権と言う事で許されるのだろう。

それから皆を連れて、挨拶回りをして結婚式を無事終える事が出来た。

その日は王都にある俺の別邸へと泊まり、翌日リアネ城へと戻った。


リアネ城の玄関には使用人と警備隊全員が整列して待っていてくれた。

「「「エルレイ様、奥様方、お帰りなさいませ」」」

「皆ただいま」

ここにいる全員が俺の家族だと思い、全力で守って行かなければならないと改めて思った。

「ルリア」

「なによ」

「リリー」

「はい、エルレイさん」

「リゼ」

「はい、エルレイ様」

「ロゼ」

「はい、エルレイ様」

「ヘルミーネ」

「うむ」

「ラウラ」

「エルレイ様」

「アルティナ」

「エルレイ、なにかしら」

「ロレーナ」

「何じゃエルレイ」

「エンリーカ」

「なにかしら」

「エレオノラ」

「はいです」

「リディア」

「はーい」

「エミリア」

「エルレイ」

「ユーティア」

「・・・(コクン)」

「エルミーヌ」

「はい、エルレイ様」

「マリー」

「エルレイ様」

「皆で協力し合って、幸せに生きて行こう!」

「「「「「はい」」」」」

争いの無い大陸を取り戻したエルレイ達は、幸せに暮らしていく事となりました・・・。

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